98字日記ー2021年2月

2月28日(日)
コロナ禍への不安に押されて、咳をすると「もしや」と思い、右腕がだるいと「これは絶対」と思い、昨日は初めて経験する左背中下の筋肉痛に「これこそ」と思ったが今日は治っていた。でもなぜ痛めたのかしら?

2月27日(土)
満月。Mから機上から見たとメッセージ。横に見えるって、どんな感じだろう。月が地平線に沈む頃は横に近いわけだから、そういう距離感かしら。でもこちらも空にいて、彼(彼女ではない)が横にいるっていいな。

2月26日(金)
1年前から長姉が住むシニアハウスに次姉も住むことになった。廊下をはさんで向き合った部屋だという。92歳と90歳。幼い頃はいつも上等なお揃いの服を着ていて、綺麗なまま私へのお下がりとなった。2着一緒に。

2月25日(木)
清新一丁目のバス停で船堀駅行きを待っていたのは珍しく二人だけ。1時間に1本なんてと不便をかこちあった。6時間後、船堀駅で2台続いてきた後のに乗ったのは二人だけ。さっきの人だった。初対面の話が弾んだ。

2月24日(水)
最近好きなのは不思議なひと皿=ひとボウル。千切りキャベツ150g(かなり多い)に「無限キャベツのもと」という油で揚げた中華麺を付属の調味料と油とともに混ぜるだけ。ツナやコーンとも。赤ワインと。

2月23日(火)
花屋の店先で桂華が艶やかだった。サイゼリヤの一種で富貴菊ともいうのだった、たしか。濃く澄んだ青いはなびらの中心近くが白い。株が大きくて持ち帰れないけれどベランダで育てることを考えたい。冬の花。

2月22日(月)
全豪オープンテニスの優勝は大坂なおみとジョコビッチ。無観客だったり数制限で観客が入ったり。コロナ対策の厳しさはハンパじゃない一方、検査で陽性だと支援金が出る。日本はどこかピントが外れている。

2月21日(日)
フラミンゴミルクという言葉は知っていた。TVで実際に親が嘴から雛の嘴に赤いミルクを垂らしているのを見た。美しい。3カ月、真っ白な羽毛の子どもに口移しで飲ませるのは男親も。その間に子どもが段々赤くなる。

2月20日(土)
『Camino Island』に続く新作『Camino Winds』を読みはじめ、冒頭の4分の1が台風ばかりで遅々としていたのが、殺人事件か、という頃から面白くなり、ジョン・グリシャムが他のことを忘れさせてくれている。

2月19日(金)
朝、長い一日が始まった気がする。あれもこれも出来そうだ。だから熱いコーヒーをゆっくりと飲み、大きなガラス窓越しに空を眺め、花の水を取り替える。でももう日暮れ。明日の講座までの添削がまだ3人分ある!

2月18日(木)
朝日社内から「こどもさん」がいなくなると週刊文春で読んだ。私自身は年齢の近い大学生アルバイトをそう呼ばず、名前で呼んでいた。部屋の様子も今は全く違うはず。原稿用紙もなく鉛筆削りの仕事もないし。

2月17日(水)
今冬は厚いコートを着ない。昔ギリシャで買った黄色と黒の柔らかい布のスカーフがしたいので除菌の霧を吹いて干した。今TVでは全豪テニスでナダル対ギリシャのチチパス(黄色のシャツに黒のパンツ。がんばれ!)。

2月16日(火)
竹橋へ。『眠り展:アートと生きること』。香月泰男「釣り床」が1941年作で詩情があった。塩田千春など幾つか好きな作品があったけれどテーマにはあまり惹かれず。2階の岡崎乾二郎の昨年の作品12点は望外の喜び。

2月15日(月)
昨夜は待望の新『Little Women』を観られたのに、その前の昔のヴァージョンから見始めたため3時間で目が開かなくなった。ただ同じ台詞を違う状況で聴けたのは楽しく、素敵な映画だと分かったので是非もう一度。

2月14日(日)
昨夜11時過ぎ、地震。家のブラインドが大きく揺れた。震源は福島県沖とTV速報。今朝4時前に届いた朝刊では一面と社会面に大きく報じられていた。編集も印刷も配達も頑張ったなあ。全てが休み体制の日なのに。

2月13日(土)
ツンツンが小さくなった新しいツンツンミニが使い勝手がいい。大きいのも愛用しているけれど、洗面所などでは意外と置く場所が限られる。一緒に求めたアボカドカッターも形がきれいで美しい道具たちに心が和む。

2月12日(金)
「にっぽん縦断 こころ旅」をまた朝6時から。マスクをした火野正平が相変わらずかっこいいファッションで自転車を漕ぐ。スタッフが一緒なのを自然に見せるところがいい。今朝は霞ヶ浦。ちょっと胸に迫る処。

2月11日(木)
休日で自粛要請で、行きも帰りもバスの乗客は三人、地下鉄の座席は二人置き。新宿で2クラスあって少しでも話せるのは嬉しかった。もちろん危険を避けるべく用心するに越したことはない。それは尊重しなければ。

2月10日(水)
新聞広告に並ぶ文芸誌の中から、今月はリレー式日誌にひかれて『新潮』を買った。コロナ期を意識して昨年1年を52人で1週ずつ。でも・・あまり・・作家やアーティストの「普段」に興味がないからかも知れない。

2月9日(火)
昨年の今頃、ようやくコロナ禍について心配しはじめた。マスクを常用し、手を頻繁に洗って。1年罹らないで済んでいるのでキープしたい。江戸川区の感染者数は人口比で23区のうち一番少ないこともキープしたい。

2月8日(月)
部屋にいるのは気持ちがいい。好きな本を拾い読みしながら紅茶を飲み、楽器やゲームや手紙など手を伸ばしたい事事は山ほどある。それでも昨日のような生命の迸りに触れた後はわかる。生活に必要なのはこれ!

2月7日(日)
笠井叡新作ダンスの公演『櫻の樹の下にはー笠井叡を踊るー』。五人の男性がときに裸体で濃く空間を膨らませた。笠井叡は薄いピンクのゼリーのように空間の奥や高い宙に存在した。いい声!吉祥寺シアターで。

2月6日(土)
仕事も家のことも一番きつかった30代後半に、私はなぜ仕立て服ばかりだったのだろう。下町に住み、馴染みの洋装店があったから。布地と型を渡せばぴったり合う服が既製品を買うより安く出来てきた。懐かしい。

2月5日(金)
良い天気。カシミヤのセーターを3枚、手洗いする。翻訳の添削をしては何か食べ、何か飲む。どのクラスでも befriended を〃友だちになった〃と訳したのが多く、辞書を引いて!と促がす。〃支援した、助けた〃です。

2月4日(木)
Mが高性能のパルスオキシメーターを送ってくれた。早速セットして測る。血中酸素飽和度/97、脈拍数/75。体温も含めて、こんなちっぽけな数差で身体の状態が正常かどうか分けられるのは不思議。人間て繊細。

2月3日(水)
京急に泉岳寺で乗り換えると4席のボックスシートに一人で座れる。今日は左側席で背中で横浜に向かい品川駅の壮大な工事を眺める。これまであった仕切りが取れて、15レーンはある線路の上を横切るのがびっくり。

2月2日(火)
ふと思い出す。大学時代、一日だけのアルバイトを選んでしていた。好きだったのは月に一度、ピラっとしたワンピース姿で舞台上で弓を引いて番号に矢を当てる宝籤抽選会。会場が映画館だと映画を見て帰れた。

2月1日(月)
「一つの国の言葉には、その国の長きにわたって培われたエスプリや、可笑しみや、毒や華が複雑にくぐもり、宿っている・・・それはそこに生まれ育った者のみがかぎ取ることのできる、言霊のようなものかもしれない。」(岸惠子『孤独という道づれ』から)