98字日記ー2014年8月

の日記は文章を書く鍛錬として書きはじめました。

「98字」は自分への課題のひとつです。

バイオリニストが演奏前に調弦するA(アー)の音のように、

正確に、短く、つづく音楽が気持ちよく響くことを願って

8月31日(日)

ふいに絵の切り抜きが出てきた。エドワード・ロバート・ヒューズ『夜と星の列車』。大きな翼をもつ女に抱かれるのは、生まれるべく選ばれた幼子とも、死んだ幼子の魂とも言われる。タナトスとエロスがここにある。

8月30日(土)

錦織圭の胸のすくようなフォアハンド! 全米オープンテニスをみている。でもアメリカとでは昼夜逆転で、起きていられそうにない。次に勝ち進むことを確信して明日に備えよう。こういう時間のあることがうれしい。

8月29日(金)

辺野古の岩礁破砕を沖縄防衛局に対し沖縄県が認めたという。心底、悲しいことだと思う。なぜ美しい沖縄の海を乱し、ジュゴンたちを惑わせ、珊瑚の命を絶つことができるのか。そうやって守れるものがあるというのか。

8月28日(木)

(続き)で、いま家では香りをつけるのではなく、きっとさまざまに混じり合った匂いを取る方向で「無香空間」をいくつか置いてみている。パッケージは透明なビーズが入った部分と白い枠だけで、飾りも文字もない。

8月27日(水)

(続き)よく私のために手作りのクッキーがお膳の上にあって、それを食べながら宿題をしていた。そのお宅の玄関を入るとき、いつも温かな匂いがして、それからずっと、あのような優しい匂いのする家が憧れだった。

8月26日(火)

昔、吉祥寺の自宅近所のお宅で週に1、2度アルバイトをした。ご主人が布団屋さん、夫人が米軍の通訳で勉強やパーティーで帰りが遅くなる日に私が日暮れ前に伺い、電気をつけて、人の気配を作っているのが仕事。

8月25日(月)

メトロの駅でQさんに会い、小さな頼まれごとを受けた。それをRさんにメールで相談したら、旅行中のポルトガルから返事があった。それをQさんにメールしたら、バリ島から返信。私も中国かどこかにいたかった。

8月24日(日)

スイス・ロマンド管弦楽団の指揮を山田和樹、ソロを樫本大進でチャイコフスキーのバイオリン協奏曲。二人とも1979年生れで熟した演奏。いま活躍するアスリートたちは十代だし、若者が自分を出せる社会がいい。

8月23日(土)

ふと、がやがやと大勢で人が集まることが懐かしくなる。普段はむしろ苦手なことで、人と逢うのも1対1とか、せいぜい3、4人までが話がわかって好きなのに、たまにあのとりとめのない高ぶった場がほしくなる。

8月22日(金)

仕事場の片付けがまだ終わらない。今日は東京にいるMと月島のお蕎麦屋へ。外は酷暑、内は冷房、で温かい天ぷら蕎麦と水ナスと卵焼きを頼んで正解だった。レジは夏休み中の小さな孫娘がお祖母ちゃんのお手伝い。

8月21日(木)

W.サロイヤンの『My Name is Aram 1篇を新宿Aクラスで訳し終えた。アルメニア的な背景と登場人物五人の印象、馬との触合い、時代の香り、台詞と地文とをなじませた書き方など、各人の受け止め方の深いこと!

8月20日(水)

きょうの未明から広島市北部で激しい雨が降り、土石流があちこちで発生。死者も数を増しつつあり、安佐南区と北区という、山を背景とした住宅群が泥をかぶっている。新庄に行くときバスで通った所かも。

8月19日(火)

めずらしく一日中、家で過ごす。外に出るだけで汗が噴き出しそうな気温から逃れて青いブラインドの隙間から見る木々の緑は涼やか。ただし明日から再開する翻訳塾の課題づくりにきりきりと、いつものことながら。

8月18日(月)

残暑お見舞い、という言葉が届くようになった。自身は相変わらず筆不精だけれど。無地のカードを夏をしのばせるシールで飾ったものなど、いただくのは嬉しい- ――茄子やピーマンなど夏野菜、ビーチサンダル、海の生物。

8月17日(日)

ゆうべ「世界の家族を救った一冊の本」という番組で東田直樹君と『The Reason I Jump』と英訳した英作家のデイヴィッド・ミッチェルさんが感動の対面。直樹君が文字盤ポインティングをどう使うのかよく分かった。

8月16日(土)

函館市は大間原発の建設凍結をもとめる訴訟の費用に寄付を募っていて市庁舎には全国から熱い反応があるという。ある民間グループの「イカイカ募金」の写真を見た。大きな手作りのイカの足に50円玉を通していく。

8月15日(金)

戦後69年。きのう、辺野古への基地移設に向け政府は強硬手段に出た。若い世代に大人たちは何を残しているのか。19歳のスケーター羽生結弦が大震災復興支援ソング「花は咲く」をソロで舞い滑るのを見て思った。

8月14日(木)

シネスイッチにインド映画が2本かかっていて大盛況。両方とも気持ちよく楽しめる新しい感覚の映画だった。『マダム・イン・ニューヨーク』というタイトルは原題の『English Vinglish』と違いすぎるけれど内容に近い。

8月13日(水)

唐木順三著『「科学者の社会的責任」についての覚え書き』を再読。未完・未整理で読みやすくはないけれど、核兵器を絶対悪と確認する原点となった1955年のラッセル・アインシュタイン宣言に思考を戻してくれる。

8月12日(火)

13、14号棟を取り巻く大小の木々にすっかり形よく手が入り小さな森の中にいる風情。大方は電気ツールで刈り込まれるので、頭が平らになった低い植え込みは昔の今和次郎家の庭でテーブルにしていた柘植のよう。

8月11日(月)

夜。ベランダに出ると台風が過ぎた後の不規則にさやさやとした風が気持ちよく、藍色の空になんとも大きな満月がかっちりと光を放っている。明日の流星群もこの光に隠れそうだとか。月からも地球を見ているかしら。

8月10日(日)

ALWAYS 三丁目の夕日』は絶対に好きなシーンが幾つかあり、そこだけみようと思っているうちに、また、はまりこんでしまう。わがジュニア期後半と時代が重なっているからだろう。東京タワーが立ったことも。

8月9日(土)

都々子さんが「月がとっても青いから」を歌うというメッセージが届き、NHKの夏の歌謡祭中継をみる。若ぶらず、でも若々しく綺麗で87歳らしい歌い方が素敵だった。ついでに菅原洋一の「今日でお別れね」が聴けた。

8月8日(金)

台風が大東島にきていて、自転車並みの速度で日本列島を縦断しようとしているという。よさこい祭りも全国高校野球大会の開会式も東京湾華火大会も延期になりそうな気配。酷暑に豪雨ーー日本で夏が暴れている。

8月7日(木)

携帯がおかしかったのでドコモショップでみてもらう。かわいい若い男の子が不調の原因だった爪くらいのカードを「この子」と呼んで無料で取り替えてくれた。生きていることばって本当に面白い。古いことばも楽しい。

8月6日(水)

アッシリア人、アルメニア人についてインターネットで調べる。キリストが使っていたという例のアラム語を話すのがアッシリア人だと確認した。ネット情報だけに頼るのは心しなければならないが、昔に比べて、この便利さ!

8月5日(火)

例年の河川敷での大花火大会はパスし、今日、一番近くの川の中での打ち上げを少し離れたところから愉しむ。インドの人たちがそれぞれ家族連れで来ていて、浴衣を着た女の子たちと一緒に歓声をあげているのがいい。

8月4日(月)

四国で記録的な大雨が続き、高知、徳島、愛媛の3県で54万人に避難勧告が出ている。なんてすごい数! 高知市の住宅街で腰まで水につかって道路を歩いている人をテレビでみた。土砂災害が大きくなりませんように。

8月3日(日)

四クラス全部あった週は、次の日つまり今日は一日のほとんどをソファの上で過ごし、あれこれつらつらと、考えたりしている。添削に月、火の2日しかないと意識しながら、ギリシャのイーブルアイをネットで眺める。

8月2日(土)

今更とは思いつつ村上春樹の『遠い太鼓』のページを繰る。今更というのは、スペツェス島を課題にしたのはクラスによってはずいぶん前のことだからで、で、やっぱりそういう読み方はよくなくて、既読感が興味を削いだ。

8月1日(金)

「ベリー利用の本家英国では、一家一年分のびん詰め用に家族総出で摘んだベリー類を加工するまえに、夏の香りを思う存分たのしもうと、ベリーのサマープディングをつくる。」(林のり子『パテ屋の店先からーかつおは皮がおいしい』)