98字日記ー2018年5月

5月31日(木)
5月が終わってしまった。爽やかなはずの季節がなんとなく過ぎていった。生きているのがふしぎに思える。なぜということなく、とにかく生活力があるとは思えない自分を眺めると頼りなくて、大丈夫かと聞きたい。

5月30日(水)
朝6時から8時頃までが翻訳塾の添削に一番集中できる。クラスがない日なら午前中いっぱい。幸せな時間だ。一人ひとりと向き合い、つまらない間違いにがっかりし、いい訳に拍手をおくる。もっと拍手を送りたい。

5月29日(火)
グリシャムの Camino Island は課題にしようと冒頭はじっくり読んだものの最後の方は読み飛ばし、今になって気になり出した。今日は最後の40頁ほどを読み直す。中間のもたつきは消え、意外な展開が広がった。

5月28日(月)
インターネットで世界中の遠い所へ行き、建物を探し、時にはその中にまで入れる。空間だけでなく、時間もはるか昔までさかのぼれるし、50年前の雑誌の表紙絵を瞬時に見つけることもできる。そんな時代なのだ・・・

5月27日(日)
重い食器が辛くなって、日々使ってきたデンマークのダンスクを正反対のアメリカのコレールにした。以前なら使わなかった、一見プラスチック。でも軽くて、真っ白に青い線が嬉しい。実はガラス製なのだけれど。

5月26日(土)
テレビ欄に予告されているのかどうか、パレルモの「空港ピアノ」が今度はアムステルダムの「駅ピアノ」となって夜中の番組で紹介されていた。ピアノを弾くのは通りすがりの高校生や料理人。いい時間が流れる。

5月25日(金)
昨日、私が書く食べ物が美味しそうだと言ってくれた。さて今日は、いつものようにシメジに豆腐半丁の四つ切りに銀杏をくわえてレンジで2分。レモン酢と醤油で。でも体重が増えるのは、なぜ? 多分デザートのせい。

5月24日(木)
9時に家を出て一時間半が四つという超ハードな1日だったけれど、その一つひとつが、それぞれに関わるひとたちの心配りで温かかった。五つ目の一時間半は、家のソファでお茶を飲みながら栃ノ心の12連勝を眺める。

5月23日(水)
何かを辞めるのは難しい。例の評議員を辞めそこなって、くよくよしている。何故かたくさんの事が木曜日に重なるのだ。旧友会というのも毎年木曜日と決まっていて、まず出られない。ちょうどいいとも言える。

5月22日(火)
夕食での飲み物がノンアルコールビールになっている。色々するべきことが重なっていて酔い氣分になれないこともあり、アサヒのヘルシースタイルが糖質ゼロ、カロリーゼロで気に入り、ケースで届けてもらった。

5月21日(月)
是枝裕和監督『万引き家族』がカンヌで最高のパルムドールを受賞した。そして特別パルムドールが贈られたのがゴダール監督の『イメージ・ブック』だった。ああ、まだ、と感動する。87歳で新たな創作に挑む心に。

5月20日(日)
横山大観「生々流転」を、しっかりと、ガラスケースを覗き込んで近々と見た。近美で。混雑していたけれど一歩一歩、40メートル長さの墨画の世界にだけ入る。見終わって庭の芝の上の椅子で涼風に吹かれた。

5月19日(土)
ジョージアにどうしても行きたいとは思っていなかった。ジョージア語で本を読むのが望みだから。でも「花のジョージアを歩く」というツアーの宣伝を見て心を揺さぶられた。そういうことが可能になっていた。

5月18日(金)
高畑勲監督を偲んで『かぐや姫の物語』がTV放映された。みるのは多分二度目で、前に持った印象をそのまま思い出す。アニメでの表現力に感嘆する美しい場面は多々あるものの、男性の作品ね、と思ったこと。

5月17日(木)
眠っているときにみる夢は体験したことにならないのかしら。真剣にそう考えてしまうほどリアルな夢をみる。あまり楽しくない夢のほうが多くて、体験と数えたいわけではない。今夜は、たまに佳き夢をみたい。

5月16日(水)
5月なのに気温が30度近くになったりして、爽やかさから程遠い。かといって暑いだけでなく、風がキリキリ吹いたりする。気持ちも落ち着かず、こんな時、添削という時間に追われる場があるのは、むしろ嬉しい。

5月15日(火)
ショック。この20年間、隅田川の向こうに見ては心弾ませてきた東京タワーを隠して、手前に高層ビルが建ったのだ。今はまだ、タワーの上部五分の一くらいは見えているけれど、すっかり遮られるかもしれない。

5月14日(月)
疲れた日にはジャンクフードばかり食べるかヤケグイをする。さっきはバゲットにアイスクリームを乗せて熱いコーヒーと共に。ポテトチップス一袋とかシュークリーム3個とかが理想的。餃子ならいつでもいいけれど。

5月13日(日)
昨夜BSフジで放映された2時間番組『江利チエミ』は心の底にぐっと迫ってくるものだった。「テネシー・ワルツ」はこんなに深く甘く歌われていたのか、こんなに美しい容貌の人だったのか。時代の思い出とともに。

5月12日(土)
三鷹へ。マンションの外で待っていた姉とオートロックドアに向かうと、中側にいた7、8歳の男の子がさっと走ってきてドアを開けてくれた。「ありがとう、なんて良い子」と姉にとっても初めてのことだったよう。

5月11日(金)
月に一度の診療所に、たいてい2週間くらい遅れて気まぐれに出かける。院長先生は2代目で、今日、初代の健次郎先生が連休中に肺炎で亡くなられたと知った。数年お会いしていないながら私には主治医だったのに。

5月10日(木)
ココシャネルの新しいマニキュアをつける。濃い薔薇色は派手すぎかと思ったけれど、Mが選んでくれたのだから似合うことにする。心を明るく強くして新宿の2クラスを終え、銀座の『梅の花』で昔の仲間達5人と。

5月9日(水)
横浜の翻訳塾で生活のリズムが戻った。やはり必要な時間なのだろう。これあってこそ、ジョージア語の復習をしよう、美術館や映画館に行く時間を生み出そう、とするのだと思う。リズムが食欲を増すのは要注意

5月8日(火)
東大の食堂壁にあった宇佐美圭司の作品「きずな」が改修時に廃棄されたというニュースは残念の極み。写真で見る限りだけれど、4米四方の素晴らしい大作だ。うっかりしたのではなく検討した上で、だったとは!!

5月7日(月)
スケートの小平奈緒、将棋の藤井聡太、野球の大谷翔平など名を挙げきれないほど若い人が次々と輝きを見せてくれるのは幸せ。日本が今とりあえず安定した状況にあるからで、平和憲法の改正なんてとんでもない。

5月6日(日)
朝刊から。墨田区の魅力をPRする動画コンテストでグランプリを受賞した41歳の鉄道マンは、4種類の賞品から「うまい棒1万本」を選び、特別賞だった錦糸小に寄贈した。体育館の朝会で子ども達の笑顔と歓声が弾けた。

5月5日(土・祝)
あれこれの本を繕い物をするように読む。読みかけのペーパーバックを読み上げ、気になる邦訳を原書であたり、短編集の残り2作品を終え、『乙嫁語り』10巻の好きだった部分の絵をじっくりと眺めて心温まる。

5月4日(金・祝)
宅急便を待ちゴミを捨てる家事の日。キッチンを、棚や抽斗の中を、磨く。クミンやガラムマサラの賞味期限が13年で呆れる。あれから気合の入ったカレーを作っていなかったとは。捨てたバニラの匂いが手に残る。

5月3日(木・祝)
個々の生活に分かち合う気持ちがいつもあるのが集合住宅にいる豊かさ。この季節はあちこちの棟から棟に沢山の鯉のぼりが渡され、歩く人たちがにこにこと見上げる。「学び舎の頭上五月の空は海」(泉谷しげる)

5月2日(水)

ダイアン・キートンの英語を聴きたいと思い、銀座で『ロンドン、人生はじめます』をみる。ハムステッドが舞台の自然と人間がたっぷりの映画で、71歳のキートンがチャーミングだった。原題は Now Loading。

5月1日(火)
「アミのかかったマスのどこかに数字が隠れている問題です。A~D、E~Hをつないで出来る二つの熟語を答えなさい。アミの形はペニー・ファージングと太陽ですよ」(『難問漢字ジグザグ』5月号33問目)