98字日記ー2018年6月

6月30日(土)
今年の前半が今日で終わり。といってどういうことでもなく、ひび、しゅうしゅう、つきづきが過ぎていくだけ。本を読み、音楽を聴き、コーヒーを飲み、トマトを食べ、30数人の翻訳に青ペンをいれて明日がくる。

6月29日(金)
美容院まで10分、歩いた後は、冷たいおしぼり、氷の浮かんだ冷茶、卓上の小さな扇風機と揃えてもらって汗をしずめる。ぼさぼさに伸びていた髪をカットすると、ようやく、さあ、夏よいらっしゃい、という気分。

6月28日(木)
上野で会議があったので、帰りに都美でプーシキン美術館展をみる。セザンヌの風景画三点がよかったしドランとドニも。でも「どこを描いた」かに興味は持てなかった。その絵から迸るメッセージを感じるだけ。

6月27日(水)
大阪の地震の後も日本のあちらこちらが揺れている。日本だけでなくハワイのキラウエア火山が激しく噴火したり、インドネシアでも地震が頻発していたり。だからこそ一層、人災による不幸など壊滅したい!!

6月26日(火)
気管支が弱いらしく空気が急に変わったり2時間以上話し続けていると咳込むし、と思い今は自治体の定期予防接種となりクリニックですすめたれた肺炎球菌予防接種を受けた。次は5年後とのこと。生きているのかしら。

6月25日(月)
女性も車の運転が許されることとなったのはサウジアラビア。世界の国々で最後というが、本当かなあ。その運転許可も父親か夫の承諾が必要に違いない。イスラム教徒であることで得られる幸せもありますように。

6月24日(日)
ジョージア語の復習で第2クラスの動詞・過去形の人称変化を暗記する。完全に集中できるわけではなく、ベッドの上で彼女はどうしているかなと思う。仙台に行ったのは何年振りかで、青葉通りの並木が美しかった。

6月23日(土)
東北新幹線で仙台に着き、胸ふさぐ思いで東北大学病院緩和ケア病棟へ。低い声ながらたくさん話してくれた。ゴルフ、乗馬、商売など私が無縁の世界を沢山もつ彼女の存在そのものが大切だったのだ。アリキさん。

6月22日(金)
全国で小中学校の通学路の塀を一斉点検。でもこれまで放ってあったことが不思議。我が区の災害への意識は強いので学校の塀、門、校舎、遊具の耐震性を数年おきに再点検しない自治体があることが信じられない。

6月21日(木)
課題でカントリー/ロックンロールのジョニー・キャッシュ関連の記事を読み調べるうちに、むしろウィリー・ネルソンのアウトロー・カントリーに惹かれた。 Blue  eyes crying in the rain を繰り返し聴いている。

6月20日(水)
サッカーのW杯ロシア大会が始まって日本がコロンビアとの初戦で勝った。よかったけれど、それが新聞各紙の朝夕刊トップで、TVワイドニュースは各局が朝から晩まで繰り返しているって変じゃない? 絶対に変。

6月19日(火)
水を受け取るため早い時間に勝どきの部屋に入り、用件はすぐに済んで、朝の光を受けてキラキラと流れる隅田川をガラス越しに眺める。静か。茨木にご実家のあるKさんから明日の翻訳塾は欠席とのメールが届く。

6月18日(月)
朝8時、大阪府内で震度6弱の地震。高槻市や茨木市が被害を受けた。いつ、どこで、ということがまったく分からない自然災害を日本列島はいつも覚悟していなくてはならない。でも小学校でブロック塀が倒れるとは。

6月17日(日)
映画館で見たかった『ダンシング・チャップリン』をTVで。周防正行監督が草刈民代に捧げたようでもあるが、ローラン・プティ振付が凄い。『街の灯』のシーンが印象的だった。チャップリンはルイジ・ボニーノ。

6月16日(土)
ストーリー・ディスペンサーについての英文記事を各クラスで訳している。空港などにあるポストのごとき機械のボタンを押すと、細長い紙に短編小説が印字されて口から出てくる。活字離れの愉しい抑止戦略。

6月15日(金)
すっぽりと細雨に閉ざされ、梅雨時に似合うと kataokayoshio.com で勧められた短編を読む。『膝までブルースにつかって』。翻訳家で色々な国の言葉に興味があり、受け身の女でいることを選んだ「夫」に共感した。

6月14日(木)
一日中ずっと文字を見ていると、夜11時頃さすがに目が疲れる。でも少し休もうと思った時、また眺めるのが文字だったりして。眼鏡はいらない。苦手な昼間の外光と教室の照明にサングラスは手放せないけれど。

6月13日(水)
翻訳は少し易しいのを課題として取り組むのがいいか、可能な限り長いもので実践を重ねるのがいいか。悩みどころ。でも数をこなさくては英語表現の核まで到底迫れない。かくて私は大量の添削に追われている。

6月12日(火)
史上初の米朝首脳会談がセントーサ島で。煌びやかな夜景も見たという金正恩委員長は北朝鮮をどこに連れていく?シンガポールの街中にある高級外車自販機の写真を見た。それが明暗の明とは思わないけれど。

6月11日(月)
介護保険制度に基づく施設の話を制度面と訪問看護師さんの実施面から聞く地元での学習会。看護師もケアマネもドクターも行きますから出来るだけ在宅が幸せとのこと。でも本人は幸せでも家族が大変なのでは?

6月10日(日)
聴きたいと願っていたマリア・ジョアン・ピレシュのN響定期でのピアノ協奏曲が放映された。ベートーベン第4番。いつものようにアクセサリーなしのモノトーンのドレスで、気張らずに気持ちを込めた音で・・・

6月9日(土)
高層マンションを売り出す豪華なチラシが日々、届く。今朝は珍しく、鬱蒼と茂った緑に埋もれる中層の白い建物の写真が穏やかな空気を運んできた。我が住処の辺りの一軒だった。こうして見ると古いけれどいい。

6月8日(金)
昔のNHK番組の再放送「ポルトガルギターの大航海」(2時間)に家に足止めされた。インドネシアの音楽シーン・クロンチョンがたっぷり聴けて、『ブンガワンソロ』もネシヤ語で幾度も繰り返され、懐かしかった。

6月7日(木)
ヨーガンレール本社・ババグーリと新しい清澄白河の緑の一角でガラスと陶器の三人展。Mに連れられて。山野A陽子のガラス器の存在感。そういえば、思い出した。隣の清澄庭園には幼いMをよく連れてきたことを。

6月6日(水)
水曜朝のバスでよく出会う80代らしい女性が見事な配色のおしゃれをしている。今日は紫とベージュ。紫系のトップに、黒地に白の模様で紫のパイピングのナップザックを手に、薄茶の帽子。銀色のイヤリングだった。

6月5日(火)
アマゾンの倉庫は整理整頓されていないという。物も書物も全てバーコードで読みとられるから、同じ種類をまとめておく意味はないわけだ。ロボットが集めて人が確認するのであれば、まあいいかと思う。

6月4日(月)
昨日の『サンドリヨン』。仏語のオペラは初めてで、マスネの音楽、妖精のソプラノ、ヒロインのメゾソプラノが素敵だった。大人の味付けのシンデレラ童話は粋ながら、もう少しロマンがあってもね。王子様も。

6月3日(日)
慌しい日曜日だった。メトライブの『サンドリヨン』を観ようと思ったのが遅く、開演1分前に東劇に着きライトで足元を示されながら定席に。その間に緊急の連絡が携帯にあり、翻訳塾の変更をする羽目になった。

6月2日(土)
土曜日はとくに道路上や乗り物の中で外国の人との出会いが多い。外見では日本人と見分けがつかないながら、すれ違うのが圧倒的に下手。お互いに少しずつ譲るという文化がないようで平気でドンとぶつかってくる。

6月1日(金)
「その歌舞伎役者の芝居見るとな、正月迎えたような気分になんねん。気持ちがキリッとしてな。これからなんかええこと起こりそうな、そんな気分にさせてくれんねん・・・吉野龍田の花紅葉  更科越路の月雪も」(吉田修一『国宝』から)