98字日記ー2020年12月

12月31日(木)
混沌とした1年だった。しかも、もやもやと渦巻くものがそのまま新年に雪崩れこんでいきそう。内でも外でも。でも朝夕の冬空は澄んで美しいし、月や金星や小さな星たちは夜ごと位置を変えて煌めき励ましてくれる。

12月30日(水)
トリフォニーホールで予定されていた明日のジルベスター・コンサートが公演中止。指揮者と出演者の1人がコロナ陽性と診断され、新日本フィル全員とソリスト達が舞台を降りる。チケットは買ってなかったけれど・・

12月29日(火)
乱気流に乗ってしまった自分の気持ちをなんとか鎮めたと告げたとき、ym さんは「無理矢理でもなく投げやりでもなく」結論を出したのねと言ってくれた。理屈で考えたわけではないけれど、何とかそういうことに。

12月28日(月)
フィギュア全日本で優勝した紀平梨花と羽生結弦はいずれも4回転ジャンプを成功させて見事だったが、さらに上を目指すという。回転数を増すには身体の作り方から変えなくてはならないというのに。不思議な競争。

12月27日(日)
ゴーリーのカレンダーが例年のウォールでなくダイアリーになった。ぼんやりとカバー写真で注文したせい。でもわるくない。毎週違うイラストを眺められる。でも何を記そう。心の棘をそっと抜いて置いていこうか。

12月26日(土)
勝どきへ行くために通る銀座三越前は人でごった返していた。家族連れも多いし、待合わせらしい数人がかたまって立っている。マスクはしているけれど・・隅田川は変わらずキラキラと静謐な光を跳ね返していて。

12月25日(金)
「この青き水惑星にうまれしとふ 生きもののひとつウイルスといふも」詠人・唐澤るみ子は、人がどんどん変化していき、詩心が失われゆくのを憂う。殺伐とせず、美しきものを五感で捉えたい。諧謔も忘れず。

12月24日(木)
届いた幾つかのクリスマスカード、クッキー、緑のビロードの星・・心を慰められる。都の今日の感染者は888人で過去最高。静かに家にいて、と呼びかけが続き、元よりそうしている身に意味を与えてくれる。

12月23日(水)
連日、新型コロナ感染者数増加。翻訳塾を受講してくれる30数人の中ではこれまで感染した話を聞かなかったので、今年最後の授業を安全に、という気持ちに駆られて、今日の横浜クラスを郵送式に替えてしまった。

12月22日(火)
画面は見ず、音だけ『スパイダーマン』を流していた。好きな台詞にくると聞く。「・・when you look in her eyes ・・everything feels not quite normal. Because you feel stronger and weaker at the same time.」

12月21日(月)
TVで『ラスト・サムライ』(渡辺謙、トム・クルーズ)を英語版でみる。舞台は1846年以降。ディケンズが31歳で『クリスマス・キャロル』を発表したのは1843年。日本、英国、米国のその時代に触れる日々となった。

12月20日(日)
「コロナ禍で購読数が減り、折込チラシも30%減。朝日以外に取扱紙の購読を」とASAから切々たる依頼。で、東京新聞を申し込むと清新町は毎日新聞からの配達と所長から丁重な謝罪メールがきた。皆さん、頑張って。

12月19日(土)
人と線でつながっていたい。何かを共有することで交差したり撚りあわされたりして、その後ずっと平行していることになっても線として捉えられたい。捉えたい。点でしかなかっただろうかと思う時こよなく淋しい。

12月18日(金)
バルセロナが舞台の『ラ・ソンブラ・デル・ヴィエント(風の影)』は華麗で清冽な文章で最後まで読ませ、私をまた最初に戻らせた。幻想的なのに即物的で作家が1964年生れとは思えない中世の雰囲気。翻訳もいい。

12月17日(木)
ちあきなおみの『喝采』が世に出たのは1972年だったらしい。それで一層胸に響くのか。辛く切なくて、教会の前に佇むのが自分のようで、でも今あの時に戻ったら、やっぱり汽車に飛び乗っただろうと思っている。

12月16日(水)
今日のパスタソース。ミニトマト、しめじ、カット・アスパラガスをオリーブオイルで炒め、カゴメの「トマト&バジル」ソースを1缶、エバラの「あさりとホタテ プチッと鍋」1個、唐辛子を加えて仕上げにチーズ。

12月15日(火)
COVID-19 の感染の広がりは止まるところを知らず、拙速だったGoTo キャンペーンにもブレーキがかかった。アメリカでは30万人もすでに亡くなっているのだ。信じられない数・・・どうなる、年末年始の人の動きは?

12月14日(月)
スペインの作家カルロス・R・サフォンの訃報を見たのは6月だった。55歳。気になっていた作品に今ごろ惹きつけられて読んでいる。『風の影』『天使のゲーム』『天国の囚人』・・亡き人の足跡を追う年になった。

12月13日(日)
10月初にコロナ合併症で死去したデザイナー高田賢三を偲ぶTV番組が昨日、深夜にあり、想うことが多かった。1939年生まれで、60、70年代に手探りで道を探していた姿にみる同時代の共感。色濃い花柄が懐かしい。

12月12日(土)
シャンシャンに2週間前に会って、これが最後と思っていたのが、中国への返還が半年先になった。生まれてすぐから見てきて、大きくなった実感がある。でも3歳だから独りでいさせるのも可哀想。仲間に会わせなきゃ。

12月11日(金)
郵便局で切手を買う。光るウインターシリーズ、マチスの『リュート』がある美術の世界第2集、「おいしいにっぽん」札幌篇、レオ・レオーニの世界など。前の切手と合わせる1円と2円のいいデザインも作ってほしい。

12月10日(木)
翻訳塾は4つとも10月以降、通常に開いている。ただ部屋のドアは開け放して、それぞれの座席は1米は離し、授業中マスクを外す私の前には透明の仕切り板がある。郵送式を選ぶことも可能。コロナ禍期はいつまで?

12月9日(水)
ペットボトルのお茶としては、最近、Kanazawa Origin の「加賀 棒ほうじ茶」が気に入っている。麦茶を焙煎した香りがよく、冷蔵庫にあると喉が渇いた時に嬉しい。父はペットボトルすら知らなかったかも。

12月8日(火)
朝、TVで映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』の後半を観る。もちろんルドルフ・ヌレエフで、1961年、キーロフ・バレーのパリ公演で亡命するまで。フォンテインとの来日公演を思い出す。彼も1938年生まれ。

12月7日(月)
ジョン・レノンが1980年のNYで銃撃されて40年目。本人の鉛筆画と言葉がプリントされたグリーティングカードを30種類くらい「imagine」から取り寄せたのが88年頃で、アメリカの物を直接買う初体験となった。

12月6日(日)
夕方、ゴミを捨てに外に出ると、ふわーっと良い匂いが漂っていた。どこかのお宅でホットケーキを焼いている!ペットボトル、アルミ缶、スティール缶、プラスチック類、電池、燃えるゴミと分けてボックスに入れる。

12月5日(土)
「オカン、マジシャンと不倫してるな?」なぜ分かった? ーー IPPON グランプリの言葉遊びが好き。「相手を傷つけないシリーズ」など、この場に女性芸人がいるといいなあと思う。体力のいる世界だけれど。

12月4日(金)
数十年にわたって受け取っていた社の手帳が経費節減で打ち切られたのは何年前だったか。以来、ごく薄い縦長の手帳を愛用してきて、表紙の色はずっとイエロー系だった。来年用にはなぜかサーモンピンクを選んだ。

12月3日(木)
テレワークやオンライン会議の結果か、都庁前駅の構内にひとけがない。周辺には大型ホテルも多いし、いつもキャリーバッグを引く人たちでいっぱいだった。私にとってはこの閑散とした空気、わるくないけれど。

12月2日(水)
東西線の東陽町駅で視覚障害を持つ男の人がホームから転落死した。よく使う駅なので狭さが分かって悲しい。その記事に点状でなく線状のブロックなら方向が分かる、とあった。じゃあそうすればいいじゃない!

12月1日(火)
「すてき(素敵・素的)」=「すばらしい」の「す」+「てき(的)」心をひきつけられるほどすぐれている様子。「すてきなブローチ」ーすてきに(副詞)「滅法」の意の古風な表現。「今年のチームはー強いぜ」(新明海国語辞典から)