98字日記ー2016年11月

文章を書く鍛錬として書きはじめました。

「98字」は自分への課題のひとつです。

バイオリニストが演奏前に調弦するA(アー)の音のように、

正確に、短く、つづく音楽が気持ちよく響くことを願って

11月30日(水)
小学一年生から中学、高校と終り、大学に入り、もうすぐ卒業。子どもの15年の長さ。大人での15年は劇的変化はないにしても深さはあるに違いない。横浜の英文翻訳塾は15年。今日はありがとうございました。

11月29日(火)
サルバドール・ダリの、空が広がる作品が好き。かの有名な「ポルト・リガトの聖母」は迫力があり実物がみられてよかったと思ったら、福岡市美術館の所蔵とは。例の額縁入りパンがキリストの胸に嵌め込まれたもの。

11月28日(月)
夕方、あっという間に暗くなる。長年、生きてきているのに、毎年こんなに日が暮れるのは早かったかしら、異常ではない?と思ってしまう。たしかに1年で一番日の入りが早い時なのだ。天気図によれば16時28分。

11月27日(日)
午後、21-21デザインサイトの『デザインの解剖展』へ。入場制限をする混みように企画に携わったMによかったねと心の中で。帰りに寄った新国立美術館の『ダリ展』も長蛇の列。のり子さんに励まされながら観る。

11月26日(土)
みえちゃんの息子の隆さんが絵を持ってきてくれて、愛用のロードサイクルをつぶさに見せてもらう。赤い車体は高く、タイヤもサドルも細く、ペダルは靴に嵌め込み式。服もレーサーさながら軽やかに消えて行った。

11月25日(金)
小林恵さんが亡くなったのを新聞の訃報で知る。最近はお目にかかっていず悔やまれる。寂しい。初めてお会いしたのはNYでだった。すべてにセンスの良さが光り、いつも美しい小さな物を「はい」と言って下さった。

11月24日(木)

東京で11月に雪が降るのは50数年ぶりとのこと。黄色の葉が輝くようなイチョウ並木にふわーっと横なぐりに白い雪が降りかかる。滑らないよう注意しながらも、思わず足を止めて見とれてしまう雪の一日だった。

11月23日(水・祝)
週の半ばが休みなのは落ち着かず、私がまた間違えないようカルチャーから明日は休みですよと昨日、メールをもらう。ありがたい。でも気は抜けていて、三鷹駅北口の福松で食事した後、どこかでスカーフを落とした。

11月22日(火)
エドワード・ゴーリーのサイン入りのピン「本とネコ」。Mとの時間。資生堂パーラーのシーザースサラダ。牡蠣フライ。月一回の勉強会。ロイズのチョコレート。ヤッコマリカルドとビルケンシュトックと山野楽器。

11月21日(月)
昔は時々、頼りない通訳をした。他にいなければ、仕方なく。そしてよく通訳にではなく、どうぞ、お相手に向かってお話しくださいと進言した。その方が話し合った気持ちなれる。相会談をTVで見ると気になる。

11月20日(日)
電車の優先席に平気で座る若者たちに腹が立つ。元気そうなのに脚を広げてふんぞりかえる年寄りたちにも。大きな乳母車を押してエレベーターに自分たちだけで乗る夫婦にも腹が立つ。私はしょっちゅう怒っている。

11月19日(土)
毎週土曜日に朝日be編集部からメールでアンケートが送られてくる。朝食にパンとご飯のどっちが好きか、とか2016年の自分に合格点を与えるか、とか。その性別欄の選択が最近、「男性、女性、その他」となった。

11月18日(金)
町のどこもが秋らしく、空を指す樹々の葉のきれいなこと!黄色はもちろん、茶、赤、緑が胸にしみ込む。悲しい夢をみた後に空いた隙間を埋めてくれる。夕食はタラ、椎茸、しめじ、銀杏の酒蒸しで秋を味わう。ワインと。

11月17日(木)
十軒が共に使う入り口、階段、四つの踊り場を掃除してくれる人がすばらしい。水と洗剤とブラシを駆使して、膝までついて、まさに磨いてくれる。朝の挨拶とお礼と仕事中を通るお詫びを言いながら私はドタドタ通る。

11月16日(水)
少し遅れた課題訳提出に添えてくれた、キース・ヴァン・ドンゲンの代表作のひとつ『黒い帽子の女』(1908年)の絵葉書がよくて、ずっと見ている。実物を見たい! どこにあるのだろう。ロンドンかモスクワか。

11月15日(火)
東京動物園友の会の会員に年4回送られる『どうぶつと動物園』の中の木坂涼さんの動物の詩がいつも、とてもいい。一番好きなハシビロコウは始まりがこうだ。「くちばしは/ふるいきぐつでできている/(うそだけどね)/・・・・」

11月14日(月)
ジョージア語のクラスは出かける前にためらいがある。やりたいことが山ほどあるのに、と必ず思う。でもある意味では、この無駄が「やりたいこと」をしっかりやる後押しになっているのが分かる。無駄は他にも多く。

11月13日(日)
正しくは明日がスーパームーンだけれど、天気が危ぶまれるので、今夜じっくりとイブ・スーパームーン。月は、どうしようもなく美しくて、そこにいてくれるだけで有難くて、寂しくて温かいからずっと見ていたい。

11月12日(土)
机の引き出しを開けると、ほのかに香るのがラベンダーのポプリ。「夏に摘み取って、乾燥して、小さな袋に詰めました」と佐久から送られてきたのは10年も前だと思うのに、いまもまだ静かな優しさで包んでくれる。

11月11日(金)
フランスの日だった。NHKの『地球俳句』で「巴里の秋」と題し、25人のパリの高校生たちがセーヌ川やリュクサンブール公園で素敵滅法な句を詠み、午後は映画『エール』で明るいエスプリに満ちた涙そそる物語。

11月10日(木)
家のベランダの前の木に朝、鳥が7、8羽、止まったり離れたりしていた。20センチほどの長さの体に同じ長さの尾がピンとついている。頭は真っ黒で胸と腹が白く、あとは青灰色。飛び方が直線的で見とれる美しさ。

11月9日(水)
次期米大統領はドナルド・トランプに決まった。ああ、アメリカの人たちといったら! 2000年のブッシュ対ゴアのときと同じ。ヒラリー・クリントンは夫を大統領にするのでなく、あの時、自分で立てばよかったのだ。

11月8日(火)
博多駅前がとつぜん大陥没して、恐ろしい。早朝のことで人の被害がなかったのが不幸中の幸い。Mとは昨日会っているので心配せずにいられたものの、今後、環境的に不安がひとつ増えた。いろいろ揺れる日本列島。

11月7日(月)
銀座四丁目の角に白熊がいた。和光のウインドウの中。もうクリスマスのディスプレイで、ガラスの外からスウィッチを押すと鐘がなり、小熊を背中に乗せた大きな、大きな白熊が目を覚まして頭をあげる。目があった。

11月6日(日)
健康診断の結果はまあまあで数値的にはすべて基準内。とにかく体重を減らしなさい、といわれて久しい。いい加減な生活なのに中性脂肪とかコレステロールとか血糖で赤信号が出ないのは不思議。握力が弱くなった。

11月5日(土)
記録映画『ミリキタニの猫』を馬喰町ART+EATで。NY路上のホームレスでいながら絵を描きつづけ、支援で住居を得てからも92歳で亡くなるまで描いていたジミー・ミリキタニはギリシャ系?と思ったら三力谷さん。

11月4日(金)
よし、秋の空、真っ青。ピエール・ルメートルの日。ヴェルーヴェン警部の3冊目が出た。陰惨、ともいえるシーンが多いから怖くて暗い日や夜には読めない。でもアレックスやイレーヌの哀しみは胸に刻まれてしまった。

11月3日(木)
祝祭日なれど、わが新宿クラスは全員参加。トライアルの人も加え熱気をもって(かな?)。1冊を長く追っていることが気になり小説は好きではない方に聞くと、全部読みたくなって原書を買ったとのこと。よかった!

11月2日(水)
先週のスケジュールの混みようはひどく、いつ青山一丁目に行ったのか定かでない。ヤマナシヘムスロイドの45周年で、ともかく敬意を表して、と思ったものの山梨幹子さんには会えずカードだけ置いてきたのだった。

11月1日(火)
「秋が好きだ、物悲しいこの季節には思い出がよく似合う。木々が葉を失い、まだ赤みを残した夕暮れの空が枯れ草を黄金色に染めるとき、自分のなかで少し前まで燃えていた火がすべて消えていくのを見れば、ひとは穏やかな気持ちになれる。」(フローベール『十一月』冒頭、笠間直穂子訳)