98字日記ー2013年12月

12月31日(火)

夜の10時に築地の寿司屋で待ち合わせなので、それまでただ静けさに包まれて灯りのないビル群が沈む暗闇に面してパソコンに向かう。いいタイミングで小澤さんのメール。New Year's Day - Carole King: http://youtu.be/Qu_4McwEeIE @youtube

12月30日(月)

大手町方面は日頃と打ってかわって人気がなく、がらんとしている。新丸ビルやオアゾのようなショップがあるところは買い物客で賑わっていて、なにか、ほっとする。人混みはいやだけれど、静かすぎるのもつまらない。

12月29日(日)

久びさに長編の原書を読み始めた。スティーブン・キングの『11/22/63』。800頁を越す作品で訳も出ているが上下巻は、むしろ辛い。あの日は日吉さんの家に同期で、と思い出しながら、雑事の間に50頁。

12月27日(金)

じゃが芋、人参、玉葱、大根に肉にワインと重いものを一度に届けてもらう。サイトに申し込めば、指定時間にスーパーから確実に運ばれてくるしセールもある。品数からも昔の御用聞きの百倍も便利。生きていかれる。

12月26日(木)

新実美南子さんの素敵なキャロル独唱で年内の授業を終える。タクシーで帰ると、車の入れない暗い所を私が歩き始めたのを見て、しばしライトを照らしていてくれる場合がある。仕事が終わった後の思いやりが嬉しい。

12月25日(水)

横浜まで幾通りものルートがある。結局、バス都営地下鉄都営地下鉄京急に落ち着いてきた。バスメトロ京急は乗り換えが少ないわりに歩く距離が長く、メトロでは座れない。ゆっくりと想をねる時間なり。

12月24日(火)

贈り物の日で嬉しいこともあり、掃除中に目があったテディベアに挨拶する。Mが幼いときに買いそびれて、定年の日に「本物」を探して連れて帰った。私を待っていたのは肩書きのないデザインの新しい名刺だった。

12月23日(月祝)

久々に美容院で椅子に座り、カットされつつ足先を手入れしてもらう。頭と足の間だけ自由なのに、その椅子でのシャンプーは難しいらしく背中からセーターの下に水が入りドライヤーでガーガー乾かされる。干物一丁。

12月22日(日)

最近、家でみた3本の映画が重なり合って胸の中でりんりんと響いている。どれも少年少女の話だったからか、命の物語だったからか。『學』『ライフ・オブ・パイ(トラと漂流した227日)』『おおかみこどもの雨と雪』。

12月21日(土)

翻訳塾の後に思う。3ヶ月更新で、ずっと続けてくれている人がいるのは宝だけれど、いつの間にか、ふっと現れなくなってしまった人も多い。寂しい。そういう人がとつぜんまた参加してくれたりすると最高に嬉しい。

12月20日(金)

東京タワーが上から数段ずつ色が変わって五輪の色を灯している。きれいだけれど・・・猪瀬都知事は辞任の際に「政治家としてアマチュアだった」と述べた。とんでもない言葉。人間としてアマチュアだったのです。

12月19日(木)

テレビ番組「世界で見つけた Made in Japan」で、今日は日本のビーズ職人と米のビーズ作家、新潟・長岡のノコギリ職人とイタリア・クレモナのバイオリン職人がビデオでそれぞれの仕事を知り合う。煌めきの瞬間。

12月18日(水)

最近はあまり集まりに出ないのだけれど、いくつかは別。寅年が6人に重要サポーターが3人、食べて飲んで、というめずらしい面々の席はなんだかやたら適当で目的を忘れ、多分それぞれが素で自然なのが面白かった。

12月17日(火)

机の上に宇宙がひとつ転がった・・・上田亜矢子のオブジェで、イタリアの白い大理石トラバーチンを大きな塊から無限の空間を含んだ形にしたもの。誕生日のお祝いとしてMから。カードはアリスで、これもよかった。

12月16日(月)

風邪気味を押し、あちこちの痛みを押し、落語をききにいく。林家たい平の「井戸の茶碗」がよかった。挟み込む「今」が軽妙に笑わせてくれて、うまい噺家になった。三月の権太楼「文七元結」もきくつもりに。

12月15日(日)

寒い日は生姜湯を飲む。オリーブの木も寒そうだけれどガラス窓越しに日光をあてることしかできない。シリアに雪が降って、難民の子どもたちが腕を身体に巻きつけて歩いているのをテレビでみる。山茶花は満開で綺麗。

12月14日(土)

水谷豊主演のシリーズ『相棒』はTVの再放送をたまにみる程度のファンで寺脇康文とのコンビが好き。作品としては番外編のような『密愛』をもう一度みたい。岸恵子、ブラームス弦楽六重奏曲、マーラー交響曲5番。

12月13日(金)

旧暦にはなぜか心そそられる。日本の衣食住は二十四節気、さらに七十二候でとらえるとしっくりとくるからか。それを旬の野菜で感じる『暮らしと台所の歳時記』(山本ふみこ文・イラスト)のページを繰って過ごす。

12月12日(木)

東西線の日本橋で乗る方向を間違えると大変。大手町で気がつけばまだしも、いつも大手町のホームが後になっていくところで、あ、と思い、乗り換えようとしても行先でホームが分かれている駅ばかり。延々と落合まで。

12月11日(水)

大社淑子さんから次に書くものとして伺ったのは何年前だったか。もちろん構想としては数十年温められたものであっても、とにかく実現する情熱と力に怠け者はただこうべを垂れる。『ミューリエル・スパークを読む』

12月10日(火)

クリニックの待合室で男の子が泣き叫んでいた。ひたすら「おうちにかえりたい!」診察室の中からも男の子の泣き声が響いてきた。私の順番がきて、先生が笑う。若先生が横から「血圧が上がらなかったでしょうか」。

12月9日(月)

「権力は常に隠したがる」。特定秘密保護法をめぐる報道を読む数ヶ月、この言葉をなんと強く感じたことか。プルイット・AP通信社長が太陽の位置で写真の偽造を暴く専門家チームについて語っていたのを思い出す。

12月8日(日)

「にぎりめしとえりまき」を矢野顕子がテルミンとオンド・マルトノをバックに歌う。不可思議な音が思いがけない方向性をもって声と混ざり合う。あるいは混ざり合わないで四方八方に流れていく。例年の「さとがえる」。

12月7日(土)

夢でもし逢えたら素敵なことね/あなたに逢えるまで眠り続けたい。薬師丸ひろ子のSONGSは思いがけず、好きなこの曲がラストだった。でもやっぱり本家の鈴木雅之が歌うのを聴きたい。CDを持っているはず。

12月6日(金)

夕まぐれ、蒼い空に三日月がきらりと浮かび、その10メートルほど真下に(そんなことない?)金星が、さらにきらりと寄り添っていた。いやだなあ、と思いつつ出かけた(大げさ)ゴミステが素敵なショウ見物となる。

12月5日(木)

国民の多くが望んだのは、安定した政府の下で東日本復興や原発処理が行われることであったはず。権利を手にした途端に秘密保護法案を強行可決するなどという暴挙に出たことを、絶対に忘れないでいよう。3年後がある。

12月4日(水)

わが集合住宅の各入り口に立つ大きな山茶花の木が八本全部、みっちりと蕾をつけ、それが少しずつ開きはじめている。きっと間もなく真っ赤な花いっぱいになる。冬も次々と花に囲まれるのは何と華やかなことだろう。

12月3日(火)

『ギルバート・グレイブ』をまた観てしまった。好きな箇所をとくにしっかり観る。ディカプリオとジョニー・デップのすばらしいこと!二人とも、これ以降の映画ではイメージが全然違う。だからこそ貴重な作品だ。

12月2日(月)

2年前、股関節のレントゲン写真を撮るにはストレッチャーの上で左向きに、そして右向きに横になった。今は仰向けに横たわり1回で終わり。金具のある物を着ていかなければ靴を脱ぐだけ。ほかも楽になってほしい。

12月1日(日)

彼は人知れず散った/けれど今その名は轟く/人びとはその名を尋ねその人について知ろうとする/その人の名はジット・プミサク/思想家にして著述家/人びとの行く手  照らす灯り(スラチャイ・ジャンティマトンの詩から  荘司和子訳)