98字日記ー2022年2月

2月28日(月)
『金の糸』は日本の金継ぎに着想を得たとゴゴベリゼ監督は語った。映画の一場面ともなっている。重く散らばった過去も金で繋ぎ合わせれば美しく、もう壊れない。過去は宝物なのだから。音楽はギヤ・カンチェリ。

2月27日(日)
ロシアがキエフを攻撃、戦闘状態になりそうだ。まさかと思うことが起きている。報道ではプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権転覆を狙っているという。でもいまだに、なぜ、という疑問符がついたまま。

2月26日(土)
岩波で『オクロス ザピ(金の糸)』初日。年老い、どう過去と向き合うか、深々と心を覗き込む作品だった。終了後オンラインでトビリシの自宅にいるゴゴベリゼ監督と客席が向かい合う。通訳は児島康弘先生。凄い。

2月25日(金)
ジョージア初の女性監督ヌツァの娘ラナ・ゴゴベリゼ監督の『インタビュアー』をみる。1978年製作とは思えない現代的な切り口で仕事と家族を愛する女性を描く。93歳。明日はオンラインでトビリシから舞台挨拶。

2月24日(木)
益田ミリ『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』(幻冬社文庫)を拾い読みする。30代半ばで、毎月、東京からどこかの県に1泊とか2泊で旅をするもの。その企画がいい。ちゃんと4年で実行してしまった元気さがいい。

2月23日(水・祝)
何の祝日だろうとカレンダーを見てしまった。朝、休みだと気付かずバスの時間がいつもと違い、遅刻はしなかったものの横浜着が遅くなり、カルチャーの人たちに心配されていたらしい。真っ白な富士山が綺麗だった。

2月22日(火)
先週の青柳和子さん=長野県主婦(73)の声欄投書がいい。「除雪車は・・道路の端までスケートリンクのように仕上げる。1キロ先の店まで・・カニの横歩き。時折ダンス。室内で何枚も着込み、十二単のごとく静々と歩く・・」

2月21日(月)
ミヘイル・コバヒゼ監督の感性溢れる、ほとんど白と黒の世界なのに何故か温かい短篇3本の後、エルダル・シェンゲラヤ監督によるオマージュとして『井戸』をみる。最高!ジョージアの映画は隅々までジョージア。

2月20日(日)
元気でいる?と数人からメールや電話があった。この日記が何日か途切れたためで、ありがたいこと。すみません、ブログの管理人さんが忙しい方なのです。この春頃から、毎日アップできるようになると思います。

2月19日(土)
寒い。とはいえ、昼間10度あり、耐えがたい冷たさは感じない。手袋はいつもバッグの中にあるだけで、ほとんどしない。帽子をかぶり耳を覆いたいと思わない。身体は冬日の厳しさを覚えていて固く構えるのにーー

2月18日(金)
春に訪れる鳥なのか、この時期に見る鳥たちの姿があった。頭が黒くて背と翼は薄青に近い柔らかな灰色、顔、胸、腹は真っ白で尾が長く、全長が30センチくらい。2階のベランダより少し低い木の中で遊んでは飛び去る。

2月17日(木)
この二日間、翻訳塾があるのは嬉しい。郵送の人も含めて何かで繋がっていることの、ささやかな実感がある。この日記は、読んでいるとたまに言われても、私には触れ合う感触がないのだから何も感じられない。

2月16日(水)
ブライトン・ビーチという、ロンドンから1時間ほどの海水浴場とマンハッタンから1時間ほどの海浜と、全く同じ名前の2箇所について、それぞれ違う作品を読む。アメリカの方はニール・サイモンの戯曲で、面白かった。

2月15日(火)
冬季オリンピックで女子フィギュアが始まり、今夜はショートプログラム。スキーの女子ジャンプで着ていたスーツの寸法が規定違反で記録から外されたが、フィギュアでも着るものに決まりがあるのかしら。多分。

2月14日(月)
岩波で『少女デドゥナ』をみる。今回二番目にみたかった作品で、澄んだ風が吹いていた。僻地にヘリコプターが弦楽四重奏団を運んでくるのがすごい。一番は『懺悔』をもう一度だったのに、嘘予報に阻まれた!

2月13日(日)
今日も予報だけが正午頃から霙そして大雪と足止めをして、微かな雨で1日が暮れる。外出させないために悪天候を強調していない? でも数字を見れば人口70万の江戸川区ですでに4万人がコロナ感染者。20人に1人!

2月12日(土)
バスに3歳位の女の子が母親と乗ってきた。座りたくない、「バスはいや」と泣き出した。母親が抱き上げたけれど身を捩って「降りたい」と泣く。重そう。ついに母親が抱いたまま座ると、「放して」と泣き続けていた。

2月11日(金・祝)
北京で冬季オリンピックが開かれている。数人の名だたる選手がどうなったか少し興味を持つだけで、観客のほとんどいない競技場と同じく気持ちも閑散としている。記録を競うべき選手達は各国から揃っているの?

2月10日(木)
ふと、水野るり子さんを想った。数年前に同人詩誌も出されなくなって・・とウェブをたぐり逝去の文字を見つける。この1月10日に亡くなられていた。特異な知性と感性で熱い命を words に与えた 詩人、るり子さん!

2月9日(水)
明日は東京に積雪の気配があり警戒が必要とのことだし、コロナ感染者が増える一方で外出を躊躇う人も多く、新宿クラスを休講にする。次の課題を今日、横浜で渡すギリギリまで悩んで決め、新宿にも手配した。

2月8日(火)
多和田葉子の朝刊新連載『白鶴亮翅』が始まって8日目。スタートはなだらかで読みやすく’いい感じ’と思っていたが、今日はいよいよ多和田流が炸裂して’最高にいい感じ’。朝をこのちょっと外れたリズムで始められる!

2月7日(月)
BGMをラジオにして「世界の快適音楽セレクション」がちゃんと続いていることが嬉しい。毎朝は聴けないけれど夕方4時からの再放送が最適。ゴンチチの温かな語りは懐かしく、今日は”燃える愛”がテーマ。いいなあ。

2月6日(日)
前2回は大丈夫だったけれどワクチンの副作用で発熱することもあるという。一応、今日から3日間は予定を入れていない。でもなんともなく、イチゴとピーマンを買いに出た。今日の東京での感染者数は1万7526人!

2月5日(土)
対コロナ接種3回目。前2回がモデルナで今回はファイザーをタワーホール船堀で。アンサンブルのセーターを着ていき注射寸前に半袖になると「打ちやすくて嬉しい、ありがとうございます」と言われてびっくり。

2月4日(金)
ルイーズ・ブルジョワは、もう亡くなっていた。課題に出てくる比喩から知る。六本木ヒルズ森ビルの入り口に覆い被さっている、あの大きな蜘蛛を購入してくれていたのは素晴らしい。佐倉のフランク・ステラも。

2月3日(木)
豆まきをしない節分。コロナ対策で寺社は人の密集を避けるとのこと。大声を出すのも憚られるかららしい。でもコンビニやスーパーの前では大声で恵方巻を売っていた。幼ない時の思い出には全くないものなのに。

2月2日(水)
朝のバス停で素敵なコートねと言われた。10年以上着ているヤッコマリカルドの青緑色の毛のコートは、裏がない一枚仕立てで軽い。布地が伸びてきて、エスカレーターの段々に触れないよう、4年前に丈詰めをした。

2月1日(火)
「それから何年も経った。デドゥナはさらに成長し、すでに立派な女になった。あの少年がどこにいるのか知らないが、胸の奥では、彼女が困ったときにかけつけてきて、がむしゃらに骨を折ってくれる息子か弟がいるような気がしている。」(レヴァズ・イナニシヴィリ『少女デドゥナ』から。児島康宏訳)