98字日記ー2019年10月

10月31日(木)
サアカシュビリ大統領時代にトビリシを訪れて単独インタビューを行なった記者のエッセイを、2クラスで課題として終える。ジョージアに興味を持ったと言ってくれた人がいて嬉しい。魅力の奥行きがある国なのだから。

10月30日(水)
とにかく大学入試に英語の民間試験を使うという発想自体がおかしい。しかも試験が幾つもあり、受ける会場が都市圏に集中していて、と無駄な問題ばかり。文科省も下部機関もどうしてこんなに揃って頭がわるいのか。

10月29日(火)
緒方貞子さん、亡くなる。個人的にはお会いできなかったが心から尊敬していた。日本人女性として初の国連公使。とくに国連難民高等弁務官のトップとして煌めき輝く成果をあげ、「現場」の大切さを浸透させた。

10月28日(月)
いろいろ低調だった夏のツケを払っている秋の日々。ふと、勝どきの賃貸料をずっと払い込んでいない気がした。通帳を見ると7月から放ったらかし。慌ててATMで振込むと、その数字と並んで今月分が引かれ、ギリセーフ。

10月27日(日)
いつもは午後に行くホームに日曜日の午前中という何もなさそうな時間に行ってみる。さっぱりとした服装で話し方にも淀みはないのに、会うのは何年ぶりかしらねなんて。2週間空くと忘れられる。私の名前は知っていた。

10月26日(土)
ケン・ローチ監督は一つひとつの作品で、社会に潜む問題を新鮮な角度から切り取って見せてくれる。2年前の『わたしは、ダニエル・ブレイク』も決して忘れられない。是枝裕和監督との対談をTVで見ながら思う。

10月25日(金)
片岡義男の最新短篇(さっきデジタルでサポーターに送られて来た)の『銀座化粧』で稲荷寿司の豆狸は名古屋の名店なのだと知った。三鷹駅で気に入っている一軒で、この間ついに全種類トライ済みになったところ。

10月24日(木)
キャンディ入れ「ウミガラスのたまご」がいい。葛西臨海水族園の新グッズで、実物の卵とほとんど同じだという。4色あって、私のは緑に焦茶のアブストラクト模様が美しい。北海道の絶滅危惧種で別名オロロン鳥。

10月23日(水)
よく切れる京急と都営浅草線の連絡。横浜に行くのに、朝、初めての行き方をしてみた。三田でエレベーターで3階で降り、デッキを渡り、JR田町駅へ。4番線の京浜東北線各駅停車で25分くらい。混乱は帰りも続いていた。

10月22日(火)
天皇陛下の「即位礼正殿の儀」をTVでみる。古式の衣装、座、銅鑼の合図で進む決まり事などが興味深い。天皇の宣言が現代の言葉で読まれたのも意外によかった。上皇夫妻はTVで見られたのかしら。180カ国から参列。

10月21日(月)
先週、岩波に駆け込み、『エセルとアーネスト』をみた。原書でも読んでいる作品のアニメ映画化。原作者ブリッグズ本人が最初に少し登場したのが嬉しかった。いかにも英国らしくシニカルで、リアルな描写がいい。

10月20日(日)
ルトスワフスキの『小組曲』をパーボ・ヤルビ指揮N響で聴く。TVで。スポーツばかりをBGMにしていた後で、清涼。何かに似ていると思ったら、読み終えたばかりの小説『小箱』だった。起伏と懐かしさと未知と。

10月19日(土)
不調は激しい気候変動のせいで漢方薬を、とクリニックで言われる。夕刊で、江戸川区の各避難所や学校は台風の日にやはり大変だったと読む。一睡もしなかった学校長も多かったでしょう。学ぶこと多き1週間だった。

10月18日(金)
交通のこと、今夜の豪雨予報、からだの不調(なぜか)など諸々から、明日の土曜クラスを休講にしてもらう。自然災害について様々な解説を読み、誰がそれを実行するのか、21世紀が進歩ある時代になるのを願うのみ。

10月17日(木)
山梨ー首都圏間の中央自動車道に土砂が押し寄せ、心配していた通り、毎木曜日に高速バスで新宿クラスに来てくれる人が欠席。でも交通の不都合だけだったようでよかった。今日も雨で、被災した人達は辛いでしょう。

10月16日(水)
横浜クラスが開けて、ほっとする。被災した人達の絶望感はいかばかりかと思うものの解せないこともある。警報に応じず遅れる人、2日分の食料・飲料の備えがない人、外の状況に興味なく自分の家さえよければいい人。

10月15日(火)
ヘリから撮った長い千曲川、決壊した堤防、その脇に延々と広がる泥水、浮かぶ家々・・豪雨が夜だったのも不運。我が家は昨日、全ての排水管掃除で疲れたけれど、そういう日常が災害への覚悟になっているとも思う。

10月14日(月・祝)
台風が関東から東北を襲い、一夜明けて惨状が分かってきた。20を越す河川が氾濫、堤防が決壊したため。東京では多摩川が溢れてびっくり。パテ屋さんや奥沢が心配だったけれど、高台なので大丈夫のはずとのこと。

10月13日(日)
モーパッサンの『わたしたちの心』は久しぶりに恋愛小説とはこううものと堪能したが、今日からは待望の小川洋子の書下ろし新作『箱』を読む。単行本の表紙と扉の絵が美しい。19世紀の仏画家J・J・グランヴィル。

10月12日(土)
午後8時頃。雨が強く風の唸る音が深くわーんと響く。二重サッシを閉めれば聞こえないが、刻々とテレビが台風状況を伝え、区の危機管理室からメールが届く・・・向かいの小学校の避難所の電気は全部付いている。

10月11日(金)
台風19号が大型であるという予想から、明日は交通機関がほとんどストップ。クラスがない土曜日でよかったけれど、石田百合さんの個展も休館だそうで行かれなかったのが心残り。オリーブの鉢植えを部屋に入れた。

10月10日(木)
朝5時過ぎ、新聞を玄関口に取りに行って転んだ。起き上がれず、廊下に座り、座っていても仕方ないので、新聞を読んだ。どうやったら立ち上がれるか考え、やっと立ち上がり、ベッドに行き、1時間ぐっすり眠った。

10月9日(水)
ギ・ド・モーパッサンの長編小説『わたしたちの心』を読むのに一カ月かかった。読んでいる瞬間々々は深く充実していて、文学に浸る喜びをしみじみと味わった。馥郁たる笠間直穂子訳に負うものであることは勿論。

10月8日(火)
最近課題が難しくなっていませんか、と言われるが、そんなことはない。まだまだ易しい。でも長くはなっている。訳す分量が多いほど身につくのは当然だから。でもお陰で昨日と今日はひたすら訳稿と向き合っている。

10月7日(月)
5日、香港の大規模デモに対して「覆面禁止法」が施行された。行政長官によりいわゆる緊急法が発動されたのは約50年ぶりとのこと。中国の軍とか武装警察が乗り込むところまでいきませんように。どうか賢き解決を!

10月6日(日)
ゴーリーの暦が留守中に届いたので事務所まで取りに行った。大きさから、えっ、もうカレンダーの時期ですかと驚かれる。私には80歳の1年がとても長く感じられるのは何故だろう。あっという間にという思いがない。

10月5日(土)
横浜の帰り京急が動いていず、東京まで戻り、SGで気になっていた『岸田劉生展』をみる。長谷川町子美術館所蔵の「麗子立像」と「麗子洋装之像」がいい作品だと分かったのが収穫かな。最近の図録は厚さを増し過ぎ。

10月4日(金)
元副校長先生とぱったり会って話し込む。小学一年生の算数が難しくなり過ぎていることは巷の話題にもなっているが、スタートがそうだから中学まで尾を引いているとのこと。お仕着せの教科書で先生達は大変らしい。

10月3日(木)
アルコール類は消費税が10%になるからマルエツでは買い置きをあんなに勧めてセールもしていたのだった。私は愛用のノンアルコールのビールを沢山買って今日、気がついた。ノンは消費税が変わらず8%なのだった。

10月2日(水)
東京パラリンピックのチケット申込みに、ご希望に添えないとのメール。残念だけれど、よかったとも思う。例えば開会式のある来年真夏日に元気かどうか分からないのに、数万円をすぐに払い込むのも疑問だったから。

10月1日(火)
「銀座文化もシネスイッチ銀座と名を変えて、いわゆるミニシアター、単館上映館の仲間入りをした。しかしシネスイッチでは、上映中の飲食はもちろん・・・未だに入替制なし。途中の入退場も自由である。」(片桐はいり『もぎりよ 今夜も 有難う』から抜粋)