98字日記ー2020年2月

2月29日(土)
提案していたやり方に、来週は教室を開かないというカルチャーの決定がぴったり合った。横浜と新宿それぞれの担当者の丁寧な対応で、郵送によるやり取りも大丈夫そう。課題も小説が終わったところで無理がない。

2月28日(金)
全国一律休校に学校も親達も戸惑っているという。大変だけれど、次の日にもそうなると覚悟していなかったわけ?教師の一人にコロナが見つかったら即座に休校、消毒、全員検査になると準備していなかったわけ?

2月27日(木)
大変。全国の小中高を来週から春休みまで臨時休校にするとの政府発表。1ヶ月休みということ? 大丈夫?この数日の動きに、私は翻訳塾を休講にせず危険に近寄らない方法を事務局の担当の人と話し合っているが・・・

2月26日(水)
時々か、たまに、か分からないけれど気持ちがどんと沈むことがある。普段は好きなこと、したいことに囲まれているつもりなのに、その淋しさの重さといったら。大抵はすぐに忘れてしまう呑気な空虚さなのだけれど。

2月25日(火)
人気番組『ポツンと一軒家』では、そこの住人だけでなく、見守る周辺地区の人たちにも感動することが多い。東京に生まれ育ちながら岩手の祖父母を助けて牛の人工授精師になった若い女性のなんと美しかったことか!

2月24日(月・祝)
私の平熱は36.4度らしい。食事の前後などにそれが若干上下する。体温測り遊びはお終いにするにしても、あちこちに出かける我が身にコロナ菌が付いていない保証はない。明日の我が家での「サロン」はお休みに。

2月23日(日)
ニュースは新型肺炎患者の新たな発表から始まる。古くて覚束ない体温計しか持っていなかったので新しいものを買った。オムロンの電子体温計で20秒で測れるもの。2172円の10%引き。36.8度は私にしては少し高い。

2月22日(土)
「タイプライターズ15」という番組を初めてみた。又吉直樹、羽田圭介、中村文則、加藤シゲアキという若い作家が揃っていて気持ちいい。島田雅彦に芥川賞選考について聞くビデオ部分もあったが、さらに深まれば。

2月21日(金)
和心さんがブログで見せてくれた景色の美しいこと! 稲田が広がる向こうに山が黒いシルエットで連なり、その上空に満月に1日前の月がぽっかりと浮かんでいる。須玉の空。いいなあ。今日はお寺でヨガの日だとか。

2月20日(木)
テディベアの手作りが流行っているとか。我が家のロッキングチェアに座るテディベアは、子どもの時に欲しかったのにと言われつつ私が定年の日にMに贈ったもの。その日Mから贈られたのは肩書のない私の名刺。

2月19日(水)
柴田元幸さんが責任編集する『MONKEY』20号が2、3日前に届いた。ほとんどが書き下ろしの短編か翻訳。一本一本の完成度が高いというか、完結していることがいい。行動する翻訳家であることが素晴らしい。

2月18日(火)
コロナウイルス新型肺炎への恐れが広がっている。風邪の症状があれば学校や会社を休むようにとの政府発表ではあるけれど、そうもいかない人が多いに違いない。陽性かどうか分かるのに日数がかかるのがネック。

2月17日(月)
横浜クラスのナチュラリストから、林で拾ったという松かさを三つ、貰った。一つの直径が3~4センチ。まさに10枚は花弁が重なっている焦茶色の薔薇の花。でも柔らかくはなく、かっちりと強い。飽かず眺めている。

2月16日(日)
講談は話が怖そうで近づけないが、六代目神田伯山の講釈ががネットで片鱗を見られ、今夜は「情熱大陸」で襲名披露興行の『畔倉重四郎』のとくに最後を聴けてよかった! 昔はふらりと立ち寄っていた新宿末廣亭で。

2月15日(土)
木場をバスで通った時、枝に濃いピンクの花をいっぱいつけた並木道が見えた。多分、梅。今日は気温17度という暖かさで、梅も春が来たと思ったに違いない。バスは深川伊勢屋本店の前で信号待ち。お団子を食べたい。

2月14日(金)
外に出たのは資源ごみを置きに行った時だけ。暖かく安全に静かにゆったりと家にいるのは何と気持ちのいいことか。厚い絹揚げ豆腐と生椎茸をこんがりと焼き、瓶詰めの刻み生姜と薄口醤油で。食器は青い蔓草模様。

2月13日(木)
新型コロナウイルスによる集団感染の日々のニュースに、ズボラな私さえ普段の2倍は手を洗うようになった。マスクは1日1枚、とMに箱入りを渡されている。人混みに近付きたくない気もする。いつか収束するのかしら。

2月12日(水)
一日24時間では足りないくらい遊び呆けているという友人。歌集はこれでお終いにしますと遺書の如き歌を数種詠んで送ってくれた友人。80歳という年齢はさまざまな揺らぎをもたらすようだ。私は取り留めなくいい加減。

2月11日(火・祝)
映画を観る時間が十分取れない。昨日アカデミー賞授賞式だったのに、昨年の作品賞を受賞した『グリーンブック』をつい最近観たところ。1962年の米南部を黒人ピアニストが演奏してまわる実話。心に深く刻まれた。

2月10日(月)
いま、を大切にしたい。同時代を生きている人がすることを大切にしたい。現代アートにそのまま触れたいし、現代音楽を生で聴きたい。パフォーマンスや演奏の場にいたいし、古典の観衆や聴衆も「いま」の存在。

2月9日(日)
三鷹の帰りに原宿の大田記念美術館へ。肉筆浮世絵名品展の最終日。葛飾応為の『吉原格子先之図』を見たくて。印刷では潰れて黒いところに原画では筆の跡がある。単眼鏡持参で見入っている外国の人が多かった。

2月8日(土)
受賞が一番とは思わないけれど、大岡信賞の第一回受賞者の一人にヒカシューの巻上公一さんが選ばれたのは嬉しい。40年前にこの人はすごい、と思って追ってきた人が認められたのだから。大佛次郎賞の黒川創さんも。

2月7日(金)
吉田純子編集委員はまた読む者の心に一人の演奏家を深く刻んだと思う。米国のピアニスト、ピーター・ゼルキン。その惜別の文は、彼女だけの知の蓄積を彼女だけの感性溢れる言葉で伝えるもの。今日付の朝日朝刊。

2月6日(木)
7年前に出版されてタイトルだけ知っていたマイケル・ブース著『英国一家、日本を食べる』を読む。よくある食べ歩きかと思っていた偏見を反省。一流の取材対象に深く切りこんでいて面白かった。寺島のぶ子訳もいい。

2月5日(水)
新型コロナウイルスよる肺炎が沢山の命を奪い、中国での死者が500人近くに。マスクが品薄らしいけれど、手すりに掴まる私は、もっと大勢の人に手袋をしてもらいたい。でもその程度では防げないほど強力なのかも。

2月4日(火)
日本点字図書館の小冊子に見知った名前があった。釜本美佐子さん。私と同世代でJTBルックのコンダクターとして世界中を周りエッセイストでもあった。70歳で全盲になられたという。今、英語の点字を勉強中とのこと。

2月3日(月)
肉も魚も大好きだけれどベジタリアンになりたくなることもある。私は元の形を想像するのが怖い偽善者。ウィーンの市場で卒倒しそうになった。でも内澤旬子さんの猪については、その哲学と美学と実行力に拍手する。

2月2日(日)
全豪オープンテニスの男子単決勝をTVで観ようと家に早く帰る。オーストリアのドミニク・ティエムが初優勝かとほとんど信じた時からジョコビッチが猛反撃。勝負師の技を見た。日曜夜の関ジャムで見る技に繋がった。

2月1日(土)
横浜のそごう美術館でロベール・ドアノー写真展をみる。白黒写真に切り取られたパリの光景や人々、一点一点に見入る。1940年代以降の光景は自分史に重なり、ほとんど人のいない会場で静かな、温かな時間だった。