98字日記ー2021年6月

6月30日(水)
今日は横浜で4月期最後の日。3ヵ月ごとを繰り返して、いつの間にか20年近くたった。当初は1クラス20人くらいだったのが今は8人平均。以前より課題は長いし私の添削スピードが落ちているので、ちょうどいい人数。

6月29日(火)
イギリスのコロナウィルス感染者数が1日2万人! アメリカは1日平均1万5千人。日本の昨日は1千人でそのうち東京が350人。こういう数字に日々接していて、どうして外国から人が呼べるのかわからない。思考破綻。

6月28日(月)
若い時に登っておきたかったと思う山は1704米の茅ヶ岳。今朝、TVで田中陽希が頂上に立つのを見て思い出した。北杜市という馴染みのある場所に属していると知った。そこから富士山を眺めたかったなあと思う。

6月27日(日)
日曜美術館で三島喜美代を紹介し、本人の制作風景が見られて、とてもよかった。城南島というところの art factory に作品が展示されていることを初めて知る。東京で、しかも勝どきから距離的に近い場所だなんて。

6月26日(土)
朝、船堀まで行き、コミュニティ会館で都議員期日前投票をして、タワーホール船堀の地下の映画館で『おらおらでひとりいぐも』をみる。75歳の桃子さんの日々。「寂しさ」の姿が三人の元気な男達なのがいい。

6月25日(金)
毎日、文句を書くのは嫌なのでまとめて。オリンピックやめて。老朽・美浜原発3号機の再稼働、怖い。夫婦別姓は自由であるべき。沖縄南部の土で基地を作るなんて言語道断。7人に1人の子供が貧困って許せない。

6月24日(木)
ヴィラ・ロボスの「ショーロス」をちゃんと聴きたい。最近、ちょっと耳に入ったりちょっと読んだりするので、然るべき環境で然るべき人のギターで聴きたい。ブラジルの言葉でショーロは泣くという意味だとか。

6月23日(水)
上野のシンシンとリーリーに、今朝未明、双子の赤ちゃん誕生。3月の交尾発表には、パンダの「個人情報」はどうなっているのと思ったけれど、生まれれば嬉しい。難しさを乗り越えて、どうか無事に育ちますように。

6月22日(火)
来週の zoom 会議に向けた練習として、またMに2人会議を開いてもらう。うん、大丈夫。でも画面に自分の弛んだ顔が映ることにうんざりする。Mは本屋のミニチュアドールハウスを見せてくれた。ライトも点く

6月21日(月)
朝日の朝夕刊セットが7月から月4400円に363円の値上げ。27年ぶりとのことで、よく我慢していたとも思う。玄関まで毎朝夕、届けられるのだから、もっと買って読んで、と言いたいけれどデジタル版読者もいる。

6月20日(日)
浮世絵の情景に気持ちが漂うままに高田郁の「みをつくし料理帖」を読んでいる。初めてではないのに心に残っていなかった。いま改めて『八朔の雪』で揺さぶられ、『花散らしの雨』『想い雲』とハルキ文庫で。

6月19日(土)
人出が多くなっている。横浜の往復でも2人掛けシートに1人というわけにいかない。走る車も多く、近頃なかった交通渋滞にはまったり。大丈夫なの、オリンピックムードを盛り上げようという企みに乗っていて。

6月18日(金)
江戸博の特別展『北斎と広重』が終わるので、朝のうちにバスで。北斎の「富嶽三十六景」46点が全て展示され、追う広重の異才の幾つかををみる。一番楽しく見たのは北斎の画室の小さな模型で応為もいた。

6月17日(木)
美術館も再開したけれど予約が必要だったり、行く気持ちを削がれる要素が多い。家でしたいことも多く、出不精になった。週に2日か3日は必ず講座に出ることが心身ともに役立っている。感染リスクを避けつつ。

6月16日(水)
梅雨のようでいい気持ち。きらきら輝いていて眩しかったり、じめじめ濡れていて侘しかったりせず、薄いグレイに包まれるのは少し寂しく心に沿う。そうか、やっぱり、私に似合うのは曇り。さあ、お茶を飲もう。

6月15日(火)
食べることは大好きだけれど、テレビ番組や雑誌記事の食テーマがあまりに多いことに辟易する。食べ歩き、料理、爆食・・一日の食事がままならない人たちが数多くいる現実と、どう折り合えるというのだろう。

6月14日(月)
誰の弾くチェロだったのか調べれば分かることだけれど、今朝の目覚めはシベリウス「交響曲第二番」3楽章くらい。次のピアソラ「ルグランデ」が気持ちよくて、ふわっと眠り込み、最後の部分でイマーシヴに!

6月13日(日)
小説の中で茅葺きの描写くらいしか茅を目にすることはない。豊葦原の瑞穂のくにに初めて根付いた草なれど。でも乙川作品の『喜知次』では「茅花のころ」の章があり、土手が茅で埋まり白い茅花が静かにそよぐ。

6月12日(土)
夢の中で子どもだった。珍しいというか多分初めて。まだ吉祥寺の家の庭が広くて木が沢山あり、私は三和土で鞠をついていた。マリ・・欲しかったのになぜか買ってもらえなかった。ゴムかスポンジだった。

6月11日(金)
早朝に「グレートトラバース日本三百名山」をTVでみる。田中陽希が自分のプランで一人でとにかく歩く。車など一切使わない。それをカメラマンが追う。世界に名だたるアルピニスト駒井研二、それに平出和也。

6月10日(木)
共有するものがあって会う。その時間は短くても、ほっとする。会わなくても郵便やメールで補ってつながりを保つ。翻訳そのものは孤独な作業ではあるけれど、共有する人たちがいる温かさを大事にしたいと思う。

6月9日(水)
外語大出版会が出した『28言語で読む「星の王子さま」』は28章それぞれに異なる言語を当てたアイデアが秀逸。でも言語学入門とサブタイトルにあるように、いわゆる教科書。ジョージア語がないことが残念で・・・

6月8日(火)
翻訳の課題とする文章を選ぶのに一日、悩む。小説、随筆、紀行文、新聞記事、児童書など幅広くさまざまな文体に触れてほしいし、文を通じて数々の筆者に出会ってほしい。なるべくワクワクと楽しく、となると。

6月7日(月)
ぼんやりと見ていたTVで「世間的に20から40代で美術館に行ったことのある人は何%?」という質問に対して答えは74%で、まあ、妥当な数字でしょう。そこにいたタレント達の答えは25%だった。残念ながら。

6月6日(日)
小雨が降ったり止んだり、静かな一日。日差しが強いと眩しく感じるのは手術の前に戻ってきているのかしら。もっとも辞書よりもっと細かい字も、まだ眼鏡を必要とはしない。それはとても便利だと感謝しつつ。

6月5日(土)
山海塾『ARC 薄明・薄暮』を世田谷パブリックシアターで。1時間15分の短い公演にMと。天児牛大は踊らず。だからか、あの張りつめた空気はなく、かわりに懐かしさがあった。それでも生で見られる舞台は貴重。

6月4日(金)
なにか出来事を把握・理解するとき、自分の基準となるのはまず1938年、1945年、1962年、それから1972年、1998年、2013年。とくに本の発行年度や映画の公開年度については、それに2018年が加わった。

6月3日(木)
羽を広げると2メートルはある黒い鳥ミナミジサイチョウが一羽、最近、千葉県のあちこちで見かけられるそうだ。南アフリカ産で絶滅危惧種になっている。茨城県から1年半前に逃げて野生化しているという話もある。

6月2日(水)
大坂なおみ選手が全仏オープン試合後の記者会見をボイコット、そして試合棄権宣言。大きな話題となるだろうけれど、その気持ちはわかる気がする。要はアスリートとして受け止められたかったのだと思う。

6月1日(火)
「ひとつの描写、ひとつの表現に数十通りの和訳を用意しながら、どれひとつ嵌まらないことがある。変貌自在な日本語が英語に負けることなど考えられないが、作家によって絞り出された英文も魔物なのであった。・・・どうしても思いつかなかった言葉がどこからかやってきて、重たい瞼の上に降りる・・・」(乙川優三郎『ロゴスの市』から抜粋)