98字日記ー2022年9月

9月30日(金)
やっとゲルハルト・リヒター展に朝、東近美の開館と同時に入る。強制収容所の写真を元にした4点の「ビルケナウ」をしっかりみて、一連のアブストラクト・ペインティングをたのしむ。多彩なのに派手さがなく深い。

9月29日(木)
「理解する」とはどういうことか考えこむ。子どもを対象とする英語の本にゴブリンは良く登場して、鬼、小鬼、妖精、小人などと訳されるので、そこでは理解しても、別の本に出ていたのと同じだとは気がつかない。

9月28日(水)
京急のボックス席でインド人女性が話しかけてきた。私が明日用の添削をしているのを見て、日本語で「英語を話しますか」と聞いてきた。もう東銀座で、ほんのちょっと英語で話して日本橋で私は挨拶をして降りた。残念。

9月27日(火)
安倍元首相国葬の献花にいったというご近所さんに出会い、家まで歩く間、話を聞かせてもらう。私は国葬に反対だけれど献花や追悼をする人は勿論いていい。買っていったお花を手に、なんと3時間並んで歩いたとのこと。

9月26日(月)
シャインマスカットが美味しい。いつもの秋のうれしいプレゼント。この頃は種もなく皮ごとパクッと食べられるのも幸せ。店先ではゴージャスな値段がついているので簡単には手が出ない、この季節最高のジュエル。

9月25日(日)
クラスの人たちのメモなどを整理していたら、東京で新型コロナ感染者が47人出たので受講はやめたいという2020年6月の手紙があった。昨日の東京では4855人でこれでも先週より減っているという。感覚が鈍っている・・

9月24日(土)
スマホでYouTubeで時間が過ぎて困る。子どもにインタビューする英語番組 Steve、一つの単語を日ー米ー英語(セーター/スウェター/ジャンパー、とか)で言うコーナー、自分も困っているのに人助けをする人たち・・・

9月23日(金・祝)
今年初の柿。ようやく秋。でも雨の予報が人の動きを止めておきながら東京では全く降らなかった。コロナの拡散を抑える対処法? 釈然としない。値上げはジリジリ押し寄せ国葬は実行するらしい。3日間も交通規制をして。

9月22日(木)
明日からの連休は雨に閉ざされるらしい。原稿、ジョージア語の宿題、遅れ遅れの手紙やメールが待っている。まずは留守中の再配達を明日の午前中に集中させ、昼には食料品が受け取れるよう夜中にオンラインで頼む。

9月21日(水)
体調が万全という感じでなく、少し疲れている。乗り物の中で座りたいと思ってしまう。でも優先席は圧倒的に埋められている、若中年層に。とくに電車では車両の端が好まれ、座る若者の前に若者が立って待っている。

9月20日(火)
台風14号が九州から中国地方を縦断し、東京も厚い灰色の雲に覆われて時に激しく雨が降る一日だった。線状降水帯なんて言葉は前からあった?昨日行われた英エリザベス女王の国葬の模様を録画や紙面でしみじみと見る。

9月19日(月・休)
滅多にしない場所の掃除をしてから家中の排水管清掃を受け、ほっとする。日々の掃除に人手を借りていた時代もあったけれど、今は頼むことの方が気が重い。自分でやらないくせに人の掃除は気に入らない、嫌な性格。

9月18日(日)
「The ball found the glove」。投手・大谷翔平がピッチャーライナーに凄い反応を見せてキャッチした。試合後の英語でのインタビューに「適当に手を出したら入ってきた」と答えたのを、一平さんが見事な訳でキャッチ。

9月17日(土)
気温30度でまだ暑く、今年の夏コーデそのままで横浜へ。夏じゅうほとんど同じ格好をしていた。白いシャツとパンツの上から青・水色系のスカーフの端がくっついているだけの布服。銀色の大きめのバッグとサンダル。

9月16日(金)
ジャン・リュック・ゴダールが2日前に死去した。今日、菊川駅のすぐ近くにオープンした小さな映画館「Stranger」はこれから20日間、ゴダールの80、90年代の作品6本を連日上映する。快適な椅子で『パッション』をみた。

9月15日(木)
モーリス・センダックの 『Outside Over There』 を課題として全クラスに渡し終えたので、どう取り組むかぼんやりと考えていたら6時間経っていた。この絵本を子どもに選ぶ人って、いいな。

9月14日(水)
横浜のロビーに数人でいる時に立川さんからかかった電話で荒井利尚さんの逝去を知る。11日日曜日に、とのこと。冊子の件で例の元気な声を聞いたのは1ヶ月前で、秋には会おうと言っていたのに。同年輩の友人が次々と。

9月13日(火)
友人が詐欺に遭った。警察官を名乗る純朴で優しそうな男に三つの銀行の口座番号と暗証番号を告げ、夕方、家族が帰ってきて発覚する前にすでに限度額まで下ろされていたという。信じられないほど素直だった友人・・

9月12日(月)
最近TVを見ずにYouTubeを見てしまう。来日10年の頃から聞いているニック channel のニコラス・エドワーズさんの自然で感じが良い日本語は驚異的にうまい。日本人で英語のうまさで相当するのは多分、一平さんくらい。

9月11日(日)
この数日、夜中に部屋のどこかが明るい気がして仲秋の月だと気がついた。カーテンのない三角出窓から光を投げ入れてくる、あの愛しい輝き。ただ空に雲が厚く、ずっとというわけにはいかない。満月でなくてもいい。

9月10日(土)
物価対策として政府は住民税非課税の低所得世帯に一律5万円を給付するという。焼石に水じゃない?と思うと同時に、対象となるのが1600万世帯つまり全世帯の4分の一だそうで、驚き!飢えている子どもが多いのも当然。

9月9日(金)
葛飾区が来春、区立小中学校の給食費を完全無償化する。江戸川区は補助を増やしつつあり、たしか第三子からは無償。大阪に比べて東京は、こういう手当が鈍い。食事を十分摂れていない子どもは多勢いるというのに。

9月8日(木)
明日の日付に変わりそうな時間にここに書き始めたため、Today’s afternoon いう言葉で始まる『英国のエリザベス女王死去」の号外をネットで受け取ることになった。96歳、在位70年。

9月7日(水)
夜中というか明け方、ふと男子バレーのフランスvs日本の試合をTVで観てしまい、あまりの接戦に眼を離せなくて、横浜への往復両方で駅を乗り過ごしそうになった。明日の新宿の2クラス分の添削をしていないのにどうしよう。

9月6日(火)
小川洋子の小説を新刊で読むのは久し振りな気がする。『掌に眠る舞台』は8本の短編集で全てこの2年ほどの「すばる」初出の作品。いつもの流麗な文体で大きな安楽椅子に深々と座らせられ、ぽんと夕空に放り上げられた。

9月5日(月)
歯の洗浄と美容院でのシャンプー、この二つの場合にいつも、いつまでこの姿勢が取れるのかしらと思う。どちらも2カ月か3カ月ごとでリクライニングシートのような椅子で仰向けになる。楽なようで、とても緊張する。

9月4日(日)
朝6時半にゴミを捨てにいく。空気が涼やか。150メートルくらいの道のりの左右に濃い緑の生垣があって、もちろんマスクはしない。出会ったのは一人だけ、お勤めか、急ぎ足で過ぎていった。ようやく夏とさようならかな。

9月3日(土)
土曜クラスの後にふと、みなとみらい線で1駅の新高島駅にある BankART に。その近さに、会場そのものの美しさ、静けさに感動する。もちろん目当ては北島敬三の『Untitled  Records』。作品は写真集で見る方がよかった。

9月2日(金)
時間に追われている。しなくては・・と決めていることが少しずつしか終わらず、遊びがない。でも腰が痛いのは一過性だったので、そろそろ美術館にも行こう。リヒター、李禹煥、北島敬三と予定だけは立てている。

9月1日(木)
「一人でいるのは 賑やかだ/賑やかな賑やかな森だよ/夢がぱちぱち はぜてくる/よからぬ思いも 湧いてくる/エーデルワイスも 毒の茸も・・・」(茨木のり子『一人は賑やか』から抜粋)