98字日記ー2017年1月

1月31日(火)
母の誕生日なので華やかな色の花をたっぷりと飾る。アニメ映画『この世界の片隅に』をみてきたところで、広島に新型爆弾が落ちたと聞いたとき新庄学園の同僚や教え子たちをどれほど心配したことかと思いを馳せる。

1月30日(月)
記念切手はいつも新発行を注意しているほど熱心ではないけれど、気がついた時に素敵であれば買う。安野光雅の「童画シリーズ」がいつの間にか第4集になっていた。ニキ・ド・サンファルの元気な女を使ってほしい。

1月29日(日)
暖かな家の中にいるのが心地よくて出かけたくない。葉のある木々もたくさん冬を迎えており、それを透かして飛行船がゆっくりと移動していくのを眺め、本の頁を繰る。詩人水野るり子さん編集の『二兎』が心に響く。

1月28日(土)
椎茸、舞茸、しめじにお豆腐をのせてパッと酒蒸しにしたものに柚子の皮を散らして今夜のメイン。寝る前にやっぱりもの足りなくて、ほとんどインスタントでヴィシソワーズを作り、もう朝食を何にするか考えている。

1月27日(金)
見逃したくない美術展、映画は時間を見つけてふいに行き、ここに書くとは限らないので、予定をあげておこう。『草間彌生』『ナビ派』『マティスとルオー』『江戸と北京』『未来を花束』『エゴン・シーレ』『広い世界』・・・

1月26日(木)
明日の夜、矢野顕子のドキュメンタリー映画が新宿であるけれどと誘われたのを残念ながら断ってすぐ、偶然というのか番組「SONGS」で、たっぷりと『ひとつだけ』と『ほうろう』を聴く。ますます冴えるピアノと。

1月25日(水)
愛用していた御飯茶碗にかすかにヒビが入ったので、去年の暮に新しくした。初めて漆器の御飯茶碗にしようと思い、根来を選んだ。手にやさしい温もりを感じる。口が開いているので小丼の盛り方もできるのが嬉しい。

1月24日(火)
今年も金柑のジャムを送っていただく。1瓶は実を大きく残してみたと手紙がついていた。奥様の介護をしながら、という言葉につまらない慰めなど私は書かない。ご夫婦のどちらかが介護にあたっている友人達が多い。

1月23日(月)
外国語の教え方は人によって千差万別。今のジョージア語のトルニケ・スレセリ先生は言葉を成立ちから分析してくださり、初級に戻るのを少しためらっていた私には望外のご褒美だ。覚えるだけでなく全暗記を目標に。

1月22日(日)
ずっと前にチケットを買っておいた楽しみな演奏会だった。一番近いホールで聴けるのだから。でも前半だけで帰った。きれいな音と正確な響きに辛くなって。席のせいだったのだ、きっと。パクキュヒ(朴葵姫)のギター。

1月21日(土)
思いたって、開演20分前に部屋を出て東劇のシネマ歌舞伎へ。坂東玉三郎の『阿古屋』。琴、三味線、胡弓を品格高く弾く役を演じられる、現在ではただ一人と知る。舞台裏の様子も含めて宝石のような90分だった。

1月20日(金)
『千と千尋の神隠し』は、もう16年も前の作品だったことに驚く。だからだろうか、声が誰なのか、まったく記憶になかった。釜爺が菅原文太、湯婆婆が夏木マリ、そして千尋の両親が内藤剛志と沢口靖子だとは新発見。

1月19日(木)
直訳すれば「フライパンに投げ込まないもの(は、もう獲らないし殺さない。遊びでは殺生はしない)」を、私は「食べないもの」ととったが、「フライパン以上に大きな生き物」ととった人がいて、私は論破できない。

1月18日(水)
サンチュに韓国味噌のサムジャンをのせ、それで石焼ビビンバをくるんで手摑みで食べた。カルビやタン、野菜はもちろんおいしかった勝どきでの暖まるディナーだったけれど、ソウルが懐かしく、また行きたいと思う。

1月17日(火)
頑固でひねくれていると家族に言われる。よく見ていると思わざるを得ない。ひねくれている方は、まさにその通り。ただ頑固の方は本質的にはそうであっても行動で貫けるかどうかは別問題で自信なし。でも貫きたい。

1月16日(月)
間もなくトランプ新米大統領の就任式があるが、個々の言葉で人種差別や女性差別への反発が表されている。歌手のレベッカ・ファーガソンは就任式によばれて、あの「奇妙な果実」を歌ってよければ、と言って断られた。

1月15日(日)
日本海側は大雪で数年に1度の寒気。京都での全国都道府県女子駅伝を中継するTV画面が降りしきる雪だけとなり、選手達の姿を隠すことも。東京は青空。昨夜8時に銀座に食事に出たら空気がきりりと冷たかったが。

1月14日(土)
POKEMON GO の生みの親の一人、野村達雄さんについて読み、打たれる。旧満州に残留して中国人と結婚した日本人女性の孫で、30歳。日本に9歳で来て苦学。5分の会話で全面的に信頼して抜擢した上司もすごい。

1月13日(金)
体調がいまいちでも暮と新年の慌ただしさから脱出できた。Mにもちらっと会えたし、郵便局や銀行での雑事も終えた。机の上に重なる一方の紙類を横目でみながら『乙嫁語り』9巻を読む。パリヤとウマルがかわいい。

1月12日(木)
眠い!途中で咳き込んだりして、不愉快だったに違いない授業を3時間して、家に帰り着くや眠い!頼まれた高齢者の生き方についてのアンケートに答える。都心に住む。好きなものを食べる。美しいものを見つける。

1月11日(水)
朝、横浜に向うとき、真っ青な空に真っ白な富士山が凛と聳え、裾に碧い山並みがあった。夕方、家に帰るとき、金色のほぼ満月が空にかかり、その下に大観覧車「ダイヤと花」が浮いていた。ベタな文でしか表わせない。

1月10日(火)
さて、水曜と木曜の3クラスを控えてさすがに今日は、起きてから寝るまですべての時間が添削、チェック、準備。やっていたつもりなのに毎週、最後はこんな風に追われる。もう少し、もう少しと書きたしてしまう。

1月9日(月・祝)
朝食は二日遅れの七草粥で、リビングルームの鴨居に波除神社の破魔矢を斜めがけし、新宿のロイヤルホストで暮にした忘れ物を受け取り、やっと2016年から17年に。ジョージア語の講座も今日、しっかり始まった。

1月8日(日)
そして今日は地元のシニアたちと新年会。お弁当に手料理の汁物にお漬物に途中で三味線が入って黒田節に花笠音頭・・・この純和風もとても好き。和洋が入り混じるのはなんて魅力的なことか。翻訳の妙はここにあり。
1月7日(土)
横浜の土曜クラスでスタート。終わってイタリア料理で新年会。みんなと話していると、今年は翻訳考をまとめたいと考えつつ、思いはTVでみた「ろりーたファッション」の文化度の高さに揺れる。らなかった和ロリ。

 1月6日(金)
昨日の映画を、プログラムを読んだうえでもう一度みたい。イオセリアーニ監督がいつか登場させようと思っていたという、フランス革命時代に編み物をしながら政治集会を傍聴していた女たち、トリコトゥーズをみたい。

1月5日(木)
イオセリアーニ監督『皆さま、ごきげんよう』をみる。原題は『冬の歌』でジョージアの民謡からとられている。映画全体がコラージュのようで、一つひとつ区切られたシーンの完成度が高くて目が眩む。岩波ホールで。

1月4日(水)
酉年で鳥や鶏を描いた年賀状が多くて嬉しい。赤い鳥を手刺繍して皮で裏打ちした小さな栞をハンバーグ屋さんで売っていて、私に、とすぐ思ってくれたのは昨年暮の翻訳のテーマが赤い鳥だったから。紅いスズメの絵も。

1月3日(火)
明日からは仕事、と書いた部分をブログ「管理者」の代島さんに訂正を願いでようと考えた。明日からは日常、と書くつもりだった。でも私には生活そのものが大仕事なのだから、いいことにする。スタインベックを読む。

1月2日(月)
元旦は吉祥寺で、今日は奥沢で、全部で15人の親戚たちと会い、若い世代が元気だと、とりわけ嬉しく思う。締めは5人で2セットのトランプを使い、神経衰弱とババ抜き。良き新年の二日を過ごし明日から仕事開始。

1月1日(日)
上野動物園子ども動物園で飼育しているニワトリのなかで、ひときわ優美な姿をしているのが「尾曳(おひき)」です。日本で昔から飼育されているニワトリ(在来鶏)のひとつで、地面を引きずるほどの長い尾と短い足が特徴です。(『どうぶつと動物園』から抜粋)