98字日記ー2022年4月

4月30日(土)
コーヒーを手に好きな椅子に斜めに座ってオットマンに脚をあげると、ガラス戸の向こうは緑で空に白い雲が浮いている。映画を観に行こうかと思っていた気も消えて、ほとんどそのまま一日が過ぎてしまった今日。

4月29日(金・祝)
東日本大震災から12年目。「つぶてソング」12曲を聴き、集いを重ねていることに敬意を表して第一生命ホールに。よかったのは新実徳英先生のうたと和合亮一さんの朗読。全員マスクで合唱、は語り継がれるかも。

4月28日(木)
都教委が都立高入試に英語のスピーキングテストを導入するという。しかも採点も評価もできないからベネッセに丸投げするなんて、どうにかしている。その前に小中での英語の授業をもっと有効なものにすれば? 

4月27日(水)
旧友の訃報が続き、年齢を意識する。並木健さん。高校入学と同時に、なぜか二人が学級委員に指名され、それから幾つかの役割を、卒業後のクラス会まで、一緒に担当した。淡々とした大人で、頼れる人だった。

4月26日(火)
竹橋で、没後50年「鏑木清方展」と新収蔵のピエール・ボナール「プロヴァンス風景」をみる。なぜか1点だけでみたい作品ではない。近くにピカソの「ラ・ガルーブの海水浴場」があり、むしろその独立性に惹かれた。

4月25日(月)
3時間ぐっすり寝た後、明け方の3時から4時にかけてBSで「サラ・ウィリス in キューバ」。濃い薔薇色のドレスで吹くホルンが素敵。モーツァルトのホルン協奏曲が “ロンド・アラ・マンボ” に。その後7時まで寝る。

4月24日(日)
矢野顕子がTwitterで、カーネギーホールで今日、クロノス・カルテットを聴いたと書いている! ジョージ・クラムの Black Angels が良かったとも。NYで夜9時半開演って、ああ、そういう世界がまだあるのだ。いいなあ!

4月23日(土)
あっちの店こっちの店で、何でもかんでもアプリに入れることを求められる。スマホの画面がアプリのマークで一杯になりそう。それで消費者として、どれだけ得あるいは楽があるのだろう。考えて入れなくては。

4月22日(金)
まさに初夏。でも地味に歯のチェックと洗浄に勝どきへ。治療室は2階で椅子から身体を起こした時に斜め下を歩いていく人達や自転車が燃え立つ緑の合間に見えるのが嬉しい。いまの歯の健康が保たれますように。

4月21日(木)
ホームにいる長姉の忘れ様が激しくなったらしい。薬を飲んでも2時間後には覚えていない。でも周囲の人たちとは仲良く話しているというし、本人が辛くなければ構わないと思う。次姉が一緒にいてくれてよかった。

4月20日(水)
横浜に早めに着き6階の有隣堂をぶらぶらする。惹かれる書棚が多いのはもちろんだけれど、いつも特設コーナーが楽しい。今はハシビロコウ!すっかり有名になっちゃったねと話しかける。Shoebill だけの図鑑もある。

4月19日(火)
2年ぶりか魚魯魚魯で満谷さんと。『Scattered All Over the Earth 』(多和田葉子『地球にちりばめられて』)を献辞入りにしてもらって嬉しく、早く読みたい。あの才気溢れる多和田語の見事な英訳はいつも最高。

4月18日(月)
午前中は家中のガスの維持点検。夕方、1階に降りると二人の職人さんが玄関部分の修理塗装を終えたところだった。わが玄関の外から階段をお掃除のひとが手で拭いてくれていることもある。生活が守られている。

4月17日(日)
「塩田千春+イケムラレイコ」展の日程を思い違いしていて終わってしまった。残念!今日は何かをみようと気分で決めるのでなく、カレンダーに書き込む習慣をつけるべき? この頃見逃すものが多くて少し反省。

4月16日(土)
木場からタクシーで帰る時、高層ビルの間に満月がぽかっと浮かんだ。福岡も夜空は晴れていて月が綺麗とMの電話。そうだった、2年前のこの頃、満月の光を三角窓から受けながら、200通の手紙を読んだのだった。

4月15日(金)
何かがきっかけで、ぱたっとやめて、また戻るものがある。ジョージア語もそんなふうに途切れとぎれで続いている。ピアノは、ノクターンを弾きかけては、これを聴いてもらいたいひとがいたと思ってやめていた。

4月14日(木)
クロノス・カルテット、どうなったのだろう。去年、17年振りという演奏会はコロナでキャンセルになった。もっとも彩の国で夜、は私には無理。秋にクロノスにまつわる講座が新宿ACCであったらしいのに気づかず。

4月13日(水)
Mからレターパックライトで『騎士団長殺し』上下巻、それぞれ5百頁あるのが戻ってきた。もう一度見たいディテールがあるのだけれど、すぐには見つからない。2017年に読んでいたことも意外。そんな前だったのか。

4月12日(火)
『平野甲賀と 2』が楽しくて、今日中の締切をよそに眺めてしまう。特に人の名前がいい。確か本のどこかに「名前はその人の顔に似てくる」とご本人の言葉があった。誰かミラン・クンデラに見せてあげてほしい。

4月11日(月)
『ピカソ ひらめきの原点』を汐留美術館でみる。イスラエル博物館貸与の、版画を中心とする作品群でピカソの画風の変遷を追う。一時代が2、3点で表されるわけで、自ずから薄い感じにはなるけれど潔かった。

4月10日(日)
辺野古では毎日、1000台以上のダンプから3-4隻の運搬船が赤土土砂を受け取り海を埋める。魚や珊瑚が殺され基地ができていく。友人は毎日、市民の一人としてダンプ用ゲート前をゆっくり歩いて邪魔をしている。

4月9日(土)
自分の書棚にある本が面白い。昔に読んだらしい本に新鮮さをみる。ペンクラブが編纂した集英社文庫の日記名作選が充実していて、選者(これは、つかこうへい)も内容もいいのでシリーズの他のも読んでみよう。

4月8日(金)
ウー・ウェンさんの料理指南が好き。先週の紙面で見た「もやし炒め」を作ろうと思う。大切なのは自分で一本一本のもやしのヒゲを取ること。小さい頃よく母にやらされたように。指示通り太白ゴマ油を用意して。

4月7日(木)
外で出会う人がみんなマスクをしている。街路でも電車の中でも建物の内部ででも。マスクをして眼鏡をかけて帽子をかぶっている人は顔が見えないから、挨拶を交わす場が少なくなった。新たな知り合いが減った。

4月6日(水)
駅前のバス停沿いに童謡そのままに赤、白、黄色のチューリップが咲き並んだのに、もう花が開ききってしまった。天候の不順さに桜も満開の華やぎがとても短かった。逢いたいと想う人たちのお命日が多いのも春。

4月5日(火)
ロシア軍のウクライナ侵攻で何百人もの民間人が処刑されているという。首都キーウの街路の痛ましい写真もある。21世紀に入って、こんな暴力が唸り声をあげるなんて。ウクライナの国旗の青は空、黄色は小麦。

4月4日(月)
雨で一日、家に。アーサー・クラークの短篇の添削ををしながら、星の話なので、気分を変えるために稲垣足穂の文庫本をパラパラと拾い読み・・のつもりが『横寺日記』と『雪ヶ谷日記』に没頭することになった。

4月3日(日)
伊勢丹から取り寄せたケールのサラダが美味しかった。ドレッシングはハニーマスタードと玉ねぎ。粉チーズをあわせ、スライス・アーモンドとラディッシュの薄切りをのせる。二人分を一人で食べるから、この体重。

4月2日(土)
書店には並ばないので紹介する。昨日ここに抜粋を載せた笠井久子著『畑の中の野うさぎの滑走 一匹のトカゲが焼けた石の上を過った』。著者名で検索すると銀行振込で申し込める。2800円。同時代を生きる感動を。

4月1日(金)
「2020・6・22  昨夜は、なおか×瑞丈企画『ダンス現在』再開、叡がソロを踊った・・みなさんマスクをして、手の消毒を済ませて、間隔を置いた客席に黙して座る・・同じ場で、ダンスを共有できる喜び、嬉しさ、楽しさ、ありがたさ・・・どんなことがあっても、止まらないように。」(笠井久子『畑の中の野うさぎの滑走・・』から抜粋)