98字日記ー2015年10月

10月31日(土)

きょんみさんから電話で、池先生が大病をして手術し、それでも韓国内に限られはするけれども演奏に戻られたという。そういえば久しく伽耶舞を聴いていない。聞きたいな、パンソリも。冷たいマッコリも飲みたい。

10月30日(金)

『ハーブ&ドロシー』をTVで観られることに始まる5分前に気がついて、いまみている。ソル・ウィットが始まりだったのだと確かめられたし、映画館では目に入らなかった部分をつぶさにみることができる。

10月29日(木)

この人たちと一緒に仕事をしたのは30年以上前、と思いつつ、まるで今も同僚のように屈託なく話せるのがうれしい。美術館や展覧会図録について評論でなく現場のこととして聞けるのもフレッシュ。銀座のふく太郎で。

10月28日(水)

10代後半から30代後半までの多読、乱読がいまの自分の土台かもしれない。分量的には多分、日本語と英語が半々くらい。英語のペーパーバックは500冊くらいか。ほかの数カ国語の本は速読はできず、ゆるりと。

10月27日(火)

月に一度、決心する。少なくとも今日の部屋のきれいさを保つ。来てくれる人たちは、どこがきれい? と思うかも知れないけれど、自分としては最大級の掃除をするのだ。ただ大テーブルの半分が本で埋まってしまった。

10月26日(月)

晴れわたった秋の日。でも街にはあまり人がいない。それぞれのことで忙しいのか、月曜日だし。そういえば10月最後の週になった。明け方は急に寒くなったと報じられていたが、昼間は半袖姿が多いという変な気候。

10月25日(日)

大分原木にできた椎茸をMから貰うと、おいしい食べ方と1日に1個だけというメモがついていた。尿酸値が上がるからとのこと。でも測ったことのないものは恐れるに足らず、2個をオリーブオイルで焼く。日本酒と合う。

10月24日(土)

1日が短い。いつも、あれをしなくては、これをしなくては、と追われている。あとどれだけ生きているか分からないのに延ばし延ばしにしている事柄が何と多いのだろう。会いたいね、と言いながら会っていない人も。

10月23日(金)

富山妙子さんから『旅芸人の物語』はじめ数年来の図録などを送られてあったのを、ゆっくりと見る。激しい情念と理性を凝縮させた作品群。画術の確かさは実際の作品を見ると納得する。妻有での反響が読めてよかった。

10月22日(木)

銀座の話。伊東屋は少し期待はずれ。あの文房具ならなんでものゴタゴタ感がなくなった。リニューアルして、よくなったのは王子サーモン。イートインもできて、焼き鮭のむしったものを具にしたおにぎりが美味しい。

10月21日(水)

ふるさと納税は何かすっきりしないものを感じる。納税者に地元の特産品を送るなどという悪しきシステムにしたのがよくない。でもクラウドファンディングは目的が明確。銚子電鉄に取り組んだ高校生の話に涙した。

10月20日(火)

「パテ屋」のパテは最高にフレッシュで、初めてのイカスミは絶品だった。美恵さんの家の近くの店の、というサンドイッチは豊かで、余ったのは明日の朝食用にともらったのに、自宅に帰っておいしい夜食用となった。

10月19日(月)

沢山の不思議ツアーがあるなかで、ぬいぐるみツアーに人気がある不思議。自分が参加できないツアーに愛用のぬいぐるみを参加させ、随所で撮ったぬいぐるみたちだけの写真をもらう。2万円近くでハワイもある不思議。

10月18日(日)

新聞に載っていた数独1題が星5つという難問マークだったので、何年かぶりに解いてみたら成功!単純な消去法から一歩進んで、同枠の中で同じ数字が二つ残っているマスが二つあれば推察できる。忙しいのに・・・

10月17日(土)

服を裏返しとか前後ろ反対に着てしまうのは、なぜ? それも、いつものことだから十分気をつけて眺めて着た結果、そうなる。ソニア・リキエルもそうだったのかしら。縫い目を表にしたデザインのジャケットが懐かしい。

10月16日(金)

クリニックの待合室で声をかけられ、お久しぶりですねと言われる。絶対によく知っているけれど名前とお顔が一致していない気がする。すると何気なく、改めてと名刺をくれた。前はよく会っていた区議会議員さんだった。

10月15日(木)

九州電力が川内原発2号機を再稼動しはじめた。福島の後処理はまだ何も済んでいないというのに、なぜこんなことができるのか信じられない。その地域の人たちは目前の経済効果しか考えられないようだ。なんてこと。

10月14日(水)

昨日の朝日夕刊の文芸欄で芳川泰久+都甲幸治という二人の語学者が、ノーベル賞がスベトラーナ・アレクシエービッチに決まって、まっとうな選択だったと述べ、世界文学の多言語性を語っている。5冊も邦訳されていた。

10月13日(火)

コンビニなどで売っているおにぎりのラッピングで、外のフィルムを引き抜くとパリッとした海苔が現れて自然にご飯を包むことに、いまでも感激する。多分30年ほど前からあり英語で書いて記事にしたことさえある。

10月12日(月・祝)

休日の午後、短く心地よい音楽会が近くであると嬉しい。理想的な時間を王子ホールの野口玲子ソプラノ独唱会で。ブラームス、石桁真礼生、ザルムホーファーを聴く。親しい方達らしい聴衆の温かな空気が満ちていた。

10月11日(日)

ヤン・バニングの写真を見て、話を聞く。インドネシアの慰安婦だった人たちの顔写真のインパクトが強い。オランダのジャーナリスト、ヒルデ・ヤンセンもインタビューの様子を語り、90歳前後のその人たちをおもう。

10月10日(土)

ノーベル文学賞を村上春樹が今年もとらなかったと話題に。どうでもいいと思うし、ご本人がそう思っている。芥川賞もとっていず、それで損したことはないと『職業としての小説家』に書いている。この本は面白かった。

10月9日(金)

銀座のエノテカは前の場所から越したのかな。ショウウインドウに並ぶワインを眺めたことがある。初めて2階のレストランバーに入り、気持ちのいいご夫妻に同席させてもらって、正に上等の赤ワインの味と香りの時間。

10月8日(木)

月に2回、3時間つづけてクラスがあった後がいちばん疲れる。でも辛いという感じはまったくなく、むしろ待ちわびて迎える時間でもある。美術展には集中できないが音楽会は望むところ、といった高揚感に浸される。

10月7日(水)

オオイトヒキイワシ(三脚魚)を画面で見る。贔屓にしている2355という夜中のみじかーい番組で海の底にひっそりと立って(魚なのに)激しく流れる水に抗っているのを見る。細野晴臣の歌もよくて束の間の幸せ。

10月6日(火)

ノーベル医学生理学賞を大村智教授が受賞。エピソードを読み、中学生の私も遠足のときよく土を入れる容器を持たされたのを思い出して、それを命じたチャアちゃんに電話した。相応しい人が選ばれてよかったとのこと。

10月5日(月)

ジョージ・オーウェルの英国料理についてのエッセイにちなんで、今日のお茶は銀座のローズ・ベーカリーで。いつもより特別の英国フェア中で、ブラムリーという特産の林檎のガレットと紅茶にした。ひとり客が多い店。

10月4日(日)

駅前のバス停で5人ほど並んでいる後ろについたら、男の人がためらいがちに「あのう」と話しかけてきた。よくあることなのでにこやかに次の言葉を待った。「競艇に行くんですか?」そこは隣の臨時レーンだった。

10月3日(土)

市原ひかりのトランペット、纐纈歩美のアルトサックス、ひび則彦のソプラノサックス、横田明紀男のギター、Shiho のボーカル、ほか、弾ける若きジャズミュージシャンたちを80歳の前田憲男がまとめてジャムセッション!

10月2日(金)

夜のうちに激しい雨と風が通り過ぎていったのを、朝、ベランダの小さな植物たちが教えてくれた。よく舞い上がらずにいてくれたね。先週の胸に沁み入るような月は、あんなに透き通った藍色の空をしたがえていたのに。

10月1日(木)

海のなかに小さなもうひとつの海があるように/本のなかに小さなもうひとつの本があるのはたのしいものです/・・・/もんだいは/あなたのなかに小さなもうひとりのあなたがいるかどうかということだけです(寺山修司『もんだいは』から)