98字日記ー2021年11月

11月30日(火)
ラオスと中国が新幹線で繋がった。いいことかどうか、よく分からない。アジアの国々が経済、生活、文化でそれぞれ同等のレベルにあり、誰でも気軽に行き来できるというのがネシア語を専門とした私の夢だった。

11月29日(月)
「オミクロン」と名付けられた新型コロナウイルスの変異株が現れ、日本は明日からあらゆる外国人の新規入国を禁止する。ようやく開催されるようになってきた音楽会や各種公演が、一気に中止されるに違いない。

11月28日(日)
2年ぶりか、コロナ禍のために休業だったりした資生堂パーラーでの食事は。Mからの招待。横で作り上げてくれるシーザーズサラダは何種類ものスパイスとチーズに絶妙に包まれた青菜。シャンペンも久しぶりだった。

11月27日(土)
昨夜10時に寝て2時に起き、再放送による宮本浩次の SONGS をみる。ギターで歌いあげる「異邦人」や「浮世小路のblues」には胸の中がざわざわし、ブラボー! と受けて話を聞き出す大泉洋の巧みさもブラボーだった。

11月26日(金)
街にイルミネーションが輝き始めてうれしい。午後5時には暗くなるので、バスを降りて流れる光の波やトナカイに迎えられ、家の側でまた青いキラキラに囲まれると楽しくなる。自然だけがいい人には、ごめんなさい。

11月25日(木)
「声」欄への投稿に「名前を見て切り抜いた、自分はアメリカの選挙に在外投票している」「行けないでいる人達が多数いるのに見捨てられている」「関わり方は大切」と感想を寄せてくれて嬉しかった、ありがとう。

11月24日(水)
東京都発表のコロナウイルス新規陽性者数は今日、5人。5人? 耳を疑うが、街中の緊張感は薄れていない。国内全体では昨日が113人。仏が、ここ数日、1日に2万人の感染者を出しているのと大違い。見つめていよう。

11月23日(火)
手に取って、これは読みたいと思った本は、行儀良く最初から読み進められない。気になって、先のあちこちを拾い読みする。そして一層読みたいと思ったら読みたさは本物。出たばかりの吉増剛造『詩とは何か』。

11月22日(月)
脚本の一部を課題にした英映画『リトル・ダンサー』(2000年、“Billy Elliot” )をTVでみた。涙が出る最後の1秒か2秒、アダム・クーパーの白鳥の飛翔!昨日、公子さんに強運だと言われた83歳の私への誕生日祝いのよう。

11月21日(日)
2年は行かなかった駅前のコーヒー店に入り、打合せという言葉とともに全てが懐かしかった。さらに長い年月会っていなかったひとには、まるで先週も会っていたかのように自分の話ばかり聞いてもらってしまった。

11月20日(土)
大谷翔平が今季のアメリカン・リーグの Most Valuable Player に選ばれ、メディアは大騒ぎ。もちろんその価値はあるけれど、私はフンと言いたい。一番活躍目覚ましかった時にオリンピックばかり追いかけていて!

11月19日(金)
「完璧な皆既月食が見えた」とMからメッセージ。東京の空ではどうだったのか、一日中、身体のあちこちの部品のメンテナンスに回っていた。つがわ歯科の待合室で観る『トムとジェリー』はいつも気に入っている。

11月18日(木)
朝日カルチャーセンターでも外国語の多くがオンライン講座になった。私の翻訳塾は風前の灯かも知れない。自力で訳したものに添削を受け、説明を聞き、課題を通じて未知の世界を知る楽しさを閉ざしたくはない・・・

11月17日(水)
同年輩の女のひと達によく助けられる。バス停ではベンチに座っていた人が立ってくれて、ずっと話をしていた。メトロの中では、マスクの紐が切れて私が慌てて予備を付けていると、隣のひとが手を伸ばして頬にぴったり付くように直してくれた。

11月16日(火)
喪中につき、との「ご挨拶」が届き始めた。ご高齢の方を送られたのであればご冥福を祈って葉書をおく。今年もあった何人もの親しかった人達との別れ。まだ受け止めかねている、北川靖子さん、阿部伸夫さん・・・

 

11月15日(月)
鯖寿司の名店・京都「いづう」の厨房をTVでみる。鯖をおろし、酢で締め、大切な寝かす加減ーー酢飯も昆布も。巻き上がってからも寝かす時間によって味がちがう。キメ細かな手順を重ねる料理の何という奥深さ!

11月14日(日)
クルターグ・ジェルジ。未知の作曲家を実演奏で聴いて初めて知るのは幸せ。95歳のハンガリー人。音が心を掴んで放つ。三軒茶屋のサロン・テッセラ『高橋悠治の耳』で。グランドピアノをアップライトにして。

11月13日(土)
『ウエスト・サイド物語』が1961年製作だとは信じがたい。TVのミュージカル映画特集で、もう幾度目になるか改めて見て、新鮮さがある。映画館に行き損ねていた『キャッツ』は日、米とも舞台の方が好きだった。

11月12日(金)
水道管工事のついでにトイレの中を全部替える作業が入った一日。壁紙もウォシュレットも棚も真っ白に。おかげでウロウロせずにジョージア語の短編の訳に集中できた。といってもほとんど一語一語辞書を引いて。

11月11日(木)
ついハイチュウをぎゅっと噛んだら奥歯が欠けた。詰めてあった部分が外れたらしい。痛くもなんともないけれど、心許ない。来週、定期予約が入っているのでちょうどよかった。良いこともあれば悪いこともある。

11月10日(水)
自宅の水道管工事、翻訳塾に関わる種々の整理など作業的なことを次々とクリアできたラッキーな一日だった。トドメは国際便で届いたMからの早めの誕生日プレゼント。嬉しいジグソーパズル! 1000ピース二つ!

11月9日(火)
真夏の暑い日に部屋をエアコンでセ氏26度にするのと、今日は寒いと思って秋に26度にするのと、全然違う。着ているものも違うから。でも考えてみれば、もう冬に近く11月も半ばなのに、季節感が定まらず揺れる。

11月8日(月)
M・モーパーゴの児童書に第一次、第二次大戦を背景とするものが幾つかある。子どもが登場するとは限らず、大人同士の話、戦争中のエピソードなどで終始しながら、対象年齢は7歳からとあって戸惑うことがある。

11月7日(日)
今日しか行かれないと思いたち国分寺へ。あの我が10代を辿る如き曲りくねる細い道と茂みの中の白亜の屋敷、天使館へ。笠井爾示写真展 Stuttgart で久子さんにも叡さんにも会い写真集を抱いて帰る。どの1枚も玉珠!

11月6日(土)
親鸞ノート→服部之総→微視の史学→花王石鹸→父→スターチス→母→縦縞の着物→ストライプ→青→ブラインド→私の部屋・・戻るのは此処。つい沈み込んでいたくなるけれど、外では秋がきらきらと輝いている。

11月5日(金)
3日前にガスレンジの電池が切れたのに替え方が分からなくて電子レンジで凌いでいた。今朝またトライ。カチッと開くべきところが開いた。単1が2個!でもなぜか引き出しに6個組があった。まず熱いコーヒーを飲む。

11月4日(木)
久しぶりに美空ひばりの『川の流れのように』をフルで聴く。歌い上げるところも、声を張り上げずにむしろ深々と響かせる。自分と同年代のひとに、こよなく懐かしさを覚える時季。江利チエミと雪村いづみにも。

11月3日(水)
横浜クラスに行くのに交通機関が休日ダイヤだと忘れていた。乗客3人のバスがスピードをあげて空いた道を走る。このところ東京の新規コロナ感染者数は1日50人を下回るのに安心感はない。世界の死者は500万人に。

11月2日(火)
衆院選はがっかり。といっても大きな期待を寄せる要素は少ない候補者顔ぶれだった。女性を輝かせたい、などと言葉だけの老男性達が多く当選して、結果を見れば女性は465人のうち45人。1割に満たなかった・・

11月1日(月)
銀座メゾンエルメスの20周年記念でビル全体がジュリオ・ル・パルクの作品で包まれている。14色を回転、反復、分割。93歳の遊び、だそうだけれど心惹かれたのは無色のステンレス片3360枚を頭上高くから下げたモビールだった。(銀座で楽しむアートは大抵入場無料。ここも資生堂もギャラリー群も。)