ミッドナイト・イン・パリ  Midnight in Paris

2012年5月26日発行 発行=ロングライド

 

 パンフレットについて書きたいのだけれど、映画そのものにまったく触れないではいられない。まずこの作品の2012年度アカデミー賞最優秀脚本賞受賞を、えっ、本当?と思う。ウディ・アレン監督・脚本だから? ひとことで言えば「観光用絵葉書」のような映画。だからごく単純で、楽しい。

 パンフレットもその楽しさのノリであればいいのに。

 まずページをめくってすぐ、表紙の裏扉にずらりとゴチック活字で並んだ30にものぼる賞の名前がパリ観光のうきうきした気分をそぐ。こういうもので映画を評価しないで、あるいはさせないでほしい。パンフレットの最後の方に普通の活字で並べておけば十分の情報だ。

 ハリウッドの脚本家である主人公がパリでタイムスリップして1920年代のアーティストたちと出会うのだが、まさにその時代大好きな私でも少し白けるほど次々と有名人が出てくるだけ。せめて・・・あ、いけない。また映画に話がとんでしまう。その芸術家たちの名前が登場順で紹介されている見開きページはよくまとまっているが、なんだか、つまらない。すごーく真面目すぎ。まるでお勉強のようで、楽しさがまったくない。

 映画パンフレットにつきもののの暗いページに白抜きの活字という、本当に読みにくい、本当にやめてほしいページが4ページある。要するにあまり読ませたくないのか。川本三郎氏の文章は興味あるのに目が痛くなる。

 このパンフレットに限ったことではないけれど、お願いしたい2点。

 1 筋書きはしっかり最後まで書いてください。パンフレットでネタバレを心配することなど不要。むしろ絶対に大切なのがラストシーンなのだから、思い入れたっぷりに紹介してほしい。映画を観てのお楽しみなんて、パンフレットの役目を放棄している。

 2 このパンフレットには音楽について、ほとんど紹介がない。使われた曲名が出てくるのはコール・ポーターとジョセフィン・ベーカーの紹介の中にちらりとだけ。スタッフにも入っていないというのは、なにかわけあり? と勘ぐりたくもなる。映画のエンドロールにはたしか曲名も出ていた気がするのだけれど。

 そして、パンフレットの表紙。地模様がうっすらと入っているだけの白灰茶色をバックにブルーで「ミッドナイト・イン・パリ Midnight in Paris Written and Directed by Woody Allen」ですべて。品がよくて、きらいではないけれど、寂しい。印象を繰り返すが、これは教養のための映画ではなくて、楽しい絵本なのだから。で、700円は高いと思う。

 最後に、マリオン・コティヤールが素敵! 衣装がちゃんと見える、いいカットを載せておいてくれてありがとう。