華麗なるギャツビー  The Great Gatsby

2013年6月11日発行 発行承認:ワーナー・ブラザース映画                       編集・発行:松竹株式会社事業部

 表紙とページの随所の縁に、映画で使われている黒に金の模様が効果的にあしらわれている。A4サイズの横長で、表紙はそのデザインと銀色の原題のみ。重みのある華やかさが映画の余韻を受けとめてくれる。第一印象としては、嬉しいパンフレットだ。

 アメリカで(イギリスでさえも)「20世紀に書かれた小説の中で一番好きな作品は」というアンケートがあると必ず1位か少なくとも上位にある原作で、映画化は初めてでないにしても、観ないではいられない作品。小説と比べてどうかということは個々の問題で、パンフレットは観客にしみじみと、あるいは、わくわくと、観終わった映画を思い返す最高の手引きであってほしい。

 36ページという豊かなページ取りは、映画の豪華さに合っている。でも中の文字がこんなに見にくいとは、一体どうしたこと?黒地に見出しが黄色で本文が白。活字の形がよくない。なんという活字か指摘できないけれど、漢字とひらがなが同じ大きさで、まるでどこか他所の国の文字が無機質にべったりと並んでいるような印象だ。そのため、今、これを書くにあたっては全部を読んでからにするのが当然なのに、興味ある項目があっても読み通す気にならない。心からお願いしたい。どうか、読めるパンフレットにしてほしい。読めない文字はデザイン的にも美しいとは言えない。このパンフレットを一体だれが心楽しく読めるだろう。

 それでも一生懸命、文字を追って、ひとつには「fashion」について日置千弓さんの文を読んだ。知りたい情報を伝えてくれていて、でもそれも「ここまでディテールを楽しめるのは、2回目以降の鑑賞から」とある。そうなのだ。素敵な映画はもう一度観なくては。観るうえで、どこに目を凝らすか、その最大の手引きがパンフレット。原作に登場する描写をプラダが再現したというグレーの毛皮のティベットを、次に観るときは、ああ、これがそうだと思うことができるのは、このエッセイのおかげなのだ。

 だからほかのページも読みたい。眉をひそめて、目を凝らして、必死に顔を

ページに近づけて、ではなく、映画の雰囲気を思い起こしながら優雅に読みたい。

 パンフレットに使われている写真は概ねいいとはいえ、映画の中のシーンというよりも、どれもが別に撮られたスティール写真のような気がするのはどうしたわけか。それならそれで、もう少し建物や室内のショットも欲しかった。

 またいつものことだがストーリーについて——最後の文をここに記してみよう。「少しずつギャツビーの華麗な仮面をはがしていく。果たしてその下に隠された真実の顔とは——?」フィッツジェラルドの名作も紙芝居にされてしまったようだ。最後まで書かなくては意味がない。

 バズ・ラーマン監督がギャツビー役としてレオナルド・ディカプリオの輝くような魅力をひきだした映画作品だ。真正面から見据えて、こんなに美しい男性はほかにいない。そこにトビー・マグワイア演じる、フィッツジェラルド自身を思わせる役柄ニックをからませ、そのニックが回想する形でストーリーは展開する。その最後は、ニックが書き終えて、表紙に GATSBY と大きく記し、その上に The Great と勢いよく書き足すのだ。そのシーンが写真ででも、あるいはストーリーの文の中にでもあったらよかったのに。

 音楽についても2ページをあてているのはよかった。同じく読みにくくて、まだ読み通していないけれど・・・