エリン・ブロコビッチ Erin Brockovich

2000年5月20日発行 編集・発行=松竹株式会社事業部 デザイン=DESIGN ROOM

 

 パンフレットを制作する人たちは、いつ、どこで、誰にそれが届くと考えて作るのだろうか。もちろん、映画が公開されたときに映画館に映画をみにきた人たちが買う、という想定が基本だろう。その後、私のように10年も持っている人間がいて、しかもそれからぐちぐちと文句を言われるなんて考えもしないかも知れない。でも一般に書物であれば、何年か、あるいは何年も、残る。
 好きな映画のひとつとして、置き場にもそれなりの位置があったこのパンフレットを、テレビで映画が放映されたのを機に取り出した。
 カリフォルニア州ロサンゼルス郊外の小さな町ヒンクリーは、大企業PG&E社の工場でもっているが、そこの住民が体調を崩していく。基準を大幅に越えた6価クロムを使用して地下水にも垂れ流していた会社を相手として、住民634人を原告として訴え、全米史上最高額の3億3300万ドル(約350億円)という和解金を勝ち取った、その立役者が学歴もお金もない3人の子持ちのエリン・ブロコビッチ。1993年にあった実話である。
 超ミニスカートと7.5センチのハイヒールでいつもバストを強調しているジュリア・ロバーツが、威勢のいい啖呵とともに、とにかくかっこいい。そのジュリアの魅力をパンフレットはとてもよくまとめているし、とくにジュリアが3人の子どもたちと一緒に歩いている写真がいい。映画の1シーンかもしれないし、そうじゃなかったかもしれないが、このように、真っ向から主人公たちをはっきりと見せてくれる写真があるのが嬉しい。『レモニー・スニケット・・・』のときもそうだったが、子どもたちがどんな服を着ているかが、映画をみているときは確かめられないので、パンフレットでこそじっくりと見たい。エリンに代わって子どもたちの面倒をみるジョージ(アーロン・エッカート)と子どもたちとのショット(これは確かに映画の1シーン)もあってよかった。女の子が赤と白の格子のブラウスに花模様のスカートという、状況にぴったりのはちゃめちゃぶりがわかる。
 写真でいえば、住民たちが集まっているところとか、撮影のスタートをきったという実際に汚染があったヒンクリーの町の写真が1枚はほしかった。
 表紙はショッキングピンク。英語だけで「Julia Roberts is Erin Brockovich Based on a true story. 」とある。このピンクはパンフレットの中にも散りばめられているが、主人公のイメージを、これ以外はないのですよ、と決めつけて押し付けている。全体のデザインはいいのに、残念。(ところで日本語扉の映画の題は「ジュリア・ロバーツ is エリン・ブロコビッチ」。本当の映画のタイトルは何?)
 内容は盛りだくさんで読みでがあるものの、よくあるように、黒や紫や灰色の地に白抜きの文字は読めない。冒頭に書いた、誰に読ませようと思っているのかなと疑問に思う。
 とくにアーロン・エッカートと、エリンを雇うエドを演じるアルバート・フィニーの二人のコメントの部分は読めないですね。といっても目をこすりながら少しずつ、休みやすみ読んだけれど、こんな苦労をなぜさせるのかな。
 監督はスティーブン・ソダーバーグ。
 映画としては、もう一度みたい。パンフレットを読んで、本物のエリン・ブロコビッチが食堂のウェイトレスの役で出ているというのを、今度も注意しそこなったのを思い出したから。シーンは覚えているけれど、胸の名札が「Julia」だとまでは見なかった。