国際公開公報(特許)14号

※エマルジョン利用チョコレートの一般例

     ロッテVIPミルク
     ロッテVIPミルク

国際公開番号:WO 2014/006086

国際公開日 :2014年1月9日

出願人   :ネステックソシエテ アノニム

発明の名称 :『チョコレート菓子製品』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 重量で10ないし40%の水および少なくとも重量で60%の油を含むエマルジョン(ここで該油は架橋タンパク質性物質の外殻にカプセル化された油を含む内核を含むカプセル化油である)およびチョコレートを含むチョコレート菓子製品。

【請求項2】

 酪農製品、好ましくは乳製品を含む請求項1の菓子製品。

【請求項3】

 40%ないし80%(w/w)のチョコレート、好ましくは約50%ないし70%(w/w)のチョコレートを含む、請求項1または2の菓子。

【請求項4】

 乳製品を5%(w/w)ないし約50%(w/w)、好ましくは約10%(w/w)ないし約40%、より好ましくは乳製品を約10%(w/w)ないし約30%(w/w)含む、請求項1ないし3のいずれか一項の菓子製品。

【請求項5】

 乳製品が脱脂乳、半脱脂乳、全脂乳、脱脂粉乳、半脱脂粉乳、全脂粉乳、無糖練乳および加糖練乳、またはその組合せを含む練乳からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項の菓子製品。

【請求項6】

 約5%ないし40%(w/w)の油滴を封入したエマルジョン、約40%ないし約80%(w/w)のチョコレート、および約10%ないし40%(w/w)の乳製品を含む、請求項1~5のいずれか一項の菓子製品。

【請求項7】

 封入された油滴が重量で少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の油滴を含む、請求項1~6のいずれか一項の菓子製品。

【請求項8】

 タンパク質が少なくとも一の食品グレードのタンパク質、例えば、ホエータンパク質、カゼイン塩、卵アルブミン、リゾチーム、大豆タンパク質、グルテン、米タンパク質、トウモロコシタンパク質、ポテトプロテイン、ルーピンタンパク質、エンドウタンパク質、または球状タンパク質もしくはランダムコイルタンパク質またはその組合せを含む、請求項1~7のいずれか一項の菓子製品。

【請求項9】

 外殻が架橋タンパク質および架橋炭水化物を含む、請求項1~8のいずれか一項の菓子製品。

【請求項10】

 油がオリーブ油、ベニバナ油、ひまわり油、魚油、大豆油、大豆脂肪、パーム核油、パーム油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、月見草油、亜麻仁油、トウモロコシ油、ブドウ種子油、ナッツ油、米糠油、ゴマ油、落花生油、綿実油、およびその組合せから成る群より選択される、請求項1~9のいずれか一項の菓子製品。

【請求項11】

 エマルジョンが水を15ないし35重量%含む、請求項1~11のいずれか一項の菓子製品。

【請求項12】

 水を10ないし40重量%および油を少なくとも60重量%含むエマルジョンの使用であって、ここで油がチョコレート菓子製品の調製のための架橋タンパク質性物質の外殻中にカプセル化された油を含む内核を含むカプセル化油であり、ここで菓子製品がエマルジョンをチョコレートと混合することによって成形される前記使用。

【請求項13】

 菓子製品が菓子製品の重量に基づいてエマルジョンの5ないし50%(w/w)をチョコレートおよび乳製品と混合することによって成形される、請求項12の使用。

【請求項14】

 請求項1のチョコレート菓子製品の調製方法であって、

(a)水を10ないし40重量%および油を少なくとも60重量%含むエマルジョンを供給する段階(ここで油が架橋タンパク質性物質の外殻中にカプセル化された油を含む内核を含むカプセル化油である)、

(b)エマルジョンをチョコレート、および任意に乳製品と混合する段階、

を含む前記調製方法。

【請求項15】

 請求項14の方法であって、ここで段階(a)におけるエマルジョンが、

(a)タンパク質性物質を含む水性相において油を均質化することによってエマルジョンを調製する段階、

(b)70ないし90℃で2ないし30分間エマルジョンを加熱する段階、

(c)約10ないし約40重量%の範囲の値まで油クリームの水分含量を減少するために、精密濾過または遠心分離または蒸散によってエマルジョンを濃縮する段階、

を含む方法によって調製される前記方法。

【請求項16】

 請求項1ないし11のいずれか一項のチョコレート菓子製品を含む複合食品製品。

訳者注1)

本発明は、洋菓子の代表格であるガナッシュ(ダークチョコレートとクリーム((乳等省令で定義するクリーム等))を混合して造る)の乳脂肪を低減(結果的に冠動脈疾患((良く食べる欧米人に多い))の原因となり得る飽和脂肪酸を低減)するために、クリームの一部ないし大半を不飽和脂肪酸成分の多い他の植物性油脂のエマルジョンに置換する菓子に関する。

訳者注2)(【請求項1】)

重量で10ないし40%の水および少なくとも重量で60%の油を含むエマルジョン:水の重量/エマルジョンの重量が10~40%であり、かつ油の重量/エマルジョンの重量が60%より多いエマルジョンを意味する。

エマルジョン:乳化液。親水性物質と油溶性物質が均一に混じった混合溶液。代表例、牛乳。溶解溶液である砂糖水溶液、食塩溶液などと違って、長時間が経過したり、強い力が加われば均一性は壊れ水相と油相に分離する。

架橋タンパク質:タンパク質を含むエマルジョンを70~90℃で加熱すると、水相と油相の界面においてタンパク質が変性して架橋し膜(外殻)を形成し、油性物質の多いエマルジョン(内核;内芯)を包み込む。

カプセル化された油:架橋タンパク質の膜で包まれカプセル状になった油。油滴の計は、0.5~5ミクロン(0.5/1,000~5/1,000ミリメートル)と微小である。

訳者注3)(【請求項3】)

w/w:成分重量/全体重量x100(%)

訳者注4)(【請求項5】)

脱脂乳、半脱脂乳、全脂乳、脱脂粉乳、半脱脂粉乳、全脂粉乳、無糖練乳

および加糖練乳:全脂乳は通常の牛乳、脱脂乳は牛乳からクリーム(乳脂肪)を除去した牛乳、半脱脂乳(部分脱脂乳)は牛乳から一部のクリームを除去した牛乳をいう。粉乳は、それぞれの種類の牛乳から水分を除いて乾燥粉末としたものをいう。水分の除去法にはドラムドライ、スプレードライがある。牛乳をそのまま濃縮したものが無糖練乳(エバミルク)、糖(砂糖)を加えて濃縮したものが加糖練乳(コンデンスミルク)である。

訳者注5)(【請求項8】)

ホエータンパク質、カゼイン塩、卵アルブミン、リゾチーム、大豆タンパク質、グルテン、米タンパク質、トウモロコシタンパク質、ポテトプロテイン、ルーピンタンパク質、エンドウタンパク質、または球状タンパク質もしくはランダムコイルタンパク質:牛乳、チーズに含まれる主要乳タンパク質がカゼインであり、チーズ生産の副産物ホエー(乳清)に含まれるのがホエータンパク質である。卵に含まれるアルブミンが卵アルブミンであり主に卵白に含まれる。リゾチームも卵白に含まれるタンパク質であり酵素作用を有する。麦類に含まれるグリアジンとグルテニンが水分下で混合されると粘りのあるタンパク質であるグルテンが生じる。パン、ベーカリー製品ではこの性質を利用して(グリアジン・グルテニン含量、混合時間等の調製により)種々の粘性を持つドウが作成されており、さらにそのドウが焼き上げられて様々な製品、パン、ビスケット、パイ、ケーキが生産されている。大豆タンパク質に成分が似ていて、主に飼料に使用されるのがルーピンタンパク質である。球状タンパク質は、球に近い形をしていて水可溶性である。繊維状タンパク質は水不溶性である。モノマー(単量体)同士が結合してコイル状をなすのがランダムコイルタンパク質である。

訳者注6)(【請求項9】)

架橋炭水化物:架橋デンプンが代表例であり、加熱等により膜を形成する。

訳者注7)(【請求項10】)

パーム核油、パーム油、:アブラヤシの果肉から得られる油がパーム油であり、その種子から得られる油がパーム核油である。両者、その脂肪酸組成が異なる。パーム核油にはラウリン酸が多く含まれ、加工されてチョコレート代用脂(カカオバター代用脂)となる。

訳者注8)(【請求項15】)

精密濾過:多数の孔(孔径:50/100万 ミリメートル~10/100万 メートル)を有する膜により、通常の濾紙では濾過できない物質を濾過する。

蒸散:エバポレーターなどによって減圧下で水を除去する。

国際公開公報(特許)13号

 

※押出成形スナッック食品の一般例

    明治「カール」
    明治「カール」
    森永「ポテロング」
    森永「ポテロング」
    Frito-ray      「cheetos-crunchy」
    Frito-ray      「cheetos-crunchy」

国際公開番号:WO 2013/028617 A2

国際公開日 :2013年2月28日

出願人   :フリト-レイノースアメリカインコーポレイテッド

発明の名称 :『押出成形スナック食品を生産するための方法および配合ならびにそこから得られる製品』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 デンプン質性食品原料およびトレハロースの形態の可塑剤を含む押出成形可能なドウ

【請求項2】

 約5.5%未満の水分含量を含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項3】

 約5%ないし約25%の間のトレハロースを含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項4】

 該デンプン質性食品原料がコーン、小麦、米、燕麦、大麦、ポテト、タピオカ、ライ麦および他の禾穀類、マメ科牧草類、塊茎植物またはその混合物に由来するひきわり粉(meals)、粉(flours)およびデンプンから成る群より選択される請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項5】

 該デンプン質性食品混合物がコーンミール(corn mealを含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項6】

 該デンプン質性食品原料が全粒コーンミール(whole grain corn mealを含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項7】

 該デンプン質性食品原料がコーンミールおよび全粒コーンミール(whole grain corn meal)を含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項8】

 約0.01%ないし約5%の間の甘味マスキング剤をさらに含む請求項1の押出成形可能なドウ。

【請求項9】

 請求項1の押出成形可能なドウから作成されるサクサクした(crisp直接膨化デンプン質性食品であって、約0.25ないし約0.5の間の水分活性、および約3%ないし約15%の間の全糖を含む前記食品。

【請求項10】

 膨化デンプン質性食品を製造する方法であって、デンプン質性食品原料をトレハロースの形態の可塑剤成分と混合し、前記のトレハロースを含有する混合物を押出成形物に押出し、それによってスナック食品を成形することを含む前記方法。

【請求項11】

 前記の混合ステップが約5%ないし約25%のトレハロースを含むトレハロース含有混合物を生産する請求項10の方法。

【請求項12】

 前記のデンプン質性食品原料がコーン、小麦、米、燕麦、大麦、ポテト、タピオカ、ライ麦および他の禾穀類、マメ科牧草類、塊茎植物またはその混合物に由来するひき割り粉(meals)、粉(flours)およびデンプンから成る群より選択される請求項10の方法。

【請求項13】

 前記のトレハロース含有混合物が約50%ないし約95%のコーンミールを含む請求項10の方法。

【請求項14】

 前記のデンプン質性食品原料がコーンミールおよび全粒コーンミールを含む請求項10の方法。

【請求項15】

 前記のトレハロース含有混合物が約50%ないし約95%の全粒コーンミールを含む請求項10の方法。

【請求項16】

 前記の押出成形物の中に充填原料を導入するステップをさらに含む請求項10の方法。

【請求項17】

 前記の充填原料が前記の押出成形物の中央に封入される請求項16の方法。

【請求項18】

 前記の充填原料がセイボリー風味を含む請求項16の方法。

【請求項19】

 前記の充填原料が約15%以下のショートニングを含む請求項16の方法。

【請求項20】

 前記の充填原料が約25%までのショートニング、約35%までのシーズニングパウダーおよび約35%までの油を含む請求項16の方法。

【請求項21】

 前記のフィリングが次のシーズニングパウダー、チーズ、トウガラシ、カプサイシンの一ないし複数を含む請求項16の方法。

【請求項22】

 前記の押出成形物を多数の小さいスナック食品に成形するステップをさらに含む請求項10の方法。

【請求項23】

 前記のスナック食品をシーズニングするステップおよび前記のスナック食品を包装するステップの一または双方をさらに含む請求項10の方法。

【請求項24】

 前記の混合ステップが約0.01%ないし約5%の甘味マスカーを前記のトレハロース含有混合物に混合することをさらに含む請求項10の方法。

【請求項25】

 デンプン質性食品原料および充填原料を含む直接膨化セイボリー食品であって、約3%ないし約15%の間の全糖および0.25ないし0.5の間の水分活性をさらに有する前記食品。

【請求項26】

 約5.5%未満の水分活性を有する請求項25の直接膨化セイボリー食品であって、押出後に熱処理を受けていない前記食品。

【請求項27】

 前記のデンプン質性食品原料がコーン、小麦、米、燕麦、大麦、ポテト、タピオカ、ライ麦および他の禾穀類、マメ科牧草類、塊茎植物またはその混合物に由来するひき割り粉、粉およびデンプンから成る群より選択される請求項25の直接膨化食品。

【請求項28】

 前記のデンプン質性食品原料がコーンミールを含み、および前記充填原料がチーズ、トウガラシ、メープルシロップ、カラメル、脱水果物粉末、ベーコン、ハラペニョ、トマト、ピザおよびバーベキューから選択される1または複数のシーズニングパウダーを含む請求項25の直接膨化食品。

【請求項29】

 飽和脂肪を2グラムしか含まない請求項25の直接膨化食品。

【請求項30】

 立方フィート当たり約12.5ないし約15ポンドの嵩密度を有する請求項25の直接膨化食品。

【請求項31】

 約1.75ないし約3.5ポンドの力の破断力を有する請求項25の直接膨化食品。

【請求項32】

 約64%ないし約77%の気孔率を有する前記デンプン質性原料の外殻を含む請求項25の直接膨化食品。

【請求項33】

 前記の充填剤が前記の食品の中央に封入されている請求項25の直接膨化食品。

【請求項34】

 殻の内部の充填原料対全量の容量比が約0.25ないし約0.35である請求項25の直接膨化食品。

【請求項35】

 約0.01%ないし約5%の甘味マスカーをさらに含む請求項25の直接膨化食品。

訳者注1)(発明の名称)

押出成形スナック食品:デンプンを含むコーンミール、コーンスターチなどと砂糖などの糖類とを水と共に混合して、エクストルーダー(押出成形機)により高温・高圧化で蒸練し細い穴を有するダイスから常圧下に押出して(押出成形して)成形した食品をいう。ダイスから出る時に急激に減圧されるために、水蒸気が急激に蒸散し多数の気孔を有しかつ膨化した組織を有する食品が得られる。日本では明治のカールが有名である。

訳者注2)(【請求項1】)

デンプン質性食品原料:米、麦、コーン、ポテトに代表される、成分としてデンプンを含む食料原料である。スナック原料としてはコーン、ポテトが最も使用されている。

トレハロース:グルコース単位が1,1-グルコシド結合した二糖類で、後味の良好な砂糖の約45%の甘味を有する吸湿性の低い安定な糖である。自然界に存在する糖であり、酵母に含まれることで有名である。フリトレーの本特許出願では、Cargill社のTREHA(登録商標)を挙げているが、トレハロースの安価な大量生産に最初に成功したのは日本の岡山の企業・林原である。それ以前は高価な糖であり製菓原料には使用できなかった。

可塑剤:高分子化合物であるデンプンの柔軟性を増してデンプンが成形され易くする。通常は砂糖などが使用される。本発明の特徴は、砂糖などを使用せずトレハロースを使用することにある。

押出成形可能なドウ:エクストルーダーの先端にあるダイから押し出された時に、一定の形を生成することが可能なドウである。一定の形を生成しなければ商品として成り立たないからである。ドウとは生地のことであり、原料成分が均一に混合した半流動性物質である。

訳者注3)(【請求項4】)

タピオカ:キャッサバの芋(根茎)から精製されるデンプンで様々な食品に用いられている。

ひきわり粉(meals)、粉(flours)およびデンプン:一般的に穀類を粗挽きしたものをひきわり粉、穀類の胚乳部を微粉砕したものを粉という。穀類の胚乳部から水で抽出したのがデンプンである。

訳者注4)(【請求項5】)

コーンミール(corn meal:胚乳部を粒状に粉砕したもの、全粒を粉砕し胚芽部分を除去したものをいう。

全粒コーンミール(whole grain corn meal:全粒を粉砕したもので胚芽部物を除去していない。

訳者注5)(【請求項8】)

甘味マスキング剤:甘味の隠ぺい剤。甘味を減弱させる化合物をいう。通常、カフェインなどの苦味物質である。

訳者注6)(【請求項9】)

直接膨化:高温・高圧化で蒸練したドウを直接常圧に戻して(減圧して)膨らませることをいう。

水分活性:微生物(カビ・細菌)が利用できる食品中の水分量の指標となる、食品の有する蒸気圧/純水の蒸気圧で示される値である。食品の保存耐久性を決定する因子であり、食品の水分活性が0.63未満であれば長期保存してもカビ・細菌が発生・増殖することはほとんどない。干菓子は約0.50以下、半生菓子は約0.60~0.88、生菓子は約0.88以上である。生菓子(和生菓子、洋生菓子)は短期間で細菌が増殖し腐敗し、半生菓子も中長期保存で腐敗やカビ・酵母の発生が生じる。

訳者注7)(【請求項16】)

充填原料:スナック食品の中空部分を充填する原料である。

訳者注8)(【請求項18】)

セイボリー風味:用語「セイボリースナック」は塩味の効いたスナック製品を意味する(『カルミン指定のための検討報告書』厚労省資料(平成2374日))。セイボリー(木立薄荷)はハーブの一種で肉料理等に使用される。

訳者注9)(【請求項19】)

ショートニング:、植物性油脂を原料として製造した固状又は流動状のものであって、可そ性、乳化性等の加工性を付与したもの(精製ラードを除く。)をいう(ショートニングの日本農林規格:平成三年八月一日農林水産省告示第九百八十九号:最終改正:平成二十四年七月十七日農林水産省告示第一六八八号)。植物性油脂を水素添加により硬化油としガスを練り合わせた油脂であり、菓子類にさっくり感を付与する。近年、硬化の過程で生じるトランス脂が問題とされるようになった。

訳者注10)(【請求項20】)

シーズニングパウダー:スパイスやハーブに塩や砂糖などの調味料をミックスし、使いやすくしたもの(S&B社HPより)。

訳者注11)(【請求項21】)

カプサイシン:トウガラシの辛味成分である。トウガラシにはカプサイシンをほとんど含まない辛味のない品種もある。

訳者注12)(【請求項22】)

押出成形物を多数の小さいスナック食品に成形するステップ:エクストルーダーで蒸練され高温のままダイスを出た直後、まだ高温のうちにカッターなどで切断して成形するのが普通である。温度が低下した後の成形は困難である。

訳者注13)(【請求項23】)

シーズニングするステップ:製品を回転する容器中でシーズニングにからませるのが普通である。

訳者注14)(【請求項26】)

押出後に熱処理を受けていない:本発明の特徴は、甘味を抑えたうえでマルトデキストリンを使用した場合に必要な成形後の熱処理が必要ないことである。

訳者注15)(【請求項29】)

飽和脂肪:飽和脂肪酸からなる脂肪を意味する。脂肪酸の主鎖が水素で飽和されている。⇔不飽和脂肪酸

訳者注16)(【請求項30】)

嵩密度:気孔を無視した密度をいう。

訳者注17)(【請求項32】)

気孔率:全体積中に占める気孔の割合をいう。

 

国際公開公報(特許)12号

※ブラックココア関連商品の一般例

Mondelez International「OREO」
Mondelez International「OREO」
大東カカオ「ブラックココア」
大東カカオ「ブラックココア」

国際公開番号:WO 2013/128146 A1

国際公開日 :2013年9月6日

出願人   :クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド

発明の名称 :『ココアパウダーおよびその製造方法』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 ブラックココアパウダーの製造方法であって、アルカリ化剤がココア豆またはそれに由来する産物に対し、鉄の不存在下に添加されるアルカリ処理ステップを含む前記方法。

【請求項2】

 該アルカリ化剤が炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウムもしくは重炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウム、酸化マグネシウムまたはその任意の組み合せより選択される請求項1の方法。

【請求項3】

 該アルカリ化剤が炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムまたはその任意の組み合せより選択される請求項1または2のいずれか一項の方法。

【請求項4】

 該アルカリ化剤が炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合物からなる請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項5】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化ナトリウムの該量が2.0ないし2.5重量%である請求項4の方法。

【請求項6】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される炭酸カリウムの該量が0.8ないし1.5重量%である請求項4または請求項5の方法。

【請求項7】

 該アルカリ化剤が炭酸アンモニウムおよび水酸化ナトリウムの混合物からなる請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項8】

 該アルカリ化剤が10重量%以下の量で炭酸アンモニウムを含む請求項1ないし7のいずれか一項の方法。

【請求項9】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化ナトリウムの該量が2.0ないし2.5重量%である請求項7または請求項8の方法。

【請求項10】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される炭酸アンモニウムの該量が5ないし7重量%である請求項7ないし請求項9のいずれか一項の方法。

【請求項11】

 該アルカリ化剤がアンモニウム塩を含有しない請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項12】

 該アルカリ化剤がカリウム塩を含む請求項1ないし6のいずれか一項の方法。

【請求項13】

 該アルカリ化剤がカリウム塩からなる請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項14】

 該カリウム塩が水酸化カリウムである請求項12または請求項13の方法。

【請求項15】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化カリウムの該量が少なくとも1重量%である請求項14の方法。

【請求項16】

 該アルカリ化剤が水酸化ナトリウムからなる請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項17】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化ナトリウムの該量が2重量%以上である請求項16の方法。

【請求項18】

 該アルカリ化剤が水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウムを含む請求項1ないし3のいずれか一項の方法。

【請求項19】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される炭酸カリウムの該量が2重量%以上でありおよび/またはココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化ナトリウムの該量が2重量%以上である請求項18の方法。

【請求項20】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される炭酸カリウムの該量が少なくとも5重量%である請求項19の方法。

【請求項21】

 水酸化ナトリウムの該量が2.4重量%でありおよび炭酸カリウムの該量が5重量%ないし10重量%である請求項20の方法。

【請求項22】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加される炭酸カリウムの該量が1重量%未満でありおよび/またはココア豆またはそれに由来する産物に添加される水酸化ナトリウムの該量が1重量%以上である請求項18の方法。

【請求項23】

 該アルカリ化剤が水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる請求項18ないし22のいずれか一項の方法。

【請求項24】

 ココア豆またはそれに由来する産物に添加されるアルカリ化剤の該総量が1ないし20重量%である請求項1ないし請求項23のいずれか一項の方法。

【請求項25】

 該ココアパウダーがHFCパウダーである請求項1ないし請求項24のいずれか一項の方法。

【請求項26】

 ココア豆またはそれに由来する産物にアルカリ化剤が添加されるアルカリ処理ステップを含むココアパウダー製造の方法であって、水酸化ナトリウムが唯一のアルカリ化剤としてココア豆またはそれに由来する産物の重量に基づいて2重量%以上である量で添加される前記方法。

【請求項27】

 ココア豆またはそれに由来する産物をアンモニウム塩および/またはカリウム塩の存在下、および任意に鉄塩の存在下でアルカリ処理することを含むココアパウダーの製造方法であって、ココア豆またはそれに由来する産物の重量に基づいて、鉄塩が、存在する場合には、2重量%未満の濃度で存在しおよびアンモニウム塩および/またはカリウム塩の総濃度が8重量%以上である前記方法。

【請求項28】

鉄塩が、存在する場合には、酸化鉄の糖酸塩ではない請求項27の方法。

【請求項29】

鉄塩が存在しない請求項27の方法。

【請求項30】

 該アンモニウム塩濃度が10重量%未満である請求項27ないし29のいずれか一項の方法。

【請求項31】

 該カリウム塩濃度が8重量%未満である請求項27ないし30のいずれか一項の方法。

【請求項32】

 該カリウム塩が水酸化カリウムである請求項27ないし31のいずれか一項の方法。

【請求項33】

 該カリウム塩が炭酸カリウムである請求項27ないし32のいずれか一項の方法。

【請求項34】

 ココアパウダーがHFCパウダーである請求項27ないし33のいずれか一項の方法。

【請求項35】

 請求項1ないし34のいずれか一項の方法に従って生産可能なココアパウダー。

【請求項36】

 水酸化ナトリウム、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウム、またはその任意の組み合せを含むブラックココアパウダーであって、アンモニアを含有しない前記ココアパウダー。

【請求項37】

 ナトリウムおよび/またはカリウムを含むブラックココアパウダーであって、アンモニアを含有しない前記ココアパウダー。

【請求項38】

 0.01ないし0.5重量%の鉄を含む請求項35ないし37のいずれか一項のブラックココアパウダー。

【請求項39】

 鉄を含有しない請求項35ないし37のいずれか一項のブラックココアパウダー。

【請求項40】

 4未満のL値を有する請求項35ないし39のいずれか一項のココアパウダー。

【請求項41】

 8.5以上のpHを有する請求項35ないし40のいずれか一項のココアパウダー。

【請求項42】

 3重量%未満のカリウムを含む請求項35ないし40のいずれか一項のココアパウダー。

【請求項43】

 1ないし4重量%のナトリウムを含む請求項35ないし42のいずれか一項のココアパウダー。

【請求項44】

 10ないし15%の油脂を含む請求項35ないし43のいずれか一項のココアパウダー。

【請求項45】

 請求項35ないし44のいずれか一項のココアパウダーを含む菓子製品。

訳者注1)

(【請求項1】)

ブラックココアパウダー:褐色ないし黒褐色のココアで、飲用のココアと比べて非常に色の濃いココアである。ココアの一製造工程であるアルカリ処理を高度に実施して製造される。OREO等の菓子製品の原料として使用される。

アルカリ化剤:カカオ豆を発酵すると有機酸が生じ、その結果カカオ豆は酸性となっている。アルカリ処理によりこれを中和するが、この処理に用いられる炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、等を総称してアルカリ化剤という。

それ由来の産物:カカオニブス(カカオ豆からハスク(種皮)とジャーム(幼根)を除去した胚乳部)、カカオリカー(カカオニブスの磨砕物で、約35℃以上で液状となる)、カカオケーキ(カカオリカーを圧搾してカカオバターを抽出した残渣、これを微粉砕したものがココア)、等。

鉄の不存在下:世界的ないくつかの市場において、ココア製造での一定の鉄塩の使用が禁止されている。

アルカリ処理:上記の通り、カカオ原料をアルカリ化剤で中和する工程であり、加熱、加圧、減圧することもある大規模な工程である。アルカリ処理により、①様々な色の濃さ、②酸の中和、③ココアの水溶性の増加、④ココアのフレーバーの改善、等が達成される。

訳者注2)

(【請求項25】)

HFCパウダー:High flavour cocoaの略。フレーバー強度を増すために特別なロースト法を用いて作成したココア。

訳者注3)

(【請求項28】)

酸化鉄の糖酸塩酸化鉄の糖酸塩;;酸化鉄糖酸塩;酸化の糖酸;サッカラート化酸化鉄;Iron saccharate 分子式:C18H24Fe2O24

分子量:736.06

訳者注4)

(【請求項40】)

4未満のL値:Hunter “L” scale value(Hunter,R.S., The Measurement of Appearance, John Wiley and Sons, New York, 1975)。視覚均一度の色単位の測定値を与える。人間の明度の知覚と極めて近い。ピュアな黒=0~ピュアな白=100。市販のダッチ(アルカリ処理)ココアでは、L=19ないし24である。4未満ということはかなりピュアな黒に近いことを意味している。

 

国際公開公報(特許)11号

カカオ豆醗酵の一般例

カカオ豆の醗酵
カカオ豆の醗酵

国際公開番号:WO 2013/025621

国際公開日 :2013年2月21日

出願人   :マーズ インコーポレイテッド

発明の名称 :『カカオ豆の微生物醗酵』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 a.一本の木由来の3個以下のポッドからカカオ豆を準備し、ここでカカオ豆は密閉容器に放置し、

b.容器から空気を除去しかつ密閉容器を密封し、

c.カカオ豆を嫌気条件下、制御された温度で第一の所定の期間発酵し、

d.カカオ発汗液をカカオ豆から一又は複数の第二の所定期間に分離し、

e.全水分含量が約5~10パーセントとなるまでカカオ豆を乾燥する、

ことを含むカカオ豆の微生物醗酵法。

【請求項2】

 方法がステップ(b)に先立ってカカオ・スターターカルチャーをカカオ豆に接種することをさらに含む請求項1の方法。

【請求項3】

 方法がステップ(d)又は(e)に先立って第三の所定時間に部分的好気条件下、制御温度でカカオ豆を醗酵することを更に含む請求項1の方法。

【請求項4】

 カカオ豆がステップ(e)の後の第四の所定期間、熟成される請求項1の方法。

【請求項5】

 微生物醗酵されたカカオ豆から得られるチョコレート・リカーのフレーバー・プロファイルが、従来の発酵カカオ豆から生産されるチョコレート・リカーのフレーバー・プロファイルと実質的に類似している請求項1の方法。

【請求項6】

 方法がステップ(e)又は請求項4によって生産されるカカオ豆を焙炒すること、及びシェルを除去すること、及び得られたカカオニブをチョコレート・リカーに磨砕することを更に含む請求項1の方法。

【請求項7】

 カカオ豆を密閉容器に配置する前に網袋に配置する請求項1の方法。

【請求項8】

 密閉容器がプラスチック製である請求項1の方法。

【請求項9】

 密閉容器がポリプロピレン製のジップロックバッグである請求項1の方法。

【請求項10】

 スターターカルチャーが特定の酵母及び/又は細菌を使用して調製される請求項1の方法。

【請求項11】

 カカオ豆が2個以下のカカオポッド由来である請求項1の方法。

【請求項12】

 カカオ豆が1個以下のカカオポッド由来である請求項1の方法。

【請求項13】

 第一の所定期間が12~72時間である請求項1の方法。

【請求項14】

 第三の所定期間が12~144時間である請求項1の方法。

【請求項15】

 第四の所定期間が2~10週間である請求項1の方法。

【請求項16】

 発汗液が嫌気醗酵中の一又は複数の所定期間に除去される請求項1の方法。

【請求項17】

 発汗液が嫌気醗酵中の一又は複数の所定期間に除去される請求項3の方法。

【請求項18】

 発汗液が醗酵終了後に除去される請求項1の方法。

訳者注1)

(【請求項1】)

一本の木由来の3個以下のポッド:一本のカカオの木には、多数のポッド(カカオ果実)が幹に直接生るが、その中から3個以下のポッドを選ぶ意味である。1個のポッドには約40個の種子(カカオビーンズ)が白色のパルプに包まれている。

嫌気条件空気(酸素)のない条件を言う。嫌気条件下で生育する微生物を嫌気性微生物、これと反対に好気性条件下(空気(酸素)のある条件下)で生育する微生物を好気性微生物という。

発酵:一般に、微生物が有機化合物を分解して人間に有用な物質を生産する過程を言う。例、乳酸発酵、アルコール醗酵、等。

カカオ発汗液:カカオ豆を包んでいた糖類の白色パルプが、醗酵により液状になった液体をいう。

訳者注2)

(【請求項2】)

カカオ・スターターカルチャー:カカオ豆を醗酵させるための種菌を言う。発酵を開始するためには、多量の微生物菌体が必要であるので、予め微生物の生育に適した培地で培養しておく。乳酸菌、酢酸菌、酵母、等を含む。

訳者注3)

(【請求項5】)

フレーバー・プロファイル:チョコレートのフレーバー特性を言う。ビターネス、収斂性、酸味、果実様のフレーバー、花様のフレーバー、等。

訳者注4)

(【請求項6】)

カカオ豆を焙炒:カカオ豆の焙煎を言う。120~130℃での焙煎で、200℃でのコーヒーの焙煎に比べて低温であるために日本では焙炒と称している。英語ではどちらもロースト(roast)。

シェル:カカオ豆の種皮。カカオ豆から種皮と幼根(ジャーム)を除去したものがカカオニブス(カカオマス、チョコレートリカー)で、チョコレートの主原料となる。

 

国際公開公報(特許) 10号

※ネスレのエアロ(含気チョコレート)の一般例

Nestle「Aero」
Nestle「Aero」
Nestle「Aero」(structure)
Nestle「Aero」(structure)
ネスレ日本「エアロミニ凍らせておいしいチョコミント」
ネスレ日本「エアロミニ凍らせておいしいチョコミント」

国際公開番号:WO 2013/092643

国際公開日 :2013年6月27日

出願人   :ネステックソシエテ アノニム

発明の名称 :『含気チョコレート

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 連続油脂相中に分散する不連続相を形成しつつ気相が多数の気泡を形成するように、チョコレートが成形される直前にテンパリングされた液状チョコレートに気相を注入することを含む含気チョコレートを調製する方法であって、ここで気相を与えるために溶媒を含むタンクを通して気体を通気して、溶媒成分を気体中に取り込むことによって当該気相が得られる前記方法。

【請求項2】

 気体が空気、窒素または二酸化炭素である請求項1の方法。

【請求項3】

溶媒成分が水、グリセリン、エタノール、プロピレングリコールまたはトリアセチン、またはその任意の混合物から選択される請求項1または2の方法。

【請求項4】

 請求項1~3のいずれか一項の方法であって、ここで液状チョコレートを含気するために液状チョコレートが分注ヘッドに供給される直前にテンパリングされた液状チョコレート中に気相が注入され、含気されたチョコレートが分注ヘッドのノズルを通して成形のために型に供給され、含気チョコレートを提供するために従来法によって型が振動され、さらに含気されたチョコレートが冷却され、固化され次に離型される前記方法。

【請求項5】

 気相が特別な溶媒成分として水またはグリセリンを含み、改善された耐熱性を有する含気チョコレートを調製するための請求項1~4のいずれか一項の方法。

【請求項6】

 溶媒成分が香料および/または着色料を含む請求項1~5のいずれか一項の方法。

【請求項7】

 香料がバニラ、バニリン、エチルバニリン、オレンジ油、ペパーミントオイル、イチゴ、ラズベリーまたはその任意の混合物から選択されることを特徴とする請求項6の方法。

【請求項8】

 着色料がミントグリーンまたは天然色素抽出物であることを特徴とする請求項6の方法。

【請求項9】

 油脂が連続するチョコレートマス中に分散した溶媒含有気相の気泡を含む含気チョコレート。

訳者注1)

発明の名称

含気チョコレートaerated chocolate 加温して融けた状態の液状チョコレートに気体(空気、窒素、炭酸ガス等)を通気して冷却し、固体状のチョコレート中に多数の気泡が含まれるようにしたチョコレートである。通気の方法には、特定の乳化剤を含んだ液状チョコレートを撹拌して空気を抱き込む方法、加圧した気体を液状チョコレートに注入する方法、減圧下で気泡を拡大する方法などがある。米国特許4889738号(森永製菓)は、粘度の増した冷却チョコレートに空気を抱き込みその後減圧して気泡を大きくする方法であるが、明細書中でネステックは、この方法では気泡が連続してチョコレートが不連続となると述べている。ちなみにネステックの本発明によれば個々に独立した気泡を作成することができてチョコレートが不連続となることはないと述べてもいる。チョコレートが不連続であると、経時的に気泡がつぶれてチョコレート全体もつぶれてしまう恐れがある。ネスレにはAero(エアロ)ブランドの含気チョコレートがある。日本では、エアインチョコレートともいう。

訳者注2)

(【請求項1】)

連続油脂相:チョコレート中で油脂が連続した状態で存在すること、またその状態にある油脂を意味する。油脂が途切れていないことを言っている。

不連続相:チョコレート中の気泡が、個々に独立していて互いに繋がっていない状態にあることを意味している。

気相:物質が気体状態で連続している状態、またその状態にある領域である。

テンパリング:色艶が良く良好なテクスチャーを有するチョコレートを成形するために、加温された液状のチョコレートを冷却固化する際に、一旦、カカオバターの融点以下に冷却しその後2~3℃加温してカカオバターの安定な結晶核を多数生じさせる調温工程である。チョコレートの見栄えを決定する工程であり、商品価値を左右する工程である。

訳者注3)

(【請求項2】)

空気、窒素または二酸化炭素:通常は空気を使用するが、窒素、二酸化炭素を使用するとチョコレート中の油脂を酸化させないという利点がある。

訳者注4)

(【請求項3】)

グリセリン、エタノール、プロピレングリコールまたはトリアセチン:グリセリンは、油脂の構成成分であり、甘味料、化粧品の原料として使用される。エタノールは、エチルアルコールであり酒の主成分である。プロピレングリコールは、麺やおにぎりの品質改良剤、保湿剤、不凍液などとして用いられている。トリアセチン(グリセリン三酢酸エステル)は可塑剤、コーチング剤として使用される。これらの溶媒を取り込んだ気体を液状チョコレート中に注入するのが本発明の特徴である。

訳者注5)

(【請求項4】)

分注ヘッド:液状のチョコレートを複数の型(モールド)に充填する分注機の先端部。分注ヘッドのノズル:分注ヘッドの液状チョコレートを充填するためのノズル(筒口)。

型が振動され:注入した気泡ではなく、液状チョコレートに自然に含まれた細かな気泡を除くために振動する。振動して除去しないと不揃いな気泡が残り、チョコレートの見た目と触感を損なう。

離型:固化したチョコレートを型から取り出すことをいう。液状のチョコレートが固まると収縮するために、軽い打撃を与えて固まったチョコを型から取り出すことができる。テンパリングが良好なほどチョコの収縮率が高いために無理なく型から剥がれるので、表面の艶が良好なチョコが得られる。

訳者注6)

(【請求項5】)

改善された耐熱性:水やグリセリンが添加されると液状のチョコレートの粘度は上昇し、それを固化したチョコレートは一般的に耐熱性が改善される。

訳者注7)

(【請求項7】)

バニラ、バニリン、エチルバニリン、オレンジ油、ペパーミントオイル:バニリンはバニラの種子であるバニラビーンズの主成分でありアイスクリーム(およびチョコレート等)で使用され、バニラ風味の元となる。天然物は高価であり、合成もされる。エチルバニリンは天然には存在せず完全な合成品であるが、バニリンの2〜2.5倍の香気を有する。オレンジ油はオレンジオイルともいい、かんきつ類の皮の精油であり、主成分はリモネンである。ペパーミントは交配種のハーブで、その油(精油)はハッカの香り成分である。

訳者注8)

(【請求項8】)

ミントグリーン:明るい緑色。ミントの葉のような色。青みがかった緑色。

訳者注9)

(【請求項9】)

チョコレートマス:チョコレートの塊の意味であるが、加温した液状チョコレートが冷却により固化した固形チョコレートを意味している。いわゆるチョコレートの主原料であるカカオマス(=チョコレートリカー)(カカオ豆(ニブス)の磨砕物)とは異なる。

 

国際公開公報(特許) 09号

※チョコレート飲料用ディスペンサーの一般例

ネスレプロフェッショナル「Viaggi」
ネスレプロフェッショナル「Viaggi」

国際公開番号:WO 2013/064456

国際公開日 :2013年5月10日

出願人   :ネステックソシエテ アノニム

発明の名称 :『飲料ディスペンサー用の液体チョコレート濃縮物

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 14ないし16重量%のカカオ固形分濃度を示しおよび熱処理カカオバターを含む液体チョコレート濃縮物。

【請求項2】

1.4ないし1.7重量%の熱処理カカオバターをさらに含む請求項1の液体チョコレート濃縮物。

【請求項3】

 熱処理カカオバターが、標準カカオバターのトリグリセリド組成物と比較して減少した対称型モノ不飽和トリグリセリドおよび増加したジおよびトリ飽和トリグリセリド分子種を有するトリグリセリド組成物を示す請求項1または2の液体チョコレート濃縮物。

【請求項4】

 一または複数の甘味料、着色剤、微量栄養素または香料をさらに含む請求項1ないし3のいずれか一項の液体チョコレート濃縮物。

【請求項5】

 最大で300cP(センチポアズ)の粘度を示す請求項1ないし4のいずれか一項の液体チョコレート濃縮物。

【請求項6】

 a)カカオ固形分の水性スラリーを水和し、次に

b)熱処理カカオバター存在下で、少なくとも一のデンプン加水分解酵素により水和スラリーを加水分解し、次に

c)濃縮物を形成するために、選択的に甘味料、香料および/または他の添加物を添加し、次に

d)濃縮物をUHT熱処理過程に提出し、次に

 e)熱処理濃縮物を均質化する、

段階を含む液体チョコレートの調製方法。

【請求項7】

 段階e)にさらに付け加えて、液体濃縮チョコレートが包装容器に充填される請求項6の方法。

【請求項8】

 チョコレート飲料を調製するための請求項1ないし5のいずれか一項の液体チョコレート濃縮物の使用。

【請求項9】

 請求項1ないし5のいずれか一項の液体チョコレート濃縮物を希釈液により希釈することを含むチョコレート飲料の調製方法。

【請求項10】

 液体チョコレート濃縮物1部を希釈液、例えば水、牛乳、紅茶またはコーヒー等0.70ないし2部により希釈することを含む請求項9の方法。

【請求項11】

 液体チョコレート濃縮物が、牛乳またはコーヒーまたは紅茶濃縮物を含む他の液体飲料濃縮物の存在下で希釈される請求項9または10の方法。

【請求項12】

 飲料の調製が飲料ディスペンサーを用いて実施される請求項9または10いずれか一項の方法。

【請求項13】

 希釈前に液体チョコレート濃縮物をポンプ輸送することを含む請求項12の方法。

【請求項14】

 請求項9の方法に従って調製されるチョコレート飲料。

【請求項15】

 柔軟性収納パウチ、パウチとの液体による連絡のために結合された柔軟性チューブおよび一方向性の無菌バルブを含む包装容器であって、当該収納パウチが請求項1ないし5の液体チョコレート濃縮物の複数の部分を含む前記包装容器。

【請求項16】

 一方向性の無菌バルブが、チューブの出口を出た濃縮物を受け取るための投入口および投入口から始まり少なくとも一の取出口で終わる内部チャンネルを有する輸送ブロックを含み、ここでエラストマー膜が、そのエラストマー膜の一部が取出口を覆いおよびエラストマー膜の下流端がバルブ出口を形成するように輸送ブロックを包み込む請求項15の包装容器。

 

訳者注1)

(発明の名称)

飲料ディスペンサー:ネスレプロフェッショナルは多様なディスペンサーを展開している。「Viaggi」はエスプレッソ等のコーヒー飲料だけでなく、チョコレート飲料も調製可能なディスペンサーである。

液体チョコレート濃縮物:液状の飲料用チョコレートは嵩張り、輸送コスト等の面で不利である。そのために飲料用としては高濃度のココアを配合した液状のチョコレート液を調製したものが液体チョコレート濃縮物である。工程上で濃縮しているわけではない。

訳者注2)

(【請求項1】)

熱処理カカオバター:例、減圧下で250℃、1時間処理する(R.E.Timms、「Confectionery Fats Handbook」、The Oily Press(2003))。油中のトリグリセリド組成が無処理のカカオバターと異なる。無処理では対称型モノ不飽和脂肪酸トリグリセリドが多いが、処理したものはそれが減少して、ジ飽和脂肪酸トリグリセリド、トリ飽和脂肪酸トリグリセリドが多くなる。無処理に比べて結晶化の挙動が異なる。例、「BC/50-Y」(販売元;Eulip、Parma、Italy)。トリグリセリドとは、グリセリンと3個の脂肪酸が結合した油脂の構成成分である。

訳者注3)

(【請求項3】)

対称型モノ不飽和トリグリセリド:グリセリンの3本の結合手の真ん中の手に不飽和型の脂肪酸が結合し、他の左右の手には飽和脂肪酸が結合した構造の油脂。

ジおよびトリ飽和トリグリセリド分子種3本の結合手の2本または3本に飽和型の脂肪酸が結合した構造の油脂。油脂は一種のトリグリセリドから構成された均一なものではなく、種々のトリグリセリドの混合物である。

訳者注4)

(【請求項5】)

300cP(センチポアズ)の粘度:室温の水の粘度がおよそ1センチポアズであるから、その300倍の粘度である。現在の粘度単位はPas(パスカル秒)。1ポアズ=100センチポアズ=0.1パスカル秒。冷蔵保存した場合、約30日後に従来品は1750センチポアズまで粘度が上昇するが、本発明品は220センチポアズであり、約1/8の粘度に低下する。その結果、長期貯蔵後でもディスペンサーで安定してチョコレート飲料を製造することが可能となる。

訳者注5)

(【請求項6】)

水性スラリー:水による懸濁液。水70部とココアパウダー14部を90℃で45分間混合して作製する。

デンプン加水分解酵素:アミラーゼやペクチナーゼ等を使用し55~60℃で30分以上行う。

UHTUltra High Temperature ここでは、145℃、41秒間の処理を行っている。

均質化:高圧化(200bar)、高温(75~85℃)で行う。ホモ牛乳、アイスクリームミックスのホモジナイズと同じ意味である。

訳者注6)

(【請求項8】)

チョコレート飲料:本発明の液体チョコレート濃縮物は、従来品のように経時的に粘度が上昇しないので、ディスペンサーで安定して色々なチョコレート濃度のチョコレート飲料を作成することができる。

訳者注7)

(【請求項9】)

希釈液:通常は水であるが、請求項10、11の通り牛乳、紅茶、コーヒーまたはそれらの濃縮物も可能である。

訳者注8)

(【請求項15】)

柔軟性収納パウチ:「インゼリー」等のゼリー飲料の包装容器として使用されているパウチである。

柔軟性チューブ:同上と同じ材料で作成されたチューブ(管)である。

一方向性の無菌バルブ:液体チョコレート濃縮物がこの無菌バルブを通して押し出されるが、反対に外部からはこのバルブのために容器内部に空気等が侵入しない仕組みのバルブと思われる。

訳者注9)

(【請求項16】)

輸送ブロック:投入口、取出口、その両者を繫ぐ内部チャネルからなる一組の装置である。

エラストマー:ゴム等、弾性のある柔らかい高分子材料である。

 

国際公開公報(特許) 08号

※プリンティッドチョコレートの一般例

DMC「プリンティッドチョコレート」
DMC「プリンティッドチョコレート」
K's Chocolate「プリンティッドチョコレート」
K's Chocolate「プリンティッドチョコレート」

国際公開番号:WO 2012/064591

国際公開日 :2012年5月18日

出願人   :ザ ハーシー カンパニー

発明の名称 :『可食性の印刷画像をチョコレート菓子に固着するための方法』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 貼付された透明な可食性フィルムをその上に有する転写シートを供給すること;

 可食性の水性インクを使用して透明な可食性フィルム上に鏡像を印刷すること;

 鏡像が透明の可食性フィルムと可食性の不透明層の中間にあるように、鏡像を覆う可食性の不透明層を形成するために、本質的には二酸化チタンおよびチョコレート相溶性油脂から成るコロイド溶液の層を塗布すること;ならびに

 可食性の不透明層をチョコレート基材に固着し、それによって画像をチョコレート菓子製品に貼り付けること、

を含む可食性の印刷画像をチョコレート製品に固着するための方法。

【請求項2】

 チョコレート相溶性油脂がココアバターまたはカカオ代用脂を含む請求項1の方法。

【請求項3】

 塗布する段階がコロイド溶液を液状のまま鏡像のうえにスプレーすることを含む請求項1の方法。

【請求項4】

可食性の不透明層とチョコレート基材の合体した境界面を形成するように、 固着する段階が液状のコロイド溶液をチョコレート基材の表面上で固化することを含む請求項3の方法。

【請求項5】

 固着する段階の後に転写シートを透明な可食性フィルムから除去する段階をさらに含む請求項1の方法。

【請求項6】

 固着する段階が、可食性の不透明層をチョコレート基材の融解した表面と接触させ、それから可食性の不透明層とチョコレート基材の合体した境界面を形成するようにチョコレート基材を冷却することを含む請求項1の方法。

【請求項7】

 チョコレート基材が無脂カカオ固形分を含んでいる請求項1の方法。

【請求項8】

 鏡像が可食性の水性インクを使用して印刷される請求項1の方法。

【請求項9】

 透明な可食性フィルムが砂糖、ココアバターおよびゼラチンをさらに含む請求項1の方法。

【請求項10】

 コロイド溶液が少なくとも重量で約5%の二酸化チタンを含む請求項1の方法。

【請求項11】

 コロイド溶液が少なくとも重量で約18%ないし約24%の範囲の二酸化チタンを含む請求項1の方法。

【請求項12】

 コロイド溶液が、約0.1mmないし約0.2mmの範囲の厚さを有する可食性の不透明層を形成するように塗布される請求項1の方法。

【請求項13】

 透明な可食性フィルムと可食性の不透明層が約0.3mm以下の接合した厚さを有する請求項12の方法。

【請求項14】

 固着する段階がコロイド溶液をテンパリングすることを含む請求項1の方法。

【請求項15】

 可食性の不透明層がチョコレート基材に固着された後に、可食性の不透明層が印刷画像によって完全に隠される請求項1の方法。

【請求項16】

 コロイド溶液がチョコレート相溶性油脂および二酸化チタンから成る請求項1の方法。

【請求項17】

 貼付された透明な可食性フィルムをその上に有する転写シートを供給すること、ここで透明な可食性フィルムはスターチを含む;

 可食性の水性インクを使用して透明な可食性フィルム上に鏡像を印刷すること;

 鏡像が透明の可食性フィルムと可食性の不透明層の中間にあるように可食性の不透明層を形成するために、本質的にはココアバターまたはカカオ代用脂および重量で約5%ないし約24%の二酸化チタニウムから成る組成物を、約40℃の温度で溶解コロイド溶液としてスプレー塗布すること、ここで可食性フィルムと可食性の不透明層は約1.0mm以下の接合した厚さを有する;ならびに

 チョコレート基材の表面でコロイド溶液を固化しテンパリングすることによって、可食性の不透明層を、無脂カカオ固形分を含む室温のチョコレート基材に固着し、それによって画像をチョコレート菓子製品に貼り付けること、

を含む可食性の印刷画像をチョコレート製品に固着するための方法。

【請求項18】

 可食性の不透明層がチョコレート基材に固着された後に、可食性の不透明層が印刷画像によって完全に隠される請求項17の方法。

【請求項19】

 チョコレート基材;

 チョコレート基材の一部を覆っている二酸化チタンおよびチョコレート相溶性油脂、ここで二酸化チタンは可食性の不透明層の少なくとも重量で約5%存在する;ならびに

 透明な可食性フィルム、ここで当該透明な可食性フィルムは透明な可食性フィルムと可食性の不透明層の間に印刷画像を有する、

を含むチョコレート菓子製品。

【請求項20】

 可食性の不透明層が約0.1mmないし約0.2mmの範囲の厚さを有する請求項19のチョコレート菓子製品。

【請求項21】

 透明な可食性フィルムが約0.05mmないし約0.1mmの範囲の厚さを有する請求項20のチョコレート菓子製品。

【請求項22】

 透明な可食性フィルムを覆う転写シートをさらに含む請求項19のチョコレート菓子製品。

 

訳者注1)

(【請求項1】)

透明な可食性フィルムをその上に有する転写シート:画像は透明フィルム(スターチゼリー等)に印刷される。透明フィルムは転写シート(プラスチック)と(後述の)不透明層に挟まれ、不透明層をチョコレートに貼り付けた後に最外層となる転写シートを除去すると透明フィルムが最外層となり、印刷された画像は透明フィルムを通して(鏡像の反対像を)見ることができるようになる。

可食性の水性インク:実際には食品添加物の着色料を使用することになる。

鏡像を印刷:最終的に眼に触れるのは印刷画像の裏面となるために鏡像を印刷する。

可食性の不透明層:最終的にチョコレートと接することになる層で、画像の背景にもなる。

二酸化チタン:白色の合成着色料。下地に用いると他の色の発色が鮮やかとなる。チョコレート地を消して他の色が目立つようにする。

チョコレート相溶性油脂:カカオ代用脂が典型的である。カカオ豆に含まれる油脂、ココアバターと油脂組成が似ていて混ぜて使用しても艶不良、ブルーム発生等の支障が生じない油脂である。具体的には、シア脂、イリッペ脂+パーム油画分等。明細書中では、富士製油(株)の Palmy MMSE を例示している。

コロイド溶液:マヨネーズや牛乳のように小粒子が液体に分散しているもの。ここでは、油脂のなかに二酸化チタン粒子が分散している溶液(白色)を指している。

訳者注2)

(【請求項2】)

ココアバター:チョコレートの原料であるカカオ豆中の油脂。カカオ豆の約50%はココアバタ―である。体温近くで急激に融ける性質のために非常に口どけが良い。他の植物性油脂には見られない特質であり、そのお蔭で高価でもある。

カカオ代用脂:上記参照。

訳者注3)

(【請求項4】)

合体した境界面:不透明層とチョコレート基材は、お互い一旦はその表面を融解してから合わせるので強固な境界面を形成する。

訳者注4)

(【請求項7】)

無脂カカオ固形分:カカオ豆からココアバターを引いた残りの成分。ココアパウダー(多少ココアバターが残っているが)と成分はほぼ一緒である。

訳者注5)

(【請求項9】)

ゼラチン:動物の皮や骨から得られるコラーゲンから加熱抽出したもので、ゼリー原料となる。

訳者注6)

(【請求項14】)

テンパリング:油脂の安定型微結晶が多数生じるように、液状の油脂を固化するときに温度降下速度を調整する操作をいう。テンパリングが上手くいったチョコレートの表面の光沢・艶は優れていて、ブルーム(油脂結晶に肥大化で白色隗としてチョコレートの内部・表面に現れる)を生じ難い。

国際公開公報(特許) 07号

※低脂肪(低カロリー)チョコレートの一般例

バリーカレボー「Volcano」


国際公開番号:WO 2012/129087

国際公開日 :2012年9月27日

出願人   :ザ ハーシー カンパニー

発明の名称 :『低脂肪チョコレート菓子製品の製造方法』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 菓子製品を製造する方法であって、チョコレート相溶性油脂および甘味料を含む混合物を供給し;その後、混合物を所定の平均粒径を有する粉末に微細化し;その後、チョコレート相溶性油脂の融点以上の温度で、ドウを成形するために微細化された粉末を撹拌し;その後、ドウを固化して配合した総油脂含量が重量で29%未満の菓子製品に成形する

ことを含む前記方法。

【請求項2】

 微細化された混合物中に存在する油脂含量が、成形された菓子製品中に存在する油脂含量と実質的に同等である請求項1の方法。

【請求項3】

 撹拌と固化の段階の中間でドウを断片に成形することをさらに含む請求項1の方法。

【請求項4】

 成形の段階が、回転成形、シーティング、エクストルージョン、デポジッティング、ドロップロール、スタンピング(圧縮成形)、冷凍コーンおよびパンニングから成る群から選択される少なくとも1つの操作を含む請求項3の方法。

【請求項5】

 請求項1の方法であって、ここで供給された混合物がチョコレートリカーを含みかつ当該方法が混合物をコンチングすることをさらに含む前記の方法。

【請求項6】

 供給された混合物がミルクをさらに含む請求項1の方法。

【請求項7】

 ミルクが粉乳として供給される請求項6の方法。

【請求項8】

 微細化の段階がチョコレート相溶性油脂の融点以上で実施される請求項1の方法。

【請求項9】

 チョコレート相溶性油脂がテンパリング油脂である請求項1の方法。

【請求項10】

 当該方法が、重量で約0.3%以上のテンパリングシードの存在下でドウをテンパリングすることをさらに含む請求項9の方法。

【請求項11】

 チョコレート相溶性油脂が、ココアバター、ココアバター類似脂、ココアバター代替脂、ココアバター代用脂およびその混合物から成る群から選択される油脂を含む請求項1の方法。

【請求項12】

 菓子製品が、重量で約18%から約24%の範囲の油脂含量を有するように成形される請求項1の方法。

【請求項13】

菓子製品が、重量で約20%から約22%の範囲の油脂含量を有するように成形される請求項1の方法。

【請求項14】

 供給された混合物が、重量で約0.3%ないし2%の乳化剤をさらに含む請求項1の方法。

【請求項15】

菓子製品を製造する方法であって、チョコレート相溶性テンパリング油脂、ミルク、ココア固形分、砂糖および乳化剤を含む混合物を供給し;その後、チョコレート相溶性テンパリング油脂の融点以上の温度において、混合物を約15ないし約40ミクロンの平均粒径を有する粉末に微細化し;その後、チョコレート相溶性テンパリング油脂の融点以上の温度で、追加した添加乳化剤の存在下でドウを成形するために微細化された粉末混合物を撹拌し;重量で約0.3%以上のテンパリングシードの存在下でドウをテンパリングし;ドウを所定の形に成形し;その後、ドウを固化して配合した総油脂含量が重量で27%未満の菓子製品を成形することを含む前記方法。

【請求項16】

 チョコレート粉末が約25ないし30ミクロンの範囲の平均粒子径に微細化される請求項15の方法。

【請求項17】

菓子製品が、重量で24%未満の配合した総油脂含量を有するように成形される請求項15の方法。

【請求項18】

菓子製品が、重量で約20%ないし約22%の油脂含量を有するように成形される請求項15の方法。

【請求項19】

 チョコレート相溶性テンパリング油脂がココアバターを含む請求項15の方法。

【請求項20】

 請求項1の方法に従って成形される菓子製品。

 

訳者注1)

(発明の名称)

低脂肪チョコレート:原文ではreduced fat chocolateであるが、日本ではlow fat chocolatelow calorie chocolate)の方が通りが良い。通常のチョコレートの油脂含量は29%より高い。それより低いと、まず滑らかさが失われこと、また流動性がなくなり型に分注したりして成形できないために工業的生産ができないためである。本発明の目的は、この二つの課題を克服して油脂含量の低い低脂肪チョコレートを製造する方法を開示することである。

訳者注2) 

(【請求項1】)

チョコレート相溶性油脂:カカオ豆に含まれる油脂、ココアバターと混ぜて使用しても支障がなく、その結果、チョコレート製造に使用し得る油脂をいう。請求項11に記載の通り、ココアバター類似脂、ココアバター代替脂およびココアバター代用脂がある。前記の支障とは、ココアバターの脂肪酸組成、油脂構造、結晶多型との関係より、ブルーム(高温に曝されたチョコレートが、その後表面に生じる白い塊)が生じたりすることである。

甘味料:チョコレートでは通常、砂糖であるが、多価アルコール、フラクトオリゴ糖等も可能である。

平均粒径:チョコレート原料をロールで微粉砕すると、原料中の砂糖、カカオ豆由来のタンパク質、繊維質、乳固形物等は様々な大きさの微粒子となる。その平均をいう。電気抵抗法を利用するコールターカウンターと呼ばれる装置で測定する。

微細化:原料を三段ロール、五段ロール等のロールレファイナーの極めて狭い隙間に通すことで微粉化することをいう。

ドウ:通常はビスケット、クラッカー等の焼き菓子の焼き上げる前の均一に原料を混合した塊状・シート状のものをいう。ここでは、チョコレート原料混合物を塊状にすることを意味する。

チョコレート相溶性油脂の融点以上の温度:油脂の全てが液状になる温度である。油脂の成分は一様ではなく(油脂は幾つかの分子構造(脂肪酸の種類と配置)が異なる油脂分から構成される)、その全ての油脂分を液状とすることを意味する。

配合した総油脂含量:最終製品に含まれる油脂含量をいう。チョコレートリカー由来のカカオバター、添加したカカオバター、乳製品由来の乳脂肪等の全ての油脂が含まれる。

成形:液状のチョコレート原液を固化して形作ること。型に入れて成形することを特に成型と称する。成形には成型以外に下記の通り、デポジッティングやエクストルージョン等がある。

訳者注3)

(【請求項2】)

微細化された後には油脂を添加していないことを示している。

訳者注4)

(【請求項4】)

回転成形:二つの合わせ型に原料を注入し型を回転させて成形する方法。

シーティング:ビスケットやクラッカーの生地のように展ばして成形する方法。

エクストルージョン:エクストルーダー(高圧による押し出し機)により成形する方法。

デポジッティング:ベルトの上に分注機にから絞り出して成形する方法。

ドロップロール:向かい合う二つのロールの窪地により成形する方法。

スタンピング(圧縮成形):圧力により型に押し込んで成形する方法。

冷凍コーン:冷却した型に注入し、上からピストンで押し付けて成形する方法。

パンニング:縦方向に設置した回転する鍋に入れて成形する方法。

訳者注5)

(【請求項5】)

チョコレートリカー:カカオマス(ココアマス)に同じ。カカオ豆から表皮と幼根を除去したカカオニブ(胚乳)を磨砕したものである。含まれるカカオバターの融点以上で液状であるため、リカーと呼ばれる。

コンチング:チョコレートの品質を決定づける最終・最重要工程である。チョコレート中の微細固形粒子の表面に油脂が行き渡り、悪臭が除去され、良質のカカオフレーバーが醸成される。大がかりのマシーンであるコンチェが必要である。

訳者注6)

(【請求項6】)

ミルク:牛乳であるが、それから派生した粉乳等の製品も含む。

訳者注7)

(【請求項7】)

粉乳:牛乳の水分を飛ばして固形分だけを粉末状としたもの。乳脂肪を除去した脱脂粉乳と乳脂肪を含む全脂粉乳、砂糖を添加した加糖脱脂/全脂粉乳がある。乾燥法には大きくわけて、ドラムドライと噴霧乾燥がある。

訳者注8)

(【請求項9】)

テンパリング油脂:油脂が融解した液体状態から冷却して固化・成形する際のテンパリングと呼ばれる独特の温度調整が必要とされる油脂をいう。この温度調整をせずに冷却・固化するとチョコレート独特の表面の艶がえられず、(成形直後・長期保存後に)ブルームと呼ばれる白色の塊が生じ、商品として成り立たなくなる。

訳者注9)

(【請求項10】)

テンパリングシード:テンパリングは微妙な温度操作が必要であるが、テンパリングして冷所で長期間保存したチョコレート(ないしココアバター)は安定な油脂結晶型となるために、これを微粉砕したものは微量で他の多量のチョコレート原液の安定結晶の種となり得る。この微粉砕物をシードという。

テンパリング:チョコレート原液を冷却して固化・成形する場合に、チョコレート原液中のカカオバター(+テンパリング油脂)を多量に安定結晶型とするために行う温度調整をいう。全油脂が溶融している高温(40℃前後)から一旦、過冷却して(28度前後)して種々の結晶型を生じさせ、次いで2~4℃昇温して安定な結晶型(β‘、IV型)だけを残す。テンパリングが優れているほど、表面の艶が良く、熱安定性もすぐれていて、ブルーム(環境の温度変化により脂肪分が白色となってチョコレート表面および内部に生じるチョコレート商品の欠陥)が生じ難い。

訳者注10)

(【請求項11】)

ココアバター:カカオ豆に含まれる油脂であり高価である。人間の体温で急激に融ける性質をもつ(ゆえに、口どけが良く感じられる)。カカオ豆を磨砕したカカオマス(チョコレートリカー)を高圧でプレス(搾油)して得られる。搾油した残りがココアケーキであり、それを微粉砕したものがココア(パウダー)である。

ココアバター類似脂:ココアバターを構成する成分である脂肪酸が類似している油脂である。イリッペ脂、シア脂、分画パーム油がある。

ココアバター代替脂:大豆油、綿実油、パーム油の分画・部分硬化油脂。

ココアバター代用脂:ラウリン脂の分画・部分硬化油脂。

訳者注11)

(【請求項15】)

ココア固形分:カカオ豆の油脂成分(カカオバター)を除いた固形成分をいう。具体的には、炭水化物(食物繊維が多い)、タンパク質が主成分である。微量栄養素としてポリフェノール、マグネシウム等がある。

乳化剤:水(親水性物質)と油脂(脂溶性物質)を微量で乳化(例;牛乳)させる物質。リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル等がある。

融点以上の温度において、混合物を約15ないし約40ミクロンの平均粒径を有する粉末に微細化:微細化は通常、ロールレファイナーを冷却して行うため、微細化された混合物は個体のフレーク状となる。本発明では、油脂の融点以上で微細化するためにフレーク状とはならず、個体と液体の中間の物性を有するドウ状態となり、成形することが可能となるらしい。

ミクロン1000分の1ミリ。百万分の1メートル。細菌の大きさは通常12×23ミクロン。


国際公開公報(特許) 06号

 

※コーヒー含有チョコレートの一般例

 

  明治

「コーヒービート

 薫るエスプレッソブレンド」

国際公開番号:WO 2013/029193

国際公開日 :2013年3月7日

出願人   :バリーカレボーアーゲー

発明の名称 :『カカオ組成物、その製法およびそれを含む製品』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

カカオまたはチョコレートおよびコーヒーフレーバーを実質的に有さない未焙煎のコーヒーを含む組成物。

【請求項2】

 コーヒー含量が組成物総重量の1ないし60重量%、例えば5ないし40重量%、例えば8、9または10重量%である請求項1記載の組成物。

【請求項3】

 コーヒーを含有するカカオ製品の製法であって、

(a)カカオ用の従来法の穏やかな処理条件下でカカオ豆を焙炒するステップ;

(b)焙炒カカオ豆を磨砕するステップ;

(c)未焙煎の生のコーヒー豆を磨砕するステップ;

(d)磨砕物(b)および(c)をコーヒー含有のカカオリカーに混合するステップ

を含む前記製法。

【請求項4】

 苦味が少なくかつ正味のコーヒーフレーバーを実質的に与えないことを特徴とするカカオを含む製品のための増量材としての未焙煎コーヒーの使用。

【請求項5】

 高いポリフェノール含量を特徴とするチョコレートの製造のための請求項4に記載のカカオ製品の使用。

【請求項6】

 穏やかなカカオ風味を有しかつコーヒーフレーバーが実質的に無いことを特徴とする、高いカカオ無脂固形分含量を有するコーヒー含有カカオ製品

 

訳者注1)

(【請求項1】)

カカオ:ここでは、チョコレート以外のカカオ豆由来の成分を含むものを意味する。例えば、ココアパウダー、カカオマス(カカオ豆磨砕物;カカオリカーともいう)等である。

実質的に:「ほぼ」の意味であるが不明瞭な記載とされる場合が多い。

未焙煎のコーヒー:焙煎していない生のコーヒー豆およびその成分を意味する。コーヒーのフレーバーは、コーヒー豆を約200℃で焙煎すると生じる。これと比較しカカオ豆の焙煎温度は約120ないし130℃と低く(参照;Fincke,H.”Handbuch der Kakaoerzeugnisse”,2.Auflage 1965)、日本では焙炒と称されている(英語ではどちらもroast)。なお、茶、ピーナッツも焙煎の用語を用いる。

訳者注2)

(【請求項2】)

重量%:重量で比較した割合。(当該物の重量)/(当該物が含まれる物の総重量)×100。

訳者注3)

(【請求項3】)

カカオ用の従来法の穏やかな処理条件下でカカオ豆を焙炒する:上記の通り約120ないし130℃での焙炒。

カカオリカー:現在は、上記の通りカカオマスというのが普通である。カカオ豆の皮、幼根を除去した胚乳部=カカオニブを磨砕したもの。含まれる油脂、カカオバターの融点以上では液状となるためにリカーと呼ばれることがある。これに、砂糖、乳等を添加し更に微粉砕し、コンチングしたものがチョコレート原液となる。

訳者注4)

(【請求項4】)

苦味:カカオの苦味には、カテキン、テオブロミン(メチルキサンチンの一種)、プロシアニジン(カテキンの重合体)があり、コーヒーの苦味にはカフェイン、クロロゲン酸分解物等がある。未焙煎のコーヒーはコーヒーフレーバーが無くカカオの苦味を抑制する。

訳者注5)

(【請求項5】)

高いポリフェノール含量を特徴とするチョコレート:カカオ中のカテキン、プロシアニジンはポリフェノールと総称される。この含量が高いチョコレートとは、カカオ無脂固形分(カカオマスから油脂を除去したもの)の含量が高いことを意味する。カカオ分の含量が高く、通常は苦すぎる配合のチョコレートでも未焙煎コーヒーを配合すると苦味が抑制されるために食べやすくなり、コーヒーフレーバーも無いために、カカオ風味を楽しみながらポリフェノールを多量に摂取することができるようになる。

訳者注6)

(【請求項6】)

高いカカオ無脂固形分含量を有するコーヒー含有カカオ製品:上記の訳者注5)ではチョコレートに限定しているが、ここではカカオ無脂固形分含量が高ければチョコレート以外の製品も権利範囲に含むことを主張している。

 

国際公開公報(特許) 05号

 

※低脂肪ポテトチップスの一般例

 

 フリトレー減油脂ポテトチップス

「LAY'S Kettle Cooked」

国際公開番号:WO 2012/170523

国際公開日 :2012年12月13日

出願人   :フリト‐レイ ノース アメリカ インコーポテイテッド

発明の名称 :『ポテトチップスの油含量を低減する方法』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 フライヤ中でのポテトチップの油の取り込みを低減する方法であって、

a)約320°F(約160℃)の初期温度を有する揚げ油本体未洗浄のポテトスライスを投入する工程と;

b)約3分ないし約5分以内に、約320°F(約160℃)の初期温度から約220°F(約104℃)ないし約260°F(約127℃)の低下温度まで、油の温度を低下させる工程と;

c)少なくともポテトスライスの近傍において、少なくとも3分の滞留時間の間、油の温度を約270°F(127℃)未満に維持する工程と;

d)前記のポテトスライスの温度を約230°F(110℃)ないし約400°F(204℃)に上昇させる工程;ならびに

e)重量で約30%未満の油含量を有する前記のポテトスライスを揚げる工程と

を含む前記の方法。

 ここで、前記の揚げ油フライヤ連続フライヤであり、かつ連続フライヤの端から端にわたって配置された複数の油の注入口と排出口を有し;

 ここで、前記の連続フライヤは前記の複数の油の注入口と排出口に連結された複数の熱交換油再循環経路を有し;

 ここで、前記の連続フライヤは、熱交換油再循環経路を制御するための複数の油温度監視制御ループを有し;ならびに

 ここで、前記の油温度監視制御ループは、以下の関係に従う複数の温度設定値を割りあてられている。

 y=Ax^5+Bx^4+Cx^3+Dx^2+Ex+F;

 ここで、各温度設定値であるyは、滞留時間xの関数であり;

 ここで、A、B、C、DおよびEは係数であり、ならびにFは定数であり;ならびに

ここで:

 係数AはE-11の桁を有する負数であり;

 係数BはE-07またはE-08の桁を有する正数であり;

 係数CはE-05の桁を有する負数であり;

 係数DはE-02またはE-03の桁を有する正数であり;

 係数Eは10の桁を有する負数であり;ならびに

 係数Fは100の桁を有する正数である。

【請求項2】

前記の揚げ油本体がバッチプロセスの不可欠な要素である請求項1の方法。

【請求項3】

前記の揚げ油本体が連続プロセスの不可欠な要素である請求項1の方法。

【請求項4】

前記のポテトチップがケトルスタイルのチップである請求項1の方法。

【請求項5】

前記のポテトチップが連続プロセスのポテトチップである請求項1の方法。

【請求項6】

 前記のポテトチップが重量で約20%ないし約23%の油含量を有する請求項1の方法。

【請求項7】

 前記のポテトチップが重量で約20%未満の油含量を有する請求項1の方法。

【請求項8】

 前記の工程b)の低下温度および前記の工程c)の滞留時間が、油含量をさらに変更するために自動的にかつリアルタイムで調節される請求項1の方法。

【請求項9】

 前記の工程b)の低下温度が240°F(116℃)ないし260°F(127℃)の範囲にある請求項1の方法。

【請求項10】

 前記の工程c)の滞留時間が約400秒である請求項1の方法。

【請求項11】

 定数Fが300ないし350の正数である請求項1の方法。

【請求項12】

 定数Fが200ないし325の正数である請求項1の方法。

 

訳者注1)

(【請求項1】)

フライヤ:油揚器、フライ鍋、揚げ鍋。油を貯えて加熱し、食材を揚げる(調理する)機械。連続式とバッチ式とがある。

油の取り込み:ポテトスライスが揚げ油でフライされてポテトチップになるまでに油を吸収することをいう。揚げ釜でバッチ式でフライした場合のポテトチップの油含量は約38%である。

揚げ油本体:貯えられ加熱された揚げ油の集まりをいう。

未洗浄のポテトスライス:薄切りにした後、洗っていない薄切りポテト。洗うとスライス表面のデンプンが流出しスライス同士が付着しやすくなり、均一に揚げることが困難となる。

約220°F(約104℃)ないし約260°F(約127℃)の低下温度:揚げ油の初期温度から33℃ないし56℃急激に低下させる。ケトルタイプ(揚げ釜で揚げるポテトチップスのタイプ)のバッチ式の揚げ温度に近似させるためである。バッチ式で揚げたポテトチップスは、風味・テクスチャーの面で高品質であるためにそれに似せるためである。

揚げ油の温度(ポテトチップスの温度)は下記の通りに調整される。

約320°F   →   約220~260°F   →   約230~400°F

        (45~110秒)      (300~500秒) 

経時的な揚げ油温度は次の図の下方のカーブのようになる(上方のカーブは釜揚げのバッチ式での温度変化である)。

少なくともポテトスライスの近傍において:揚げ油の全体が所期の温度になればよいが、少なくともポテトスライスの近くの油の温度だけは所期の温度にする必要があるという意味である。

滞留時間:ポテトスライスが揚げ油に浸漬されている時間をいう。

揚げ油フライヤ:上記のフライヤに同じ。

連続フライヤ:ポテトチップスが油の中を連続的に移動し、油で揚げられるフライヤである。ケトル式では、大量のポテトスライスを一度に大量の揚げ油に投入し、回分的に揚げる。連続式で作成されたポテトチップスは均一な組織を有するが、ケトル式で作成されたものは、ケトル式独特の風味、テクスチャーを有する。 

油の注入口と排出口:油の注入口と排出口を設けて、揚げ油温度を調整する。

熱交換油再循環経路:温度の低下した油を排出し、加熱した油(一部は冷却した油)を揚げ油本体に追加するための経路である。

油温度監視制御ループ:排出した温度の低下した揚げ油の温度を監視し、各温度設定値となるように蒸気等で加熱、または水で冷却して再度注入口から揚げ油本体に添加して温度を制御する。予測制御ソフトウェアパッケージ。

x^5、x^4、x^3、x^2:x、x、x、xを意味する。

E-11、E-07、E-08、E-05、E-02、E-03:10-11、10-7、10-8、10-5、10-2、10-3を意味する。

訳者注2)

(【請求項2】)

バッチプロセス:揚げ釜(鍋)の一定量の揚げ油に一定量のポテトスライスを投入してポテトチップスとなるまで揚げて、一度に揚げ油から回収する製法をいう。ポテトスライスを一定温度の揚げ油に投入し一定時間連続的にフライする連続式と異なり、スライス一個一個の揚げ度が異なるが、好ましい風味を生じ、一個のポテトチップスでも中央部と周辺部の揚げた後のテクスチャーが異なる等の特徴があり、全体として連続式よりも高品質のポテトチップスであると考えられている。

訳者注3)

(【請求項3】)

連続プロセス:一定温度の揚げ油に、一定量のポテトスライスを連続的に投入し、一定時間揚げ油に浸漬してフライした後に連続的に揚げ油から引き上げる製法である。組織は一定となりやすいが、バッチ式と異なりポテトチップスの風味で劣るといわれている。

訳者注4)

(【請求項4】)

ケトルスタイルのチップ:大量の揚げ油の入った揚げ釜中に一定量のポテトスライスを投入しバッチ式で製造したポテトチップをいう。連続式に比べてテクスチャーおよび風味が優れているといわれている。

訳者注5)

(【請求項5】)

連続プロセスのポテトチップ:連続プロセスで製造したポテトチップスをいう。

訳者注6)

(【請求項6】)

約20%ないし約23%の油含量:従来のバッチ式(ケトルスタイル)では約38%であるから、15~18%減油されたことになる。


 

国際公開公報(特許) 04号

 

※ココアの一般例

明治「コクがおいしいミルクココア」
明治「コクがおいしいミルクココア」
森永製菓「牛乳で飲むココア」
森永製菓「牛乳で飲むココア」
バンホーテン・ココア
バンホーテン・ココア

ハーシー・ココア
ハーシー・ココア
カーギル「ガーケンスココアパウダー」
カーギル「ガーケンスココアパウダー」

国際公開番号:WO 2012/095121

国際公開日 :2012年7月19日

出願人   :カーギル・インコーポレーテッド

発明の名称 :『ココアパウダー組成物』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

冷水分散性ココアパウダー組成物であって;

  脱脂ココアパウダー;及び

  重量で30ないし75%のバルキング糖

を含む前記組成物。

【請求項2】

 方法1に従って測定すると30秒未満の濡れ性を有することを特徴とする請求項1の組成物。

【請求項3】

 ココアパウダーが2ないし100ミクロン、好ましくは5ないし50ミクロン、より好ましくは5ないし20ミクロン、さらに好ましくは8ないし12ミクロンの平均粒子径を有することを特徴とする請求項1または請求項2の組成物。

【請求項4】

 脱脂ココアパウダーが重量で5%以下、好ましくは重量で2%以下、より好ましくは重量で1%以下のココアバター含量を有すること、さらに好ましくは脱脂ココアパウダーが実質的に無脂肪であり得ることを特徴とする前記請求項のいずれかの組成物。

【請求項5】

 重量で40ないし70%のバルキング糖を含むことを特徴とする前記請求項のいずれかの組成物。

【請求項6】

 バルキング糖がショ糖および/またはブドウ糖であることを特徴とする前記請求項の組成物。

【請求項7】

 乳化剤、好ましくはレシチンをさらに含むことを特徴とする前記請求項のいずれかの組成物。

【請求項8】

 脱脂ココアパウダーが親水剤により被覆されていないことを特徴とする前記請求項のいずれかの組成物。

【請求項9】

 分散性ココアパウダー組成物の生産方法であって:

 脱脂ココアパウダーおよび/または脱脂ココアケーキを重量で30ないし75%のバルキング糖と混合する段階を含む前記生産方法。

【請求項10】

 請求項1ないし8のいずれかの組成物、または請求項9の工程によって得られる組成物を含む飲料および/または食料品。

【請求項11】

 低いバルキング糖含量を有するココアパウダー組成物の分散性を増加させるための脱脂ココアパウダーの使用。


訳者注1)

(【請求項1】)

冷水分散性:ココアは、通常、水や冷たい牛乳よりも、お湯や温めた牛乳に溶け易い(分散し易い)。冷たい水や牛乳にも分散し易くしたココアを、冷水分散性のココアという。

ココアパウダー組成物:ココアパウダーは、酸味を除くためにカカオ豆をアルカリ処理し、ロースト(焙煎)して磨砕した後に、加熱して液状となったカカオ磨砕物(チョコレートリカーと呼ばれる)からカカオバター(カカオ豆に含まれる油脂)を圧搾して除去し、冷却して得られるココアケーキ(塊)を微粉砕したものである。元のカカオ豆には約50%程度の油脂が含まれるが、ココアパウダーには通常10~26%の油脂が含まれる。含量の差異は、圧搾する圧力、時間等で決定される。

バルキング糖:増量剤(増容剤)として使用される糖類。砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトデキストリン、ポリデキストリン、等。ココアパウダー単独(普通、純ココアと呼ばれる)よりも、このバルキング糖と一緒(ココア調製品)の方がココアパウダーは水、牛乳、お湯等に分散し易い。純ココアはお湯等に分散する前に、砂糖やミルクと十分に練る必要がある。

訳者注2)

(【請求項2】)

方法1:ビーカーに入れた7℃の脱脂乳150mlの表面にココアパウダー15gを穏やかに注ぎ、パウダーが完全に表面下に沈むまでの時間を測定する濡れ性試験方法である。

30秒未満の濡れ性:上記の方法1でココアパウダーが完全に脱脂乳の表面化に沈むまでの時間が30秒未満である濡れ性である。

訳者注3)

(【請求項3】)

8ないし12ミクロン:千分の8ミリないし12ミリメートル。

訳者注4)

(【請求項4】)

ココアバター含量:生のカカオ豆では、一個一個のカカオ豆細胞が重量で約50%の油脂(カカオバター)を有している。ロースト(焙煎)によって細胞壁が破壊され油脂は細胞外にも分布するようになり圧搾により油脂が取り出される。ココアのココアバター含量は10~26%であるが、10%未満とするのがこの発明の特徴である。

実質的に無脂肪:ほとんど脂肪(油脂)が含まれないことを意味する。

訳者注5)

(【請求項6】)

ショ糖および/またはブドウ糖:砂糖またはブドウ糖(蜂蜜に多く含まれる単糖類)。 

訳者注6)

(【請求項7】)

乳化剤、好ましくはレシチン:水と油を乳化させるのが乳化剤である。レシチンは大豆などから取れる天然の乳化剤。ココア、チョコレートの乳化には(抜群の効力を有するので)伝統的にレシチンが使用されている。

訳者注7)

(【請求項8】)

親水剤により被覆されていない:ここで言う親水剤とは、乳化剤を除く脂肪酸エステルやポリオール(多価アルコール)を示す、濡れ性改善剤である。親水剤を使用する冷水分散性ココアの日本の会社の特許があるために、それとは別であることを主張している。

訳者注8)

(【請求項9】)

分散性ココアパウダー組成物:ココアパウダー+バルキング糖+乳化剤+その他原料。

脱脂ココアケーキ:ココアパウダーに微粉砕する前のココアケーキで、しかも通常ココアケーキよりも余計に圧搾して油脂含量が10%未満となっているココアケーキ。

訳者注9)

(【請求項11】)

低いバルキング糖含量を有するココアパウダー組成物:カーギルの(ブランド名、「ガーケンス」))従来品は、バルキング糖含量が80%である(特許明細書の記載より)。本発明では、30~75%まで含量を低くする。

 

 

国際公開公報(特許) 03号


※キャドバリーチョコの一般例

キャドバリー「デイリーミルク」
キャドバリー「デイリーミルク」

国際公開番号:WO 2012/146920

国際公開日 :2012年11月1日

出願人   :キャドバリーユーケーリミテッド(CADBURY UK LIMITED

発明の名称 :『耐熱性チョコレート』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 チョコレート製品を製造するための工程であって、

 (a)コンチングしていないチョコレート原料を供給すること;及び

 (b)チョコレート製品を形成するために、前記のコンチングしていないチョコレート原料をコンチングしたチョコレートと混合し、ここでコンチングしたチョコレートをコンチングしていないチョコレート原料とコンチングしたチョコレート混合物の50%未満(w/w)で添加すること;並びに

前記チョコレート製品を任意に成型することを含む前記の工程。

【請求項2】

 請求項1に記載のチョコレート製品を製造するための工程であって、

 (a)コンチングしていないチョコレート原料を供給すること;

 (b)前記コンチングしていない原料を微粉砕すること;及び

 (c)チョコレート製品を形成するために、前記のコンチングしていないチョコレート原料をコンチングしたチョコレートと混合し、ここでコンチングしたチョコレートをコンチングしていないチョコレート原料とコンチングしたチョコレート混合物の50%未満(w/w)で添加すること;並びに

前記チョコレート製品を任意に成型することを含む前記の工程。

【請求項3】

 請求項1又は請求項2に記載の工程であって、

 (a)以下の段階を含む工程によってコンチングしていないペーストを調製すること、

   (i) 出発原料を供給する段階;

   (ii 前記出発原料を油脂によってペーストを形成する段階;

   (iii)前記ペーストを微粉砕する段階;

 (b)チョコレート製品を形成するために、前記のコンチングしていないペーストをコンチングしたチョコレートと混合し、ここでコンチングしたチョコレートがコンチングしていないチョコレート原料とコンチングしたチョコレート混合物の50%未満(w/w)で添加すること;並びに

前記チョコレート製品を任意に成型することを含む前記の工程。

【請求項4】

 チョコレート製品を微粉砕することをさらに含む請求項1ないし3のいずれかに記載の工程。

【請求項5】

チョコレート製品を製造するための工程であって、

 (a)以下の段階を含む工程によってコンチングしていないペーストを調製すること、

   (i 出発原料、例えばチョコレートクラムを供給する段階;

   (ii)前記出発原料を油脂によってペーストを形成する段階;

   (iii)前記ペーストを、例えば約80μM未満の粒子径に微粉砕する段階;

 (b)チョコレート製品を形成するために、前記のコンチングしていないペーストをコンチングしたチョコレートと混合すること、

  (c) 前記チョコレート製品を微粉砕すること;並びに

前記チョコレート製品を任意に成形することを含む前記の工程。

【請求項6】

 出発原料がチョコレートクラムを含む請求項3ないし5のいずれかに記載の工程。

【請求項7】

 糖の50%未満(w/w)が非晶質形(アモルファス形)である請求項1ないし6のいずれかに記載の工程。

【請求項8】

 糖が主としてショ糖の結晶を含む請求項7に記載の工程。

【請求項9】

 糖がショ糖と乳糖の混合物を含む請求項7に記載の工程であって、ここでショ糖が主として結晶状であり乳糖が主として非晶質(アモルファス)である前記工程。

【請求項10】

 コンチングしたチョコレートがチョコレート原料及びコンチングしたチョコレート混合物の約20%ないし約30%(w/w)の範囲で添加される前記請求項のいずれかに記載の工程。

【請求項11】

 油脂がココアバター、バターファット、ココアバター代用脂、ココアバター代替脂、植物性油脂、完全非代謝型油脂又はこれらの任意の組み合せから選択される前記請求項のいずれかに記載の工程。

【請求項12】

 チョコレート製品の油脂含量が少なくとも約22%である前記請求項のいずれかに記載の工程。

【請求項13】

 チョコレート製品の油脂含量が約25%ないし約35%の範囲にある請求項12に記載の工程。

【請求項14】

 前記請求項のいずれかに記載の工程によって得られるチョコレート製品。

【請求項15】

 コンチングしていないチョコレート原料とコンチングしたチョコレートの混合物を含むチョコレート製品であって、ここでコンチングしたチョコレートがチョコレート製品の50%未満(w/w)である前記チョコレート製品。

【請求項16】

 コンチングしたチョコレートがチョコレート製品の約20%ないし約30%(w/w)の範囲に存在する請求項15に記載のチョコレート製品。

【請求項17】

 油脂含量が少なくとも22%である請求項15ないし16のいずれかに記載のチョコレート製品。

【請求項18】

 油脂含量が約25%ないし35%(w/w)の範囲にある請求項17に記載のチョコレート製品。

【請求項19】

 平均粒子径が80μm未満である請求項15ないし18のいずれかに記載のチョコレート製品。

【請求項20】

 物性測定法texture tolerance method)を用いて測定したときにチョコレート製品が40℃で200gより大きい硬度を有する請求項15ないし19のいずれかに記載のチョコレート製品。

【請求項21】

 物性測定法を用いて測定したときにチョコレート製品が40℃で1000gより大きい硬度を有する請求項20に記載のチョコレート製品。

 

 

  キャドバリー耐熱チョコに関する記事が記載されたサイト

http://www.anlyznews.com/2012/12/403.html

 

訳者注1)

(【請求項1】)

コンチング:チョコレートの品質を決定する重要な工程。①原料中の粒子を微粒化しその周囲に油脂を被覆し、②水分を除去し、③揮発性成分や好ましくないフレーバーを取り除き良好なフレーバーを熟成する。コンチェと呼ばれるコンチングマシーンで加温しつつ磨砕するが、半日ないし3日間を要する大規模な工程である。

チョコレート原料:主原料は、ココアマス(カカオ豆の磨砕物)、砂糖、油脂、乳である。

コンチングしていないチョコレート原料:レファイナーによる破砕(微粒子化)は終了しているが、当然、好ましくないフレーバーが抜けていない。

コンチングしたチョコレート:十分な滑らかさとフレーバーを有する。

w/w:重量で比較した比率である。 

成型する:加温して融解している液状のチョコレートを型に分注して冷却し、板チョコ、粒チョコ等に成形することを意味する。

訳者注2)

(【請求項2】)

微粉砕する:コンチングする前に、混合した原料をレファイナーロール(精砕ロール)で20~30ミクロンに微粉砕する。この微粉砕でチョコレートの滑らかさのほとんどが決まる。

訳者注3)

(【請求項3】)

コンチングしてないペースト:上記のコンチングしていない固体状(フレーク状)のチョコレート原料に油脂を添加してペースト化したもの。

出発原料:上記のチョコレート原料のことである。具体的には、チョコレートクラム、ココアマス、砂糖、練乳、粉乳、ココアバター、ココアバター代用脂、糖アルコール、などがある。

訳者注4)

(【請求項4】)

チョコレート製品を微粉砕する:コンチングしていないものとコンチングしたものの混合物を微粉砕するので、微粉砕を2度行うことになる。この発明のキーポイントである。

訳者注5)

(【請求項5】)

チョコレートクラム:ココアマス(カカオ豆磨砕物)、砂糖、乳を混合し乾燥したもので、日持ちがよい。乳は牛乳、練乳、粉乳などが使用される。独特の香りを有し、キャドバリー「デイリーミルク」の独特の味を形成しているといわれる。

約80μM未満の粒子径に微粉砕:コンチングしていないチョコレート原料(請求項5ではチョコレートクラム)をレファイナーロール(精砕機ロール)で微粉砕し、原料中のカカオ豆由来の固形粒子(炭水化物、タンパク質など)、砂糖粒子などを80μM(ミクロン、千分の一ミリメートル)未満の微粒子とすることを意味する。

訳者注6)

(【請求項7】)

非晶質形(アモルファス形):結晶していない固体であり、菓子のドロップ、キャンディやガラス、ゴムなどがある。コーヒーに用いるグラニュー糖、氷砂糖は、結晶型の砂糖である。非晶質のドロップが吸湿すると砂糖が結晶化してザラザラする。

訳者注7)

(【請求項8】)

ショ糖の結晶:ショ糖とは砂糖のことで、砂糖が結晶状であることを意味する。通常の砂糖は結晶である。例、グラニュー糖、氷砂糖。

訳者注8)

(【請求項9】)

乳糖:牛乳(哺乳類の乳)に含まれている、単糖類のガラクトースとグルコース(ブドウ糖)が結合した二糖類である。同じ二糖類である砂糖(こちらはブドウ糖と果糖が結合)よりも甘味が少ない。牛乳を飲んで下痢する人は、乳糖不耐症であり乳糖を分解する能力が低い人である。

訳者注9)

(【請求項11】)

ココアバター、バターファット、ココアバター代用脂、ココアバター代替脂、植物性油脂、完全非代謝型油脂

ココアバターはカカオ豆に含まれる油脂であり、体温近くで急激に融解する(融ける)という他の油脂にはない特質を持っていて、チョコレート製造に必須の成分である。

ココア製造の際に副産物として得られるが、当然高価であり代用品として代用脂、代替脂が使用される場合があるが、ココアバターだけを使用したチョコレートが高級品である。

ココアバター代用脂とは、イリッペ脂、ボルネオタローなどココアバターと似た構成成分(脂肪酸組成)を有する油脂から非化学的な処理によって得られる油脂であり、ココアバターとどんな割合でも混合することができる。

ヨーロッパの規約では、代用脂を油脂全体の5%以上使用するとチョコレートと呼べなくなる。代替脂より高級。

ココアバター代替脂とは、パーム核油、綿実油などから化学的処理によって得られる油脂である。代用脂より低級。

バターファットとは、牛乳の脂肪分でバターの主成分。乳脂肪。

植物油脂の例は、コーンオイル、綿実油、パームオイルなどである。

完全非代謝型油脂とは、体内で代謝されない油脂であり、カプレニン(Caprenin)がある。

訳者注10)

(【請求項19】)

平均粒子径が80μm未満:砂糖、タンパク質などの粒子の平均直径が80ミクロン未満である事を意味する。粒子径が小さくなるほど同重量で比べれば粒子の表面積が増えるため、一定量以下の油脂量では粒子の全ての表面を覆えなくなる。これも本発明のキーポイントである。

訳者注11)

(【請求項20】)

物性測定法:物の固さ、粘着性を測定する方法で、テクスチャーアナライザーにより物の上方から探針(プローベ)を一定の速度で物の中に侵入させて硬度を測定する。値が大きいほど物は硬い(チョコレートが融けていない)。

 

 

国際公開公報(特許) 02号


※チョコレートコーティングアイスの一般例

森永製菓「ダース〈ミルク〉アイスバー」
森永製菓「ダース〈ミルク〉アイスバー」
森永乳業「PARM(パルム)」
森永乳業「PARM(パルム)」

国際公開番号:WO 2011/138153

国際公開日 :2011年10月10日

出願人   :ネステックS.A.(ネスレの開発部門)

発明の名称 :『含気被覆物で被覆された冷菓』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 チョコレート被覆物により完全に被覆された菓子センターを含む複合冷菓製品であって、被覆物が0.13と1.29g/cmの間、好ましくは0.13と0.65g/cmの間の密度を有する含気チョコレート組成物からなる前記複合冷菓製品。

【請求項2】

 被覆物が3と20mmの間、好ましくは4と10mmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の複合冷菓。

【請求項3】

 1と20ml、好ましくは2と10mlの間の体積を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合冷菓。

【請求項4】

 含気チョコレート被覆物を完全に囲んでいる第二の非含気被覆物をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合冷菓。

【請求項5】

 冷菓菓子センターがアイスクリーム、メロライン(イミテーションアイスクリーム)、フローズンヨーグルト、フローズンムース、フローズンファッジ、フローズンカスタード、シャーベット及びフルーツ・シャーベットから選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合冷菓。

【請求項6】

 アイス菓子センターが20と100%の間のオーバーランを有することを特徴とする請求項5に記載の複合冷菓。

【請求項7】

 チョコレート被覆物が30と37℃の間の融点を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の複合冷菓。

【請求項8】

 チョコレート被覆物が重量で25%から40%の油脂、重量で20%から55%の甘味料、重量で0.3%から1%の乳化剤を含み並びに乳成分を含まないことを特徴とする請求項7に記載の複合冷菓。

【請求項9】

 チョコレート被覆物が重量で12%から25%の乳成分、重量で26%から38%の油脂、重量で34%から50%の甘味料及び重量で0.3%から1%の乳化剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の複合冷菓。

【請求項10】

チョコレート被覆物が重量で14%から33%の乳成分、重量で29%から40%の油脂、重量で37%から50%の甘味料及び重量で0.3%から1%の乳化剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の複合冷菓。

【請求項11】

 冷菓を完全に被覆するための含気チョコレート組成物の使用。

【請求項12】

 下記の段階を含む、請求項1に規定する複合冷菓を製造するための方法。

  a.0から33%の乳成分、25から40%の油脂及び20から55%の甘味料を含むチョコレート混合物を調製し、次に融解混合物を供給するために原料を加熱する段階;

  b.0.13から1.29g/cmの密度を提供するために融解混合物を含気させる段階;

  c.含気チョコレート混合物によって冷凍冷菓混合物を被覆する段階。

【請求項13】

 含気が加圧含気工程によるガスの使用により達成され並びに0.8から1g/cmの密度を有するチョコレート混合物を提供する請求項12に記載の方法。

【請求項14】

 含気が液状泡の減圧膨張によって生じ並びに0.26から0.65g/cmの密度を有するチョコレート混合物を提供する請求項12に記載の方法。

【請求項15】

 第二の非含気被覆物の塗布を含む請求項11から14のいずれかに記載の方法。

 

 

訳者注1)

(【請求項1】)

チョコレート被覆物:中にある菓子(例えばケーキ)を覆っている薄いチョコレートの層をいう。一般的にはチョコレート・コーチングと呼ばれる。

菓子センター:被覆物に覆われている芯となる菓子をいう。

複合冷凍菓子製品:単一のアイスクリーム、アイスキャンディではなく他の菓子と組み合された冷菓。ここでは、冷菓と含気チョコレート被覆物、第二の被覆物との組合せ。

0.13と0.65g/cmの間の密度:気体を含まない通常のチョコレートの比重は約1.2g/cmであるので、含気チョコレートは同体積の通常のチョコレートに比べると約1/9~約1/2の重量である(約9倍~約2倍軽い)。

訳者注2)

(【請求項2】)

被覆物が3と20mmの間、好ましくは4と10mmの厚さ:含気チョコレートの被覆物であるためにかなり厚い。通常のチョコレート被覆物では2mm以下と思われる。

訳者注3)

【請求項4】

第二の非含気被覆物をさらに含む:例えば、含気チョコレート被覆物の上をさらに通常のチョコレートで覆うことを意味する。

訳者注4)

【請求項6】

20と100%の間のオーバーラン:空気を含ませる前の体積に対する、空気を含ませた後の体積の増量割合。オーバーランが20%とは元の体積の1.2倍、100%とは元の体積の2倍になったことを意味する。アイスの製造の際に良く使われる指標。オーバーランが大きいほど軽く柔らかいアイスになる。 

訳者注5)

【請求項7】

チョコレート被覆物が30と37℃の間の融点:室温では柔らかくならず、体温で急速に融ける(口どけの良い)ほど良質のチョコレートである。32~35℃で急激に口どけするチョコレートが最良品である。

訳者注6)

【請求項8】

0.3%から1%の乳化剤:含気させるために乳化剤の量が多い。通常は約0.03%である。

訳者注6)

【請求項9~12】

典型的なチョコレートの主要成分は、約45%の砂糖、約40%のカカオニブ(カカオ豆の粉砕物)、約13%のカカオバターである。

訳者注7)

【請求項13】

含気が加圧含気工程によるガスの使用:加圧した気体を使用してチョコレートに含気させることを意味している。

訳者注8)

【請求項14】

含気が液状泡の減圧膨張によって生じ:加熱して液状となっているチョコレートに気体を含ませて泡状にした後に、物理的に軽い真空状態にして泡の中の気体を膨張させることを言っている。

訳者注9)

【請求項15】

第二の非含気被覆物の塗布:例えば、含気チョコレート被覆物の上に、さらに含気させた物(含気チョコに限定されない)を塗布する(被覆も含み、それよりも範囲が広い)ことを意味する。

 

 

国際公開公報(特許) 01号


※エアインチョコの一般例

グリコ「カプリコ」
グリコ「カプリコ」
ロッテ「エアーズ」
ロッテ「エアーズ」
ロッテ「デイリー」
ロッテ「デイリー」

国際公開番号:WO 2012/041631

国際公開日 :2012年4月5日

出願人   :ユニリーバ

発明の名称 :『含気チョコレート組成物及びその調製法』

【特許請求の範囲】

【請求項1】

 40%と200%の間、好ましくは100%未満のオーバーランを有する含気チョコレート組成物であって、気泡の面積累積度数分布の80%が100μm未満、好ましくは90μm未満、より好ましくは80μm未満である前記組成物。

【請求項2】

 前記の面積累積度数分布の95%が125μm未満、好ましくは100μm未満である請求項1に記載の含気チョコレート組成物。

【請求項3】

 前記の面積累積度数分布の99%が150μm未満である請求項1又は2に記載の含気チョコレート組成物

【請求項4】

 請求項1、2又は3に記載の含気チョコレート組成物であって、前記の含気チョコレート組成物が1~10%、より好ましくは1~5% w/wの、1ないし9のHLB値を有する少なくとも1のショ糖エステルを含む前記組成物。

【請求項5】

 前記のHLB値が1より大である請求項4に記載の含気チョコレート組成物。

【請求項6】

 前記のHLB値が3と8の間である請求項4に記載の含気チョコレート組成物。

【請求項7】

 以下の工程を含む前記請求項のいずれかに記載の含気チョコレート組成物の製造工程:

 a.少なくとも1のショ糖エステルの融解温度と、少なくとも1のショ糖エステルの融解温度より30℃、好ましくは20℃、より好ましくは15℃、最も好ましくは10℃高い温度との間の温度で融解している少なくとも1のショ糖エステルを含有するチョコレート組成物を供給する工程;次に、

 b.含気チョコレート組成物を生産するために、40℃と少なくとも1のショ糖エステルの融解温度より30℃、好ましくは20℃、より好ましくは15℃、最も好ましくは10℃高い温度の間で、前記チョコレート組成物に所期のオーバーランまで機械的に含気する工程;その後

 c.任意の方法で前記の含気チョコレート組成物を冷却する工程

 

訳者注1)

(【請求項1】)

オーバーラン:空気を含ませる前の体積に対する、空気を含ませた後の体積の増量割合。オーバーランが100%とは、元の体積の2倍になったことを意味する。200%は3倍、40%は1.4倍となる。アイスの製造の際に良く使われる指標。オーバーランが大きいほど軽く柔らかいアイスになる。 

 

含気チョコレート:通常のチョコレートに空気等、気体を細かな気泡として含ませたチョコレート。口当たりが滑らかで食感が軽い特徴を持つ。エアインチョコとも言う。

 

面積累積度数分布の80%:チョコレート中の気泡を、直径の小さなものから累積していったとき、全体の気泡の80%が含まれる気泡を意味する。

 

μm:ミクロン、マイクロメーター。千分の一ミリ。百万分の一メートル。

 

訳者注2)

(【請求項4】)

w/w:重量割合で比較した%。 

 

HLB値:乳化剤が油と水のどちらに親和性があるか(溶けやすいか)をあらわす数値。完全に親油性の0~完全に親水性の20まである。               

 

ショ糖エステル:乳化剤(油と水を牛乳のような乳化液にする物質)の一種。砂糖分子と脂肪酸分子が結合している。

 

訳者注3)

(【請求項7】)

融解温度:融点。その化合物が融ける温度。氷の融点は0℃。