98字日記ーひとりのときに

文章を書く鍛錬として書きはじめました。

「98字」は自分への課題のひとつです。

バイオリニストが演奏前に調弦するA(アー)の音のように、

正確に、短く、つづく音楽が気持ちよく響くことを願って

6月16日(水)
梅雨のようでいい気持ち。きらきら輝いていて眩しかったり、じめじめ濡れていて侘しかったりせず、薄いグレイに包まれるのは少し寂しく心に沿う。そうか、やっぱり、私に似合うのは曇り。さあ、お茶を飲もう。

6月15日(火)
食べることは大好きだけれど、テレビ番組や雑誌記事の食テーマがあまりに多いことに辟易する。食べ歩き、料理、爆食・・一日の食事がままならない人たちが数多くいる現実と、どう折り合えるというのだろう。

6月14日(月)
誰の弾くチェロだったのか調べれば分かることだけれど、今朝の目覚めはシベリウス「交響曲第二番」3楽章くらい。次のピアソラ「ルグランデ」が気持ちよくて、ふわっと眠り込み、最後の部分でイマーシヴに!

6月13日(日)
小説の中で茅葺きの描写くらいしか茅を目にすることはない。豊葦原の瑞穂のくにに初めて根付いた草なれど。でも乙川作品の『喜知次』では「茅花のころ」の章があり、土手が茅で埋まり白い茅花が静かにそよぐ。

6月12日(土)
夢の中で子どもだった。珍しいというか多分初めて。まだ吉祥寺の家の庭が広くて木が沢山あり、私は三和土で鞠をついていた。マリ・・欲しかったのになぜか買ってもらえなかった。ゴムかスポンジだった。

6月11日(金)
早朝に「グレートトラバース日本三百名山」をTVでみる。田中陽希が自分のプランで一人でとにかく歩く。車など一切使わない。それをカメラマンが追う。世界に名だたるアルピニスト駒井研二、それに平出和也。

6月10日(木)
共有するものがあって会う。その時間は短くても、ほっとする。会わなくても郵便やメールで補ってつながりを保つ。翻訳そのものは孤独な作業ではあるけれど、共有する人たちがいる温かさを大事にしたいと思う。

6月9日(水)
外語大出版会が出した『28言語で読む「星の王子さま」』は28章それぞれに異なる言語を当てたアイデアが秀逸。でも言語学入門とサブタイトルにあるように、いわゆる教科書。ジョージア語がないことが残念で・・・

6月8日(火)
翻訳の課題とする文章を選ぶのに一日、悩む。小説、随筆、紀行文、新聞記事、児童書など幅広くさまざまな文体に触れてほしいし、文を通じて数々の筆者に出会ってほしい。なるべくワクワクと楽しく、となると。

6月7日(月)
ぼんやりと見ていたTVで「世間的に20から40代で美術館に行ったことのある人は何%?」という質問に対して答えは74%で、まあ、妥当な数字でしょう。そこにいたタレント達の答えは25%だった。残念ながら。

6月6日(日)
小雨が降ったり止んだり、静かな一日。日差しが強いと眩しく感じるのは手術の前に戻ってきているのかしら。もっとも辞書よりもっと細かい字も、まだ眼鏡を必要とはしない。それはとても便利だと感謝しつつ。

6月5日(土)
山海塾『ARC 薄明・薄暮』を世田谷パブリックシアターで。1時間15分の短い公演にMと。天児牛大は踊らず。だからか、あの張りつめた空気はなく、かわりに懐かしさがあった。それでも生で見られる舞台は貴重。

6月4日(金)
なにか出来事を把握・理解するとき、自分の基準となるのはまず1938年、1945年、1962年、それから1972年、1998年、2013年。とくに本の発行年度や映画の公開年度については、それに2018年が加わった。

6月3日(木)
羽を広げると2メートルはある黒い鳥ミナミジサイチョウが一羽、最近、千葉県のあちこちで見かけられるそうだ。南アフリカ産で絶滅危惧種になっている。茨城県から1年半前に逃げて野生化しているという話もある。

6月2日(水)
大坂なおみ選手が全仏オープン試合後の記者会見をボイコット、そして試合棄権宣言。大きな話題となるだろうけれど、その気持ちはわかる気がする。要はアスリートとして受け止められたかったのだと思う。

6月1日(火)
「ひとつの描写、ひとつの表現に数十通りの和訳を用意しながら、どれひとつ嵌まらないことがある。変貌自在な日本語が英語に負けることなど考えられないが、作家によって絞り出された英文も魔物なのであった。・・・どうしても思いつかなかった言葉がどこからかやってきて、重たい瞼の上に降りる・・・」(乙川優三郎『ロゴスの市』から抜粋)