98字日記ーひとりのときに

文章を書く鍛錬として書きはじめました。

「98字」は自分への課題のひとつです。

バイオリニストが演奏前に調弦するA(アー)の音のように、

正確に、短く、つづく音楽が気持ちよく響くことを願って

11月19日(月)
多和田葉子+高瀬アキ『ジョン刑事の実験録』は、もちろんジョン・ケージをもじったもので他にも「昼にもする/ヒエロニムス」など言葉の変化とリズムが面白かった。文学者の立体的な行動に拍手。シアターXで。

11月18日(日)
デュシャンが東博らしくないから日本美術を付けたような「マルセル・デュシャンと日本美術」展。デュシャンを総体的に見られた。ハンサムだったのね。東博の庭は古い樹々が美しく、いつもベンチで暫く休む。

11月17日(土)
「『ニルスのふしぎな旅』と日本人」
ーー茨城大学教授・村山朝子さんから書き下ろしを贈っていただく。セルマ・ラーゲルレーヴのこの名作が日本でどう受け止められてきたか地理教育者の検証が光る。嬉しい。

11月16日(金)
早朝、フィリス・バーンバウムからメールで写真が届いた。「NYの2nd Avenue の店でマーガレットのお祝い中!」とあり、驚きは前に並んだサンドイッチに挟まれたパストラミの分厚さ。10センチはありそう。

11月15日(木)
全米図書賞に何十年ぶりかで今年、翻訳文学部門が設立され、トップに選ばれたのは多和田葉子『献灯使』で訳者はもちろん満谷マーガレットさん。やったね!!来週会って The Emissary をもらう約束。やったね!

11月14日(水)
至福の駅ピアノは未だ隙間番組らしく今朝も偶然みた。ロサンゼルスは初めてでユニオン駅。一人の青年が澄明な音で「鳥の歌」を弾いた。フィリッピン人の祖母からピアノを習い、この楽譜が遺産だったという。

11月13日(火)
マーク・ハッドン『夜中に犬に起った奇妙な事件』(邦訳)を読み直す。英国で最高に評価された作品が日本で同じ結果にならなかったのは、15歳の少年が主人公の作品を大人がどう受け止めるかの違いにありそう。

11月12日(月)
早朝から何本の短編を読んだことか。初めてのが多いがクリスマスにちなむ何本かは何年か読み返している。ある年突然これにしようと思うから。去年のファニー・フラッグのような未訳のいいものはあまりない。

11月11日(日)

走る、というシンプルな形に美しさと速さと気持ちがこめられることに感動。新谷仁美が今年4年ぶりに復帰して今日、東日本女子駅伝で魅せてくれた。6位だった東京をアンカーで受けて優勝させ区間新。ドキドキした。

11月10日(土)
まずは明日終わってしまう「横山華山展」を東京ステーションGで。江戸時代の絵師が描いたそのままを、眼を近づけて眺められる奇跡のような刻。30米に及ぶ『祇園祭礼図巻』の細かい描写を、人々の姿を楽しむ。

11月9日(金)
天気の悪さ100%の予報に家で風邪脱却仕上げをはかり、TVで1962年公開の米映画『何がジェーンに起ったか』をみる。ジョン・クロフォードとベティ・デイヴィスという往年の二大女優の競演も興味深かった。

11月8日(木)
バス停で私の前がインド人の三人家族だった。母親と娘のサリーの繊細な美しさにはいつも目を見張る。父親の上着は厚手絹の濃赤の地に細かい黒の横線が飛んでいて、袖と前面に赤い撚り糸の縦線の刺繍。豪華。

11月7日(水)
風邪が抜けたと感じた途端に夜更かししたくなる。したいことが山積しているので、まずは好きな椅子に斜めに寛いでぼーっとしている。そしてあれもしたい、これもしようと考える。そのうちに眠くなってしまう。

11月6日(火)
「初出の this 」が文章の中に急に出てくると、長年翻訳を楽しんでいる人でも気づかないことがある。訳は文脈によるが主格で this woman とあったら「ひとりの女が」もいい。AI機械にその判断はできないと思う。

11月5日(月)
アメリカを目指す「移民キャラバン」はホンジュラス、エルサルバドルなどの人々で1万人近い列をなしているという。トランプ米大統領は阻止を叫んでいるけれど、かつてのヨーロッパからの移民はよかったのかな。

11月4日(日)
今朝の天人の話題の主は那須どうぶつ王国のハシビロコウ、我が部屋のあちこちに潜ませている愛鳥だった。雌の名前カシシは打楽器の名前だと偶然今朝の歌壇で分かった。雄を怖がっているカシシ、無理せずにね。

11月3日(土)
咳を抑えて横浜の土曜クラスに行くことだけを考えていて、今日が祝日だと気付かず(毎年ながら文化の日が勲章の日っていやだなあと新聞を見て思ったのに)、バス停で時間のあてが外れてオロオロ茫然とした。

11月2日(金)
すっきりしない体調で読み返す本などが不思議なつながりをもって融け合った。石川直樹『最後の冒険家』、イーユン・リー『千年の祈り』、TVでヴィム・ヴェンダース監督の映画『アランフェスの麗しき日々』。

11月1日(木)
「わたしのように老いた者が、いつまでも思い出にふけっているのはよくない。一人前の男なら、いまに生きなくては。マダムという大切な友が隣にいる、この瞬間に。きれいに金色に染まった銀杏の葉を、マダムが陽の光にかざして見せる。」(イーユン・リー『千年の祈り』篠崎ゆりこ訳から)