シリーズ翻訳断章

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翻訳は自分では使うことのない言葉を次々と駆使することであり、それが翻訳の楽しみの一面だし、辛苦のもとでもある。自分の語彙がもっと豊かだったら、と願わない翻訳者はいないと思う。辞書にある言葉だけでは表現するのに到底間に合わない。基本的には、日常的にできるだけ沢山の言葉と出会うこと。それにつきる。どこで?

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英文中に決まり文句らしい熟語が出てきたら、そのうちの一語を辞書で引き、成句を調べると意味にたどり着く。決まり文句には決まった訳がぴったり合うことが多い。おとぎ話の最初の決まり文句は "Once upon a time there was ・・・" で「昔むかしあるところに・・」だし、最後は "And they lived happily ever after." (「二人はその後ずっと幸せに暮らしました」とか「めでたしめでたし」。)

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名詞で慣れている単語が動詞で使われる時、文脈に合った日本語にするにはセンスがいる。たとえば fashion (流行、服装)という単語。ディズニー映画『白雪姫』で、白雪姫が毒林檎を食べて目覚めなかった時、7人の小人たちは "fashioned a coffin of glass and gold."  またある絵本にあった次の文。"He fashioned the leather harnesses for the oxen, each one different and perfectly fitted." いずれも心を込めて作ったことを表している。

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1960年代に海外美術展が日本で頻繁に開かれるようになりキュレイター(curator)という言葉も入ってきた。初めは「学芸員」と訳された。そのうち美術館長も時にキュレイターと呼ばれると分かり、最近ではそのままカタカナで表されることが多い。キュレイションは「展示企画」だが、ネットの世界では特定のテーマによって情報をまとめることを指す。

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物の名前はたいていは辞書で訳にたどり着く。その物を使う動作になると、経験していないと想像では補いきれない。映画が最高の教科書だ。ダイヤル式の電話を知識としてしか知らなかったFさんは、実際に触れて初めて番号を回すとはどうすることか分かったのだが、指をダイヤルに当てた突端、大声をあげた。「へこんでる!」

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禁煙が徹底しても過去の文学や映画からタバコを吸うシーンが消えることはない。その仕草は、知って訳してこそ楽しい。トルーマン・カポーテの『The Headless Hawk』に "He hung an Old Gold between his lips," という一文がある。これはタバコを唇の端の内側に当ててだらんと垂らすこと。身近に見なくなったのはいいけれど。

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新たな翻訳をする時、まず紙を一枚用意して横線を一本引く。たいていの場合、記すのは年あるいは月日あるいは時間。もちろんそれを記した理由を添えて原文の舞台を具体的にイメージする。読み進むにしたがって次々とそこに足していくことで原文が自分の中で立体的になる。時には歴史年表そのままということであってもいい。

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翻訳は自分ではない書き手あってのこと。書き手が文学賞受賞作家であったり、5歳の子どもだったり、男だったり女だったり。すべての立場になれるのは、なんて素晴らしいことか。その都度、しっかりその立場を想像するうえで、忘れてはならないのが国籍とか生地。イギリス語かアメリカ語かで単語の意味が異なることは多々あるので、辞書で確認しよう。

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翻訳を別の趣味と合わせると楽しい。そう言って編み物好きな友人に英語で書かれた手編みのパターン集を勧めて失敗した。略語ばかりでパズルを解いているようだとのこと。パズルといえば、英語のパズルも楽しい。Crosswords, Anacrostic, Figgerits などなど。一定の他の文字で置き換えられた文を読み解く Cryptograms は時間が経つのを忘れる。

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②は those short winter days についてもいえて short も winter も days にかかる。もう一つ例をあげると、the six thematically curated, high-altitude institutions は副詞が挟まっていて一層わかりにくいが「主題別に監修された六つの高地施設」。これが「六つの主題別に監修された高地施設」では施設の数は一つと取れてしまう。

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英語で冠詞 十 形容詞が2つ以上 十 名詞と並んでいる時、①形容詞の順番は一応決まっていること②形容詞は一つ一つが最後の名詞にかかること、を忘れないようにしよう。①は英語のルールなので、日本語で同じ順にする必要はない。those short winter days は「短い冬の日々」より「冬の短い日々」が落ち着く。②については次に。

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訳で原文を変えなくてもいい箇所にまで手を加えないようにしたい。別の言語にするのだから当然、言い方は変わるが、訳はあくまで原文を伝えるもの。日本語の習慣や自分の考えで原文の意図まで歪めてはいけない。例えば、とくに児童小説に多い mother and father という言い方。これを安易に「おとうさんとおかあさん」と順を変えない。women and men も同じ。

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英単語一つに必ず日本語一つを当てはめようとしない。例えば instead を、いつも「その代わり」と簡単にすませず、その前の文章を少し繰り返す丁寧さで訳したい。"I told you to go to the library. Why did you go to the barber instead?" 「図書館に行くように言ったでしょう? どうして図書館でなく床屋に行ったの?」

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訳文を「ですます調」にするか「である調」にするかは原文では示されない日本語の問題なので、訳者それぞれが決めること。新聞記事はほとんど後者。手紙文は前者が多い。幼児向けの読み物は易しい感じを前者で出すことがある。小説やエッセイをどちらにするか、ひとえに訳者の原文の読込み方にかかる。日本語の作品を文体の視点からも沢山読んでおきたい。

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単語の訳として、知っている言葉を全てだと思わず、文の中で収まりがわるかったら他の訳を探す。例えば sweet は元来「塩がない」という意味で、とくに水や空気や食物と組み合わされたら「甘い」ではない。文脈にもよるが sweet air は「爽やかな空気」、sweet water は「真水」、sweet milk は「搾りたての牛乳」、そして sweet butter はもちろん「無塩バター」。

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米映画『ワーキング・ガール』で「Will you marry me?」と言われた女性が「Maybe」と答え、字幕が確か「さあ、どうかしら」だった。いい訳。辞典では probably, maybe, perhaps, possiblyと確信度は弱くなると説明され、訳は「もしかすると」「ことによると」などとなっているが、文脈によって多様な含みを持ち、上の字幕のように意を汲んで訳したい。

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なるべく英文の頭から訳す。というと、主語と述語の関係がおかしな日本語になって困ることがあるが、要は、書かれていることを、その順番で理解し、なるべくその順番で表現するということ。例えば一つの文章がカンマで終わり関係代名詞でつぎの文章になっていたら、カンマまで訳してから、次に移る。後の文章の最後から延々と前に戻っていったりしないこと。

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英文に life という単語が出てきたら大いに悩むこと。本当に訳が難しい。生命、人生、生活、生物、正気、実物・・・とても大切な言葉なのに選択肢が多い。結局は文脈で決めなければならず、人生か生活かで文の意味が大きく変わることがある。また間違って使われやすいのが生涯という言葉。生涯は一生の間のことなので、生存している途中には使わない。

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意味が同じようでいて根底で違う英語と日本語は数多くある。例えば人名につける敬称の訳は難しい。Mr. や Mrs. には男女別という文化があり日本語の「さん」には性別は含まれない。Ms. をどうするか、さらに決め難い。英国で著名なMs. Jan Morris は Ms. に込められた意味の深さからミズ・モリスとしておくのがいいと思う。

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英文でよく使われる and をいつでも「そして」と訳さない。並んだ二つの英文の間によく and をおくのは、それぞれ主語と述語からなる完全な文章自体は何ら変化させないから。I read a book and she sang a song. 「ぼくは本を読み、彼女は歌を歌った」。述語が文の最後にくる日本語では先の文章の終わりを「読み」と接続形で終わり、ここに and を含めている。

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よく知られた暗記術の英語例を二つ。太陽系惑星の太陽に近い順「水金地火木・・」は英語では「My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas」で各語の頭文字が Mercury Venus Earth ・・と同じ。冥王星の降格で最後が様々に変えられた。もう一つ。円周率は May I have a large container of coffee?  これは文字の数を並べていく。3.1415926。

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最近の英和辞典は言葉の精度も高いし情報も多い。頼りになる。でも稀に満足できない訳もある。そのひとつが stride という単語。動詞が「大股で歩く」「またぐ」なのだ。そのため訳文の中で可愛い子ネズミが大股で闊歩することになる。その訳でぴったりの時もあるが、大方は「目的に向かってさっさと歩く」。訳語がおかしいかなと思ったら英英辞典で確認しよう。

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単語 know の訳は、いつも「知っている」「知る」だけではなく、文脈によって「わかる」も「気づく」も「覚えている」もありうる。もちろん他にも。どれを使うか決めるのが翻訳。必ずしも辞書に載ってる言葉だけではない。またしばしば出てくる you know に上記のような言葉を当てはめないように。「あの」とか「ちょっと」ぐらいの合いの手なのだから。

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辞書に載っている言葉が訳語としてすべてではない。訳に頻繁に登場しがちなのが「素晴らしい」と「美しい」。
おそらく多くの英単語の訳の一つとして辞書にあるからだろう。でも訳が単調にならないよう、原文の文脈によって、もっと様々な表現をしたいところ。素晴らしい、見事な、心地よい、立派な、晴々とした、すごい・・・

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易しい単語の意味を辞書で引くかどうか、そこが勘の働かせどころ。少なくとも文章を日本語にしてみて何かしっくり収まらなかったら、単語のどれかに他の意味があるのではないかと確かめること。Couldn't you ask him here? (The Wind in the Willows)の ask には「誘う」「招待する」という意味もあると発見したい。

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よく悩むのは girl とboy の訳語。ひと昔前は「少女」「少年」となることが多かった。日本語ではあまり使われないのに。でも「女の子/女子」「男の子/男子」がいいとも限らない。要は小説でも新聞記事でも、文脈の中で日本語として自然な言葉を選ぶ。英語では非常に巾の広い言葉で、お年寄りを指すこともごく当たり前にある。

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「歩道にそって」歩いたら車道を歩くことになり車に轢かれる。I can remember walking along the pavement beside her (レイモンド・ブリッグス)の walk along は日本語では「歩道を」歩く。go down とか go up は、山や坂にでもいない限り、ごく普通に真っ直ぐ先に進むことで、下がったり上がったりしない。

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AとBを並べる時、A and B となり、AとBとC を並べる時はA, B, and C となると知っていても、つまりこれは文法上の約束事だと知っていても、「A、B、そしてC」と and に意味を含ませて訳すのは重い。「AとB、C」のように自然な日本語にしたい。A, B, and other C は、「A、B、C など」が一番ぴったりする場合が多い。

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人の訳を真似するくらいなら下手だったり間違っている方がいい。近頃は著名な作家のエッセイは誰かが訳してサイトに載せていたりする。原文がよく分からなくて参考にし、これでいいのかと解釈を「学んで」しまい、見事にそこで間違ってしまう。難しい箇所は誰にとっても難しい。なんとか自分で収めること。その決断も翻訳。

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英文の中の人名の読み方は慎重に。ローマ字読みなどせず、英和大辞典には多くの固有名詞がカタカナ表記されているので引いてみる。Stephen は昔の日本語訳では、よくステフェンとなっている。著名人にも多い名前なので今はスティーブンと正しく読まれるようになった。もちろん歴史上や英語圏以外の地では別の読み方もあり。

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電子辞書が便利で、使わないことは考えられなくなった。最大の利点は圧倒的に情報量が多いこと。英和大辞典が二つは入っているし、和英、英英、現代国語、広辞苑などを次々と駆使できるため、訳語を決めるのに本当に助かる。欠陥は紙と違って書き込みができないこと。新たな訳や言い回しをどう記録するか自分で工夫したい。

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しばしば辞書にある訳語だけでは翻訳に間に合わない。たとえば best という単語は「最良」「最善」だけではなく、実際には「最高」という日本語がぴったりすることが多い。スポーツの場合は a best record で「最高記録」だし、the best life は「最高の人生」。(映画『最高の人生の見つけ方』の原題は The Bucket List 。)

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英語はまったくだめ、と思い込んでいる人は多い。でも英語の文章を見て、それがフランス語やロシア語ではなく英語だと分かり、さらに英和辞書の引き方を知っていたら、かなり英語が出来るということ。文字の形から覚え、辞書が引けるようになるまでに時間がかかる外国語が多い。せっかく手にした世界、楽しみたい。

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翻訳に慣れないと気が付きにくいのが時制。英文のメリハリとか流れは時制で付けられているとすら言える。つまり現在、過去、現在完了、過去完了、未来などなど。過去完了は仮定法の衣を纏うこともあるので要注意。長い文章の中で異なる時制がいくつか出てきた時は、これで構文がわかりやすい、やった!と思って解釈しよう。

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子どもの時に翻訳で読んだ、とても好きだった本が、元はどんな言葉で書かれていたのか知りたくなることがある。とくに子どもの本の場合、原書をかなり省略している場合が多い。だから原書をさらっと読むのでなく一字一句を追う、つまり自分で自分の感性に合った日本語にしてみると、沢山の新しい胸踊る発見があるはずだ。

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自分の好きなことのために翻訳を生かしたい。数十年前、日本で本や雑誌に載る料理のレシピといえば常に4人分。一方、英語では1人用の料理本が沢山あった。卵ベースだけでも50、60とレシピが並ぶ。「さいの目に切ったチーズを溶き卵に混ぜて火にかけ、スクランブルし、黒胡椒を効かせる」などとカードに書き込むのは楽しい。

9
外国語で書かれたものを日本語にしたい。それが翻訳の第一歩。書いた人になって日本語で表したい。突然やってくる、そういう出会いの一つがエミリー・ディキンソンの Envelope Poems をオリジナルのまま写真に撮った本だった。使われた封筒の裏に書き付けられた短い言葉たち。静かにふわっと立ち上がる日本語を待ちたくなる。

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英文をかなり読みこなしている人でも、物や人の導入として「初出の this 」が不意に出てくると気づかないことがある。要するに不定冠詞の a の強調で、子どものためのお話にはお馴染みの表現だ。「 This big tiger appeared ・・・」=「一頭の大きなトラが現れて・・・」。「これ」や「この」だけではないことを忘れずに。

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翻訳では小さな言葉を正確に日本語にしたい。難しい単語は辞書を引けばいいし、厄介な長文は手に余ったら誰かに聞けばいい。でも小さな言葉は意識して自分のものにしておくこと。書物を表す言葉や書名の前に a copy of がきたら、それは原稿とかコピー(複写)の意味ではなくて、「一冊の」ということ。間違えられない言葉。

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あるエッセイに英国人でも読み方を迷うAlnwick という地名があった。アニックが正解で、アニック城は世界有数の美しい庭で知られる。またこの街の廃駅跡にたつ素敵な古書店バーター・ブックスの壁面には、作家たち30数人が実物大で描かれた巨大な絵がかかる。地名をカタカナでどう書くか調べる中で興味深い事実に次々と出会う。

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翻訳を楽しむ人の中には、言葉を訳すよりも調べる部分のワクワク感にはまっていると言う人も多い。文中に地名が出てくれば必ず地図で実際の位置を確認する。インターネットを駆使すれば世界中の町や村がどんな所か見当がつく。ときには簡単な歴史的背景を知ることで、その地の特色が掴めるし住む人の思いに触れることもある。


翻訳は絶対に文字ですること。英語を頭の中で日本語に置きかえたり口で言ってみるだけでは訳したことにならない。例えば (a girl)from NY は「NYから来た(女の子)」か「NY 出身の」か文脈によって違う。それに a girl が子どもならば「NY 育ちの女の子」という表現も思いつきたい。文字にしてこそ、あれこれと試行錯誤できる。


自分以外の人間になりたくない人には翻訳は合わない。原文の書き手の気持ちになってすることだから。ある時、自分はいつも「です、ます」で書くのに翻訳では語尾を「である」にすることが多く、乱暴な文章を書いているような気になり、やめますという人がいた。私には青天の霹靂。正々堂々と乱暴なことが書けるなんて素敵なのに。


文章全体の流れが翻訳には大切でも、一字一句を大切にすることも基本。ショパンのエチュードを弾くのに音符が一つずれたら台無しになるように。それには自分の思い込みを直していくことが必要。昔、どこかで a few は「2、3」と習った人が多い。これは間違いで、「3、4」や「5、6」もある。だから in a few days は「数日中に」。


翻訳は極上の「趣味」となる。16年間、英文翻訳塾を続けてきて、そう考えている。
もちろん、仕事や勉強としての翻訳あってのこと。でも一方で音楽を聴いたり、釣りをしたり、山に登ったり、絵を描いたりするように翻訳それ自体を楽しむことを追ってみたい。(ここでは英語から日本語への翻訳を基本とします。)